補完[闇の巫女-4(end)]
~"黒髪令嬢"イオ~
この学院の中心に位置する中央区という区画は、学院の運営に関わる施設である職員棟や会議棟などの他、平時には利用されない行事用の施設などが所在する場所である。例えば夜会に使用される舞踏館、舞闘会に使用されるアリーナ、学院の象徴的なモニュメントでもある時計塔、等々。
これらの行事用の施設は平時には基本的に閉鎖されており、無人のためゴーレムの攻撃対象からは外れていた。更には学院の運営を司る中枢施設の数々は当然有事においては機能保持のための防衛能力が備わっているのが殆どであり、人口密度の低さからゴーレムの初動を回避し得た中央区は余裕をもって迎撃態勢を整え、現在その高い防衛能力をフル活用して防衛線を構築し、非戦闘員の避難場所として機能していた。
その中央区の時計塔の麓に、空中庭園と呼ばれる場所がある。
文字通り、施設の屋上に作られた広大な屋外庭園であり、他の施設とは違って平時から学生に開放されている憩いの場だ。
「そこが、『巫女』の降臨場所だ」
一路空中庭園を目指して疾駆する道中、ハイメロート殿が尋問の成果を簡潔に告げる。
どうやら今回の件は教団における組織的な行動ではなく、件の『巫女』と呼ばれる存在の突発的な独断行動であったらしい。ハイメロート殿が尋問を行った教団員の男性は巫女の配下であるらしく、どちらかというと職務ではなく個人的な思想で今回の犯行に及んだようだ。
「あの男はただのキャリアーに過ぎない。巫女を結界内に移送した時点で役目を終えており、黎油保管庫に居たのは陽動だな」
要するに結界を越えて学院に侵入すれば察知されるのはわかっていたから、それを逆手に取って自身の存在を巫女から目を離させるための目晦ましとして有効活用したのだ。
「しかし、アビー様が察知した侵入者はあの男性一人だけであったと……」
「おう。ここまでくると巫女とやらの正体がわかる」
アビー様はなんとも言えない顔をしていた。
「おそらくだが、死霊術士だのう」
「そのようだ」
わかっていないのはわたくしだけのようで、アビー様が簡単に説明をしてくれる。
死霊術というのが特殊な魔法であるのは説明されるまでもないが、その真髄は『魂』と呼ばれる概念を掌握することにあると言う。魂とは人を人たらしめる何かであり、その正体は諸説あるが明らかにはされていない。死霊術を使う上で必要不可欠な素養というのが、この魂をモデル化できるかどうかということだ。
魂を意味する魔法モデルを構築できなければ、死霊術を使うことは絶対に出来ない。
そこで話を戻すが、魂が人を人たらしめているとすれば、肉体と魂の関係性を考えた時、肉体とはただのいれものに過ぎない。そのことは、今まさに魂を加工して本来とは別の肉体で活動しているアビー様の存在そのものがこれ以上なく証明してくれている。
「巫女とやらは己の魂を分割し、あの男に持たせたのであろ。学院結界に魂を識別する機能はないからして、一人分の侵入者の出来上がりよ」
「そのようなことが、可能なのですか」
「理論上は、だが」
なんとなく歯切れの悪いアビー様の返答だったが、続く説明を聞いて納得する。
通常、一つの肉体に入る魂は一人分だ。巫女の魂が分割されたもので一人分に満たない容量だったとしても、あの中年男性は当然自分自身の魂を十全に有しているのだから、そこに巫女の魂を間借りさせる隙間などない。
ではどうしたのかというと、おそらくあの男性は自身の魂を削って、巫女を受け入れる隙間を無理矢理作り出したのだ。
「当然、そんなことをすれば本人はただでは済まん。率直に言って緩やかな自殺よ」
「最初から死ぬ気だったということでしょうか」
「殉教のつもりであろう」
そして巫女の魂の欠片を抱えて学院へと乗り込んだ彼は、そこで巫女の魂と分離し、協力者と合流して黎油保管庫を目指したと言うことだ。
「分離した巫女の魂は欠片に過ぎず、そのままでは大した影響力もない。本来、魂というのはそう気軽に分割できるものでもない」
「では、巫女が降臨するというのは」
「おそらく、巫女は自身の魂の足りない部分を他所から調達する気だの」
その巫女という存在がどういう生態をしているのかは謎だが、アビー様の予想では肉体を有さず魂だけの状態で存続しているネクロマンサーであろうとのこと。そんなことが可能なのか、という疑問は抱くだけ無駄だろう。死霊術の第一人者である彼女がそう言っているのだから、そうなのだ。
魂だけの状態で十全な影響力を発揮するには、最低限、魂の状態が完全である必要がある。分割して運び込んだ魂の欠損部分を外的手段により補充し、完全な状態に満たすことで巫女は結界内で復活を果たす。
そのことを降臨と称しているのだ。
「場所が空中庭園とやらなのは意味がある選択なのか?」
「他所から魂を調達する方法は一つしかない。他人から奪うことよ」
だが、他人の魂は飽くまでも他人の魂。強引に奪い取ったところで自分の魂にはなりはしない。
「そこで、多くの人間からほんの少しずつ、魂の上澄みのような部分だけを濾しとって集めれば、色の無い魂を創り上げることが出来る。所謂ネクロマンサー界隈での常套手段なのだが」
「色がなければ自分色に染めるのも容易い、ということか」
「然り。他者の魂を収奪するのは骨が折れる作業だが、上澄みを集める程度ならば造作もない。そも、人間は常に自身の魂を発散させて生きておるようなものなのでな」
特別なことをせずとも、個人から常に漏れ出ている魂の霞のようなものがあり、それを膨大な量集めれば完全な魂を創り上げることが出来る。ただし中身のない魂なので、そこから新たな命を創造することは叶わないらしいが。
所謂『オーラ』のようなものであろうか、とわたくしは勝手に納得する。
そしてアビー様が言うには、その魂の発散という現象は本人の状態が平静でない程に激しくなる。喜怒哀楽でもなんでもいいが、激しい情動によって魂は顕著に発散する。
「今、中央区には学院中から非戦闘員が避難しておる。ゴーレムの脅威に晒され、消耗し、怯え、憤った魂が大量に集まっているということだ」
つまりは、巫女にとっては絶好の餌場なのである。
巫女はただ中央区の中心部に近い空中庭園に居座っているだけで餌のほうから集まってきてくれる。ちなみに、空中庭園は屋外施設なので避難場所には選ばれていないはずであり、庭園自体は無人であろうが、その周辺施設は避難してきた人々で満杯だろう。
「巫女は、この学院で何をするつもりなのでしょう」
「あの男に訊いても、宗教的な表現ばかりで実態がわからなかった」
「さて……そもそも理解出来る目的があるのか」
果たして、辿り着いた空中庭園の中心地にソレは居た。
庭園の象徴である大噴水の傍らに、黒い人型が浮いていた。その周囲に侍るように、また四人の人影が見える。浮かぶ人型が尋常ならざる存在であることは明らかだった。
凡そ普通ではない気配がある。
どうして今までその存在に気付かなかったのかと、不思議に思ってしまうくらいに、認識した瞬間に意識が持っていかれる。それを取り巻くように、収束するように、学院中から目に見えない何か巨大な流れがうねりを上げているのが肌で感じられた。
もしかすると、これが魂というものなのであろうか。
「……もう、暫し…………だったのだが」
辿り着いたわたくし達へと視線を向けて、黒い人型が呟いた。
それは少女の姿をしていた。外見から判断出来る年の頃はわたくしと然程も変わらないだろう。たっぷりと布地を使った大仰な法衣を身に纏っていて、黒地に赤の挿し色と銀光りする装飾というのは教団の象徴的なカラーリングで、双璧を為す教会のシンボルカラーと対照的だ。
血の気の薄い白い肌に、法衣と同化して見えるほどの漆黒の長髪。奇しくもわたくしの頭髪と同じ色合いであった。
少女の身体はその法衣ごと半透明に透き通って明滅しており、いまだ完全には至っていないことが窺える。
「御身は、我々がお守りします!」
そう言って身構えたのは、巫女の周囲に侍っていた四人組だ。
痩せぎすで背の高い壮年男性。恰幅の良い中年女性。腰の曲がった老婆。若い小柄な男。
黎油保管庫で遭遇した者達と同じように、取り立てて共通点のない四人で、そのお世辞にも褒められたものではない臨戦態勢から察するに、彼らもまた教団の信徒であるだけの一般人であろう。
彼らを無力化するのは容易い。ハイメロート殿やアビー様が出るまでもなく、わたくし一人でも事足りる。だからこそ警戒せざるを得ない。何故、明らかに尋常ではない巫女が、敢えて一般人を近くに置いているのか。
「そなたが『巫女』とやらかの」
距離を置いて相対した巫女に、アビー様が問い掛けた。すると巫女は無感動に口だけを動かして返す。
「そう……呼ばれている」
「そなた、ここで何をするつもりだ?」
「死を」
不完全な状態であるからか巫女の口調はたどたどしく、それ以上に端的過ぎて意味を読み取るのに一瞬の時間を要した。
彼女はアビー様の問いに「死をする」と返したのだ。
「我は、影なる神の代行者……人界に、死の闇を蒔く者なり」
影なる神。教団の教義における魔王のことだ。
「この世界には死が足りない……生き生きし過ぎている。故に我は、死を以て世界を調律せん」
つまり巫女は、彼女はその言葉通り『死』をしに来たのだ。
死を振り撒くことそれそのものが目的であるのだ。奇しくも、巫女の語る言葉はアビー様が語った魔物という存在の意義と同じものであった。
だが、そんな巫女の言葉にアビー様は嘆息した。
「話にならんな」
それから、傍らのわたくしとハイメロート殿に向けて言う。
「大層っぽいことを言っておるが、要は死の気配に惹かれただけだの」
「人が死ぬところを見たいだけ、ということでしょうか?」
「然り。魂の輝きに魅了された性質であろ。魔に魅せられる魔法使いはいつの世も居るが、死霊術士が堕ちるとこうなるという見本のような輩であるな」
アビー様の言葉を半ば聞き流しつつ、ハイメロート殿が歩み出る。
「御託はともかく、アレを排せばいいだけのことだろう」
「道理よな。幸い彼奴の魂は未だ満ちておらん。疾く消えてもらおうかの」
魂のみの存在をどう排除すればいいのか、わたくしにはとんと見当もつかないが、この場には死霊術の第一人者が居るので心強いことこの上ない。
アビー様の言葉が聞こえていたのか、巫女はやはり無感情に呟く。
「どうやら……機を逸した、らしい。退散……するとしよう」
まさかの潔い敗北宣言に巫女を取り巻いていた四人が驚愕の表情を見せる。
巫女はそんな彼らに向けて、半透明の腕をゆっくりと翳した。
「ただ……土産くらいは、欲しい」
次の瞬間、巫女の掌が黒い光を放った。
「え?」
間の抜けた声を残して、四人の顔面が爆ぜた。
巫女が掌から放った黒い炎が、目にもとまらぬ軌道で弧を描き、四人の首から上を薙ぎ払ったのだ。
「何を――っ!?」
まさか味方をいきなり処刑するとは思わず、咄嗟に声を上げようとしたわたくしであったが、直後に目に入ってきた光景に息を呑む。
どう、と倒れた四人の身体は黒い炎に包まれて燃え上がり、そこからどろりと粘性の何かが立ち上ったのだ。
それは、黒々とした不吉な炎が形作る髑髏であった。
糸で吊られた人形のような不自然な体勢で持ち上がった黒い炎の人型が、髑髏をけたけたと鳴らしながらこの世のものとは思えない怨嗟の声を上げている。あまりにも悍ましい光景に言葉が出ない。
黒い炎の人型は良く見ると一つ一つが違っていて、細身で背の高いものもあれば、恰幅が良いものもある。男のように見えるものも女のように見えるものもある。それが何を意味しているのか考えるまでもない。
あれは、あの有様はたった今殺された四人の魂そのものなのだ。
黒い炎を侍らせた巫女が、号令とともにこちらへと指を向けた。
「『冥府の衝動』」
逆巻く炎で軌跡を描き、黒い人型が一斉に飛来する。
前へと歩み出ていたハイメロート殿に向けて二体。その後ろのわたくしとアビー様にそれぞれ一体ずつ。虚を突かれたのは事実だが、そうでなくてもかなりの高速で迫る人型にわたくしは咄嗟に太刀を抜いた。
「『断波』ッ!」
刃の軌跡から放たれた真空の斬撃は寸分違わず黒い人型の髑髏を両断し、
「ッ!?」
するり、となんの抵抗もなくすり抜けた。
炎を散らすとか、それすらもない。
返す刃で咄嗟に展開した防御魔法をも、やはりするりとすり抜けた黒い人型が、わたくしの身体に纏わりつく。燃え盛る黒い炎で出来ているというのに、わたくしが感じたのは凍えるような寒気と、形容し難い怖気であった。
「きみの魂は綺麗…………そんな無防備な魂をぶら下げて……獲ってくれと、言っているようなもの」
「く、あ――」
「不用意だった、ね……」
巫女の言葉が耳元で聞こえる。
なにか、良くないものが侵入してくる。
わたくしの胸の中心で拍動する暖かいものを無遠慮につかみ取って、暗い淀みの中に諸共に引き摺り下ろそうとする。生物の本能が叫んでいた。この暖かいものを奪われたら最後、わたくしは死ぬのだと。
必死で抵抗しようと試みるも、どんどん身体が冷たくなっていって、息が出来ない。
力が、抜ける。
「――鼻垂れが」
こつん、と額に軽い感触があった。
いつの間にか傍に歩み寄っていたアビー様が、その手の煙管でわたくしの額を打ったのだ。その途端ぶわりと、信じられないくらい簡単に黒い炎が振り払われ、それどころか轟轟と勢いを増して紫色に燃え上がったではないか。
黒々とした巫女の色ではない。高貴なる紫はアビー様の色だ。
呆然とするわたくしの顔を覗き込み、アビー様はからりと笑う。
「ああ、そなたのことではないぞ。鼻垂れの餓鬼はアレのことよ」
そう言って、やはり煙管で指し示すのは巫女の姿だ。
「まるでなっとらん。こんなものを死霊術と称されては、小生の沽券に係わる」
それから、と燃え盛る紫炎の人型をねめつける。
「そなた等もだ。怨み晴らさでおくべきか……大変結構だが、相手を間違っているようでは浮かばれんぞ」
本当に信じられないことに、巫女が殺害した四人を媒介して発動した死霊術を、アビー様は奪い取って掌握してしまったのだ。この光景は、そうとしか説明出来ない。
流石の巫女もこれは予想外だったのか、初めて情動らしいものを見せて目を瞠っていた。
「そら。そなた等の怨みはそっちだ」
アビー様がふい、と煙管を振ると、紫炎の人型は一斉に巫女へと襲い掛かった。巫女が放った時よりも三倍近い規模に膨れ上がった怨みの炎が、まるで圧し潰すように巫女を呑み込む。
そして、アビー様が一言。
「『冥府の衝動』」
巫女を飲み込んだ紫色の炎が膨れ上がり、光を散らして炸裂した。
爆発というよりは、炎が光に変わったのだと表現するほうがしっくりくる光景だった。怨みを晴らした魂が天に昇るための光なのか、不思議なくらいに荘厳で、美しい光だった。
キラキラと降り注ぐ光の雨の中で巫女の姿を探すも、彼女が浮遊していた場所には既になんの痕跡も残ってはいなかった。
わたくしは気が抜けて、すとんとその場に座り込んでしまった。普段はレキやソシエの手前、みっともない姿は見せないように意識しているのだが、今はそんなことを取り繕う余裕すらなかった。
「巫女は……滅びたのですか?」
「この場はの。アレは魂の欠片に過ぎん。大本が残って居る限りは滅びんだろうが……まあ痛手には違いあるまいて」
あっけらかんと言うアビー様がまるで普段通りの様子に見えるのは、つまるところ年季の違いなのだろう。
ゆるゆると視線を巡らしてハイメロート殿の姿を探すと、彼は巫女に殺された四人の遺体のほうを確認しているようだった。彼もわたくしと同じく黒い人型の脅威に晒されていたはずだが、少しも堪えたところがないように見える。
「ん?ああ、魔剣のは心配するだけ無駄よ。アレにはそもそも効かんのだ」
「効かない……?」
「おう。アレの魂はとうの昔に売約済み故に。横から掠め取ろうとしても姫の逆鱗に触れるのがオチであろ」
姫というのが彼の有する魔剣のことであり、彼の魂は魔剣のものであるが故に死霊術で干渉することが出来ないということか。ある意味で、魔剣というより強大な魔性が彼の魂を護っているのだ。
それが決して幸せなことではないのは、わたくしにもわかる。
その後、遺体の検分を終えたハイメロート殿と情報交換をし、どうやら教団関連の事態はこれで終息を見たと判断された。
「後の処理は小生が引き受けよう」
「では、俺達の役目は終わりだな?」
「おう。ご苦労だったの。そなた等に声を掛けて正解だったわ」
そう言って笑ってくださるアビー様であるが、正直わたくしは居る意味があったか疑問だし、むしろ脚を引っ張るばかりだった気がしてならない。
だからと言って腐っていてもしょうがないので、色々な意味で得難い経験を積めたのだと思うことにして、成長の糧にしようと思う。わたくしが目標と定めている淡雪色の少女は、同い年のはずなのにわたくしの遥か先を歩いているのだ。彼女の背に追い付くためならば、どんな経験だって糧にする貪欲さが必要だ。
そんなわたくしの表情を見て取ったのか、アビー様は満足げに頷いた。
「さて、働きの分の報酬をやらねばなるまい」
アビー様は煙管を吹かしながら、ころりと笑った。
「そうさの……ヴェルメリオとやらの現在地を教えて進ぜよう」
――以上が、一昨日わたくしが経験したことの一部始終である。
その後の展開には特筆すべきところもなくて、アビー様の情報提供の甲斐あって無事にヴェルメリオさんと合流を果たし、ハイメロート殿はそのままヴェルメリオさんを連れてプリムローズ様を迎えに行かれ、わたくしはヴェルメリオさんとともに避難して来ていたノエルさんとフォノンさんを医務室へと連れて行った。
ちなみに、一段落してからプリムローズ様の元を訪れたわたくしは、彼女が消耗のあまり床に臥していることを知らされ、ついついその場でヴェルメリオさんの軽挙を咎めるお説教などをしてしまったのだけど、それについてはレキ達も知るところなので改めて説明する必要はない。
個人的には、いかにヴェルメリオさんの行動に思うところがあったとはいえ、主人であるプリムローズ様を差し置いてわたくしが出しゃばったのは褒められたものではなかったと猛省している。報せによるとプリムローズ様も今朝には無事にお目覚めになられたようだし、折を見てお詫びしなければと思う。
「まさか、騒動の裏側でそのような事態が進行していたとは……」
思案気に呟くレキの横で、ソシエが心配そうにわたくしを見遣る。
「あの、お嬢様のお身体に異常などはないのですか?」
「ありません。その点はアビー様のお墨付きです」
ハイメロート殿の魔剣と、巫女の死霊術。わたくしは二度死に掛けている。そのどちらもアビー様に命を救われており、後遺症などが無いことは彼女が保証してくれている。
「わたくしは、今回の件で己の未熟さを痛感致しました」
魔剣の呼び声に負けそうになったのはわたくしの意志の弱さ故だし、次に死霊術士と相対した時にまた対抗手段がありませんと宣うわけにはいかない。焦る必要はない。現実的な脅威を認識して、そして生きて帰れたことは幸運だ。
次までに対策を打つことが出来るのだから。
「より一層、己を高める必要があります。協力してくれますね?」
くれますか?とは問わない。それがわたくしから二人への信頼の証だ。
レキとソシエは悩むこともなく、揃って頷いてくれた。
・本作が面白いと思ったら、評価をお願いします。
・そうすると作者のモチベが上がって、もっと面白くなります。




