64話_side_Pr_第五練術場
~"転生令嬢"プリムローズ~
私達一行と、主人公ちゃん一行が練術場に到着したのは殆ど同時くらいだった。
練術場と一口に言ってもいくつかあるが、ヨシュア氏経由での技研からの情報提供に基いて主人公ちゃんの進行方向を予測し、そのうちの一箇所を目指していると判断して先回りしたのだ。厳密には主人公ちゃんではなくゴーレムの分布と移動経路を用いた予測なのだが。結果として辿り着いたのは第五番目の練術場であり、普段から学生の自主練習用に開放されている場所でもあった。おそらく主人公ちゃん達は非戦闘員からゴーレムを遠ざけると同時に、あわよくば練術場で自主練習に励む学生を迎撃戦力として頼ろうと考えたのだろう。ただ、ここで自主練習に精を出していたであろう学生達は、既に他所の戦闘に駆り出されているのか移動してしまったようで、私達が辿り着いた時にはもぬけの殻であった。
なお私達一行とは、要するに私とクラリスちゃんを始め、技研職員のヨシュア氏とシューベル氏(元凶)と、それから執行部のマリアちゃん、ユーフォリアちゃん、クロトくんの三人を含めた計七人パーティである。クラリスちゃんが非魔法使いであることを考えれば、六人パーティー足すことのサポート役が一人で戦力単位的に収まりも宜しい。まあ技研組は魔法使いであっても戦闘従事者ではないが。
ただし、何故書類上は一番年下である私がまとめ役に収まっているのかは未だに理解も納得も出来ない。
余談だが、ヨシュア氏がファーストネーム呼びでシューベル氏がファミリーネーム呼びなのは、単にこの場にジレ家の人間が二人居てややこしいから、下の名前で呼んでくれと当人に言われたからである。
ゴーレムの軍勢に追いに追われて疲労困憊といった風の主人公ちゃん一行は、なんだか不思議な顔ぶれで、いつものノエルちゃんとミリティア嬢の姿は見えず、こっちに居るユーフォリアちゃんの妹であるマルグリットちゃんと、本当に何故か解らないが脳筋殿下の付き人くんという三人パーティであった。
私の目的はあくまでも学院に入り込んだヴェルメリオがやらかす前に回収することだったのだが。気付けばいつのまにかゴーレム騒動の中核を握る人物に関わってしまい、なし崩しに事態の収拾を図るポジションになってしまった。
関わってしまった以上は、協力せざるを得ない。社会的な立場的な意味で。無礼千万のアシュタルテ侯爵家と言えど、四大貴族の一角を担う責任がある。あんまり知られていないことだが、アシュタルテ侯爵家の人間は無礼者で自分勝手だが、義務は果たすのだ。その過程がアレなだけで。
幸いにも、憂慮であったヴェルメリオについてはある程度回収の見込みは立った。
先程ここに至る道中で、あの子が砲撃魔法をぶっ放すのが見えた。なんか位置的にたぶん主人公ちゃんと一緒に居たっぽくて『あっ……(察し)』ってなったけど、それならそれで私がこの場で回収すればいいと思って来てみれば、どうやら一緒に行動はしていない様子。
まあ、あの砲撃はハイメロートにも見えただろうからそっちは彼とイオちゃんに任せて大丈夫だろう。無論、私やハイメロート以外にもあの砲撃を見ていた者は存在するだろうが、こんだけ状況がごちゃごちゃならば、ヴェルメリオ当人の身柄さえ押さえてしまえばどうとでも煙に巻けるし追及のしようもない。
そんでもってヴェルメリオの存在を主人公ちゃん達やマリアちゃん達に知られるぶんには最早別に構わないのだ。
何故って今回のゴーレム騒動が技研の不祥事であるとはっきりしたので、とりあえずヴェルメリオに嫌疑が掛けられる心配はないからだ。私やアシュタルテ家を目の敵にしている敵対的な貴族に知られると攻撃材料を与えちゃうので面倒くさいが、それとて、知られたところで当初の焦燥感に比べればだいぶ気が楽だ。
ゴーレム騒動の犯人に仕立て上げられる可能性が否定できなかった頃は、真面目に一歩間違えれば実家の腹黒お父様に首を切られるんじゃないかとひやひやしてたからなぁ……。
それはそれとして、ひーこら言いながら練術場に飛び込んできた主人公ちゃん達を見付けて、執行部の面々が即座に動く。
「あそこです!援護を!」
「ヨシきたぁ!」
嬉しそうに魔法をぶっ放したクロトくんの援護のもと、光の剣を幾重にも展開したユーフォリアちゃんと、無言で影と化したマリアちゃんが突撃する。私はと言えばクラリスちゃん他二名の護衛をしながら、後からゆっくり向かう。
主人公ちゃんの魔力が余程魅力的なのか、ゴーレムにもモテモテの彼女は当初商業地区を襲撃していたゴーレムの大半を引き連れてきたようで、見晴らしのいい練術場の外周から津波のような数が押し寄せてくる。
練術場の東にある出入り口から主人公ちゃん達が、西にある出入り口から私達が侵入し、ちょうど中間で合流するような形。そして東側の外周から半円を描くように包囲を狭めてくるゴーレムの多いこと多いこと。
「数が多すぎやしないか?」
思わず私が呟くと、シューベル氏が楽しげに答える。
「『SBメタル』が形成するゴーレムは理論上は無限に増殖するけど、実際は上限があるんだ」
「リソースの問題とか言っていたな」
「よく覚えていたね。まさにそれさ。『SBメタル』自身が生存するために必要なリソース、つまりはゴーレムの素材や糧となる魔力には限りがある」
「無限に増殖すればいずれは複製した自分同士でリソースを食い合うのか」
「それを避けるための、まあこれはプロテクトというより『SBメタル』の群体としての本能だねぇ」
ということは、だ。
ゴーレムの軍勢が群がっていた三ヵ所――大学区研究施設、学生区寮、および学生区商業地区。そのうち商業地区の勢力を引き連れて主人公ちゃんがここまで誘引してきたわけであるが、それ以外の二ヵ所でおそらくゴーレムが殲滅されつつあるのだろう。
上限まで余裕が出来たから、こちらのゴーレムがその分増えているのだ。
ゴーレムが殲滅されつつある二ヵ所にメイン個体が存在しなかったために、主人公ちゃんが誘引している中にそれが存在すると判断して私達はここに来たわけであるが、これはその説が正しかった証左でもある。
「お嬢ちゃんがシューベルの会話に普通についていってるのが驚きだよ俺は」
「あははぁ。技研のボンクラどもより余程見所あるねぇ彼女」
嬉しくもない、と憎まれ口を返しておく。
原作である『夜明けのレガリア』では、確か『マッドな天才科学者』みたいなキャラが居たはずだ。ご都合主義の権化みたいな使い勝手のいい裏方キャラ的な。名前までは覚えてないけど、たぶん、というか十中八九シューベル氏がそれだろう。
なんか、このヒト一人だけ頭の中が産業革命してるみたいな思考回路してるもん。
私が彼と会話できるのは、只の昔取った杵柄というやつでしかない。前世的な意味で。
そんな会話をしながらも周囲のゴーレムを魔法で走査していたシューベル氏が、小さく呟く。
「ふぅむ。メイン個体が近くに居るのは確かだが……」
少し数を減らさなければ見付けるのは無理だろう。
その過程でうっかり殲滅してしまったら、残念だがそれはそれだ。
こちらに流れてくるゴーレムを凍結させながら進むと、練術場の中心では主人公ちゃん達とマリアちゃん達が無事合流していた。
「あれ!?お姉ちゃん!リーダーも!!」
お互いに驚いた様子のベリエ姉妹が瞳を白黒させている横で、主人公ちゃんは座り込んで息を整え、付き人くんはまだ周囲を警戒しながらも安堵の溜息を吐いていた。なお、クロトくんとマリアちゃんは元気にゴーレムを駆逐している。彼らの戦いぶりは黒い森で見ているのでよく知っているが、やっぱり転神したマリアちゃんの殲滅力が尋常ではない。
「あ、アシュタルテさん……?」
なんで居るの?とでも言いたげな主人公ちゃんの視線に、私は「成り行きだ」とだけ答えておく。
ちなみに、何気に初会話である。
主人公ちゃんとマルグリットちゃんの介抱はユーフォリアちゃんとクラリスちゃんに任せ、私はゴーレムを駆逐するほうに混ざろうかと思ったものの、ぶっちゃけ必要なさそうだった。
マリアちゃんのアヴァターの殲滅力と、この練術場という一切の遮蔽物がない戦場の相性が良すぎるのだ。ヴェルメリオも得意としている貫通性に優れた砲撃魔法をマリアちゃんは良く使うのだが、彼女の影と化した肉体から竜の咢が一頭二頭十頭と顔を出し、放射状にばかすか撃ちまくるのだ。
なんとも頼もしい光景だが、正直呆れるほどの戦闘力だ。
クロトくんもかなり火力に秀でた魔法使いのようだが、やはり転神の遣い手は桁が違う。などと私が言うとそこはかとなく自慢っぽくなってしまうが、厳然たる事実だ。
「うわぁ……なにあれすっごい!」
「執行部長はんぱないわー…」
感激したように瞳をキラキラさせている主人公ちゃんと、知っていても呆れが隠せないマルグリットちゃん、そしてあからさまに顔を引きつらせる付き人くんの対比がシュールである。たぶん付き人くんは、脳筋殿下がマリアちゃんに喧嘩売ったらどうしようとか考えてるんだろうな。言うまでもないが殿下がマリアちゃんに敗北することを危惧しているわけではなく、殿下が喧嘩を売りかねない程に公爵令嬢が強いことを危惧しているのだ。
この調子ならば殲滅しきるのに一刻も要さないだろうが、しかし『SBメタル』には再生能力がある。
マリアちゃんに消し飛ばされた分だけだいぶ絶対量は減少しているだろうが、それでも元の量が量だ。残骸から滲み出た銀色の流体が、徐々に一箇所に寄り集まって体積を増していく。
私が単身でゴーレムを駆逐していた時にも見られた光景だ。奴らは強大な障害を認識すると複製し増殖した個体同士で融合し、より強力なゴーレムを作り出そうとするのだ。
マリアちゃんとクロトくん、それから再び戦線に加わったユーフォリアちゃんは敢えて融合する『SBメタル』には触れず、周囲のゴーレムを殲滅していく。
「ここまでは予想通りだな……」
「ああ。あとはよろしく頼むよ白いお嬢さん」
「ふん」
戦力外の大人二人の言葉に、私は鼻を鳴らして返した。
そして主にマリアちゃんの活躍でガッツリ殲滅されたゴーレムの残骸が集結して、ついに一個の超巨大な個体を形成し始める。ゴリラ体型の四足獣型とでも表現すればよいのか、なんとも不思議なシルエットだ。その全高は数十メートルにも及ぶだろう。
巨大な脚を振り下ろされれば、この場の全員が一息にぺしゃんこになることは想像に難くない。シューベル氏の話では『SBメタル』には人間を殺害出来ないというプロテクトが施されているらしいが、残念なことに現状の『SBメタル』は物理と術理の区別がついていない。簡単に言えば魔法使いの耐久性を考える際に魔力量をも指標にしてしまうのだ。
つまりはそれなりに巨大な魔力を有する私が相手であれば、踏み潰した程度では死なないと判断する。実際魔力任せに防御すれば単純な質量攻撃を防ぐことは難しくないのでその判断自体は妥当である。ではなにが問題かと言うと、当たり前だが魔法使いの肉体の素の耐久性は非魔法使いと変わらないので、防御にしくじれば普通にゴーレムの攻撃に殺される恐れがあると言うことだ。
特に、巨大な魔力を有する癖に戦闘慣れしていない主人公ちゃんのような人物が最も危険なわけだな。
「あわわわわわ」
「ちょ、どーするですかアレ!?」
あまりにも規格外なサイズの怪獣ゴーレムを見上げながら、主人公ちゃんとマルグリットちゃんがひしと身を寄せ合って震える。流石の執行部の面々(厳密にはクロトくんは執行部員ではないが)も慄いている様子だ。この脅威を前にして平然として居るどころかこの上なく楽しそうなシューベル氏は、言うまでもなく頭のネジが外れているだけなのだろう。
このサイズは流石に予想以上だけど、まあ私のやることは変わらない。
私は脳内で魔法モデルを構築する。
本来の属性である時間魔法。
基本中の基本として使い慣れたそれは私以外の時間を停滞させる術式だ。あくまでも『停止』ではなく『停滞』である。世界が遅くなっているのか、私が速くなっているのか、それは主観か客観かの違いでしかなく本質的には同じものだ。
そして停滞した時間のなかで悠々と唱えるのは、私が最も得意とする――ということになっている氷属性の上級魔法『禍つ極夜』である。本来ならば宣言をして尚とても実戦で使えたものではないレベルの難解な魔法モデルを有するそれも、私のチート属性に掛かれば形無しである。
なお、私の特殊な属性は私自身の時間を停滞させ、常にステータスを一定値に保つ。消費した魔力や体力は基本的に即座にニュートラルへと遡行するが、唯一例外として時間魔法のために消費した魔力や体力はもとに戻らない。
理屈はなんとなく程度にしか理解出来ないが、確か原作ではパラドックスを回避するためだと説明されていたはずだ。逆説的に、時間魔法を用いれば私という不変の存在に強制的な変化を与えられるので、要はそれがプリムローズがミアベルに敗北した根本的な理由なわけだ。
「――――フッ」
魔法を完成させ、動き出した時間の中で私はいつものように息を吐く。
そして、練術場の中心に大きな大きな氷の華が咲く。
一切の抵抗すら許さず、超巨大なゴーレムをその内側に閉じ込めて。
この魔法のベースは氷属性の上級魔法であるが、実際の魔法モデルは私のオリジナル。厳密に分類すれば氷と時間属性の複合魔法『禍つ極夜・改』だ。私の用いる凍結魔法は大抵その類なのだが、要するにただ凍結させて対象を静止させるのでなく、凍結という現象そのものに私自身と同じく『不変の停滞』を付与しているのだ。対象の『時間』を凍結させていると言い換えても大差ないかもしれない。
以前イオちゃんが私の魔法をコピーしようとして断念した――というかさせたのも、時間属性が関わる部分はどうやっても模倣できないからだ。
だから私の氷は『SBメタル』の浸食を受けないし、自然には溶けないし、脳筋殿下の雷を凍結させるなどと言う謎現象すら可能なのである。
「キミの凍結魔法も大概謎だよねぇ」
ぽかーんとしている一同の中で、やっぱりシューベル氏だけが平常運転でニヤニヤしている。
間違ってもこのマッドが私に興味を持ってほしくないので、さっさと仕事を済ませるように急かす。
「ここまでお膳立てしたのだ。貴様も役割を果たせ」
「はいはい」
「え?え?どういうこと?」
混乱しきりの主人公ちゃん達が私に視線を向けてくるが、私としては極力彼女には関わりたくないので、クラリスちゃんに説明を丸投げしておく。一応、彼女もずっと一緒に居たので経緯は理解してるはずだし。
私達の作戦は単純で、『SBメタル』のメイン個体を炙りだすために一計を講じただけのことだ。
強大な障害にぶち当たった『SBメタル』は自律思考で融合による自己強化を図る。その場合にメイン―サブの関係性がどうなるのかと言うと、メイン個体を含めて融合を行うと、融合後の個体が新たなメインとなる。サブ個体だけで融合すれば融合後も変わらずサブだ。その時に系統樹がどうなるのかは多少興味があるがこの場では関係ないので割愛するとして、重要なのは、現状の『SBメタル』はメイン個体の交代を許可されておらず、それは融合して新たなメイン個体を作り出すことも含まれる。
つまり融合して巨大化した個体は絶対にサブなのだ。
逆に言えば、この場で融合素材にならずに残って居る数少ないゴーレムの中にメイン個体が残って居るということ。
「メイン個体は煉瓦のゴーレムだよ。見付けたら教えてくれー」
最初にシューベル氏のラボから脱走したメイン個体の外見は判明している。ただゴーレムの数が多すぎて探しようがなかっただけ。ならば敢えてゴーレムの融合を誘発して、それを封じ込めてしまえばいい。
都合のいいことに私の氷で封じ込めれば、動けなくなるものの存在はしているので、リソースの問題は継続するのだ。つまり私がゴーレムを停滞させている限りは新たな個体が増えることはない。
あとは、ごっそり数の減った残党を駆逐しながら、慎重に煉瓦のゴーレムを探せば良いだけ。
「あのあのっ、これですかぁ?」
「それだ!」
案の定、然程労せずマリアちゃんが見つけてくれた。
他のゴーレムに比べれば随分可愛らしい大きさの、砕けた煉瓦を人型に固めただけみたいな粗末なゴーレムを、マリアちゃんのアヴァターである影の腕がひょいと摘まみ上げている。
メイン個体のゴーレムは往生際悪くじたばたと暴れているが、当然マリアちゃんは小動もしない。
「よしよし、停止命令を流そう。そのまま押さえておいてくれ。くれぐれも破壊しないでくれよ」
「は、はい」
嬉しそうに小走りで駆け寄ったシューベル氏が作業を始めると、マリアちゃんはアヴァターの形状を変じさせて影の腕を幾重もの鎖のようにしてゴーレムを雁字搦めに拘束した。
何度見ても応用力の高い便利なアヴァターである。
クラリスちゃんの説明を聞いて状況をある程度は理解したらしい主人公ちゃんも、今度こそ深々と安堵の息を吐いた。
「はぁ~!ってことは、これでほんとのほんとに解決ですね」
「あたし、お姉ちゃんを手伝って来ようかな」
「では私はこの辺で……」
「何言ってんのクゼ。アンタも手伝うの!」
クロトくんとユーフォリアちゃんは未だに残党狩りを続けているが、どの道シューベル氏が停止命令を流せばすべての個体が止まるので、それほど入念に残党を狩る必要もない。あくまでシューベル氏の作業を邪魔されない程度で良いのだ。
渋る付き人くん――クゼくんと言うらしいが、彼を手伝わせようと引っ張るマルグリットちゃんも緊張が解けたような笑顔だった。
「お疲れ様でした。お嬢様」
「貴様もな」
結局クラリスちゃんは無駄に連れ回しただけになってしまった。
ハイメロートは上手くヴェルメリオを確保してくれただろうか。
ああ、なんか終わった気になっていたが、私にはまだヴェルメリオの処理という仕事が残って居たのだった。今だけは忘れていたかったのに。
「…………ん?」
弛緩した雰囲気の中、不審そうにヨシュア氏が小さく声を漏らした。
シューベル氏の作業を傍らで補佐していた彼は、何かに気付いた様子で血相を変えた。
「やべぇ――嬢ちゃんッ!!破壊しろッ!!」
切羽詰まった叫びが響いた時には、全てが手遅れだった。
咄嗟に向けた視線の先では、マリアちゃんに拘束されたゴーレムの一部から、明らかに煉瓦ではない金属の輝きが伸びていて。
「ッミアベル!あぶな――――」
衝き動かされたように主人公ちゃんを押し飛ばしたマルグリットちゃんに向けて、高出力の雷撃が放たれる。
それはあまりにも容易くマルグリットちゃんの身体を貫通し、彼女のお腹に、大きな風穴を開けた。
貫通力が高過ぎたせいか、逆に衝撃は殆どなく、彼女は少しよろめいたものの自分の足で立っていて、
「あ……あれ……?あた、し」
信じられないように自身の身体を見下ろした彼女の口から、ごぽりと血の塊が零れて落ちた。
・2021/9 細部の描写を修正。




