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輪廻転生って信じる?  作者: Lynx097
九章_【ゆる募】青春のはじめかた

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638話_side_Primrose_黒い森_観測所



 ~"転生令嬢"プリムローズ~



『――ちょっと切るね。またあとで掛けるから』


「あ、おいちょっと、シュヴァルツ?」



 切れちった。

 通話が終了した端末を片手に溜息を一つ。さぁてどうしたもんかな。

 どの程度のトラブルかはわからないが、キノコちゃんのほうで何かが起きたことだけは確かだろう。とりあえず端末をブレザーに仕舞いつつ室内に戻ると、待ってましたとばかりに声を掛けてくる者が居た。



「アシュタルテさん! 昨日ロイと何かあったんですか!?」



 はい。主人公ちゃんですね。

 タイミング悪く、とでも言えばいいのか今日は学院横の『黒い森』で魔物の間引きを行う日であり、よりによって、とでも言えばいいのか執行部員として私が所属するF班指揮下の学生戦力として、今回はブルーノ班――即ち主人公ちゃんが所属している班が割り当てられているんだな。

 まだ日が落ち切っていないので森が開いておらず、現在は待機時間といったところだが、じきに活動を始めることになるだろう。

 私は纏わりついてくる主人公ちゃんを鬱陶しく思いつつ口を開く。



「コーリッジに訊け」


「訊きましたよ! そしたらロイのやつ、絶対に何かあった顔で『何もなかった』って言うんですよ!?」


「では何もなかったんだろうよ」


「そんなはずがない! です!」



 尚もキャンキャン喚いている主人公ちゃんを軽くシカトしながら私は思考を巡らせる。

 キノコちゃんのほうが緊急事態かと言われると、何とも言えない。判断に悩むところだ。

 もし緊急ならば私自身が現場に向かうという選択もある。時間を停滞させて移動出来る私ならば今から行動したとしても殆ど即時でキノコちゃんに合流出来るはずだ。彼女の現在位置がわからない上にマーカーを持っているわけでもないからピンポイントで転移することは出来ないし、シンシアが入院している王都の病院からこの学院への帰り道のどこかに居ればわかりやすいが少しでも逸れていれば探すのは骨だ。

 同じ道を辿ってみて、付近を虱潰しに探していけばいいだけだ。言葉で言うのは簡単だが、言うほど楽な作業ではないし、しかし不可能でもない。

 どうすっかなぁ。



「少なくとも、私の予想は大ハズレか」


「予想? 予想ですか!? ロイと何か予想をしたってことなんですか!?」


「今考え事してるからちょっと黙っててくれるか?」


「あっはい。ごめんなさい」



 先程までの通話で私はキノコちゃんに『身辺に気を付けろ』と言ったが、あれはあくまでも注意喚起であって、実際に彼女の周りですぐに何かが起きるとは考えていなかったのだ。

 私がその注意喚起をしたそもそもの原因はどこにあるのかというと、先日の執行部のミーティングで伝えられた情報にある。

 執行部員としての私の活動が、多くの下位貴族学生や平民学生からの支持を集めている、という例の調べである。

 あれを見た時にまず私が抱いたのは違和感だ。


 いくらなんでも、学生達の意識変化が早過ぎる。


 件の調査は最近の執行部の活動をどう捉えているかというもので、私個人の名前が出てくるわけではない。だがしかし、あの件だけに限って言えば私個人を支持するかどうか、とほぼほぼイコールの意味合いを持つのだ。

 何故って、現時点でその『多くの下位貴族学生や平民学生からの支持を集めている』活動をしているのは執行部員では私しかいないから。具体的には高慢ちきな貴族学生をボコボコにしてるってことだけど。つまるところ、多くの学生は当事者ではなく噂で聞いただけの立場だとしても、『最近なんか執行部が頑張ってるらしいよ』ではなく、『最近、執行部のアシュタルテが暴れてるらしいよ』としかならないはずなのである。

 それなのに支持される。不可解だった。

 だって私を誰だと思っているのだ。

 アシュタルテを舐めているのかと言いたいところである。私個人はともかくとして、お父様を始めとした歴代のアシュタルテが作り上げてきた実績とブランドイメージは伊達ではない。

 忘れてもらっては困るが、アシュタルテとはどこまで行っても『嫌われ者』であるはずなのだ。

 故にこそ、支持が集まるのが早過ぎる。伝聞の噂を根拠にするならば私の善行よりもアシュタルテの悪行のほうが圧倒的に多いはずなのだから。

 というかそうでなくてもそもそも早過ぎるだろうが。

 私が執行部の活動を始めたのは後期のカリキュラムが始まってからだぞ。それがこの短期間で学生対象の意識調査に顕著な影響が現れるって、私は希代のカリスマかなにかなのか。教祖にでもなってやろうか。宗教の名前はラーメンモンスター教とかでいいだろう。

 冗談はともかく普通に学生達が集団催眠に掛かっていると考えたほうが自然なくらいには不自然だ。


 なので私はあの時思った。

 笑えないな、と。


 不自然であるということは、そこに何者かの意思か、あるいはなんらかの作用が働いているということだ。

 そして私には生憎と心当たりがあった。

 即ち、『原作主義』の存在だ。正体も何もわからないので便宜的な表現になるが、つまりこの世界には原作『夜明けのレガリア』の物語をなぞらせようとする何かがあるのではないか、という予想だ。

 原作において私ことプリムローズ・フラム・アシュタルテは悪行の限りを尽くし、読者からは『ゲスロリ』などと呼ばれる非道キャラであった。原作プリムローズはまさしく『悪のカリスマ』と呼んで差し支えない人物だったことだろう。

 彼女には圧倒的な支持があった。それは恐怖と畏怖で彩られた血まみれの支持であったが、事実として原作プリムローズは一年生の女子学生においては最大派閥の頂点であった。わかりやすく言えば、現在のエカテリーナ嬢の立場がまさしくそれだ。原作のエカテリーナ嬢は序盤でプリムローズに喧嘩を売ってわかりやすく敗北して、以後はゲスロリ派閥の一員となっていた。


 つまりそれなのだ。

 原作の通りに私を最大派閥の頂点に押し上げたいと考える何かがあったとすれば、この不自然な支持の集まり方も納得出来る。この支持とはそっくりそのまま、エカテリーナ嬢への不支持を意味しているからだ。このまま私への支持が集まり続けると、エカテリーナ嬢はそれを無視出来なくなり、そうなると旗印である私を排除するために動かざるを得なくなる。

 わかるだろうか。

 そこに私やエカテリーナ嬢の意思はまったく関係ないのだ。

 そして私が彼女を下したならば、実情はともかく見事に原作通りの勢力図の出来上がりである。


 考えても溜息しか出ないのでそれはとりあえず置いておくとして、今はキノコちゃんの話だ。

 彼女の周りですぐに何かが起きるとは考えていなかった。その理由は簡単で『原作主義』からしてみればキノコちゃんは今のところ優等生だからである。

 原作においてゲスロリ派閥の幹部であった『三羽烏』といえばミリティア嬢、フランツィスカ嬢、そしてキノコちゃんであるが、このうちキノコちゃんだけはちゃんと原作通りにゲスロリこと私の隣に居るのである。私に学生の支持を集めて原作通りの派閥を作らせようとする作用があるならば、三羽烏の存在は無視出来ないだろう。だからミリティア嬢やフランツィスカ嬢のほうになんらかの働きかけがあるか、あるいは彼女等の代替となるような人物が私の元に現れるならば理解出来るが、今キノコちゃんをどうこうする理由はないように思えるのだ。


 となればもう一つ、キノコちゃんを積極的に排除したい勢力が居るとすれば候補に挙がりそうなのは『バッドエンド主義』こと『毒の華』であろう。

 しかしながら、私としてはこちらも即座に動くことはないというか、そもそも『毒の華』がキノコちゃんを害そうとする可能性は低いとすら考えていた。

 キノコちゃんの『ソウルジャック』を便利使いしてくれてる彼女にしてみれば、オリジナルであるキノコちゃんさえ排除してしまえば実質対抗馬なしのイージーモードだ。前期の『花告祭(イドフィオーレ)』では実際に、『毒の華』のせいでおかしくなったジークリンデ先輩が執拗にキノコちゃんを狙っていたことだし。


 と、思うじゃん?

 私も最初はそう思ってたんだけど、考えてみたらこれっておかしくて。

 だって本当に『毒の華』がキノコちゃんの存在を排除しようとしているならば、それ以前にいくらでも機会があったはずなのだ。それこそ私と出会う前どころか、学院に入学する前のキノコちゃんをこっそり消してしまえばいいだけである。

 しかしそうはしなかった。おそらくは出来ないのだろう。

 彼女が他人の姿や技能をコピー出来るのは『図書館』にアクセスして情報を引き出しているからだというのが私とミリティア嬢の推測だが、そうだとしても無条件にいくらでも、というのは考え難い。

 私が『図書館』を通じて過去の事象を『再逝(リアクト)』するのだって条件があるのだ。『毒の華』にも当然何らかの条件が課せられているはずである。

 その条件のせいで彼女はキノコちゃんを排除することが出来ない。となれば条件とは、他人の技能を行使するためには、そのオリジナルが生きている必要がある、とかその辺が妥当だろう。


 なので私は『毒の華』がキノコちゃんを襲撃する時が来るとすれば、それは彼女が『ソウルジャック』を必要としなくなった時だと考えているし、そしてその時はそもそも訪れない可能性すらあると思っている。

 よって『原作主義』にはキノコちゃんを襲う理由がないし、『毒の華』にも同じく理由がない。



「しかし実際、なにかが起きている……」



 私の予想は外れたということだ。

 通話を終える直前にキノコちゃんが告げた言葉の内容を思い出せば、彼女はどうやら王都で私の姿を目撃したらしい。敢えて言うまでもなく私はここに居て、通話中に王都をうろついたりはしていない。

 となれば畢竟、キノコちゃんが見掛けた私は何者かの偽装であり、そうなると容疑者筆頭は他人に擬態する能力を持っている『毒の華』なんだよなぁ。



「ううむ」



 私が現地に向かうのが一番話が早いであろうことはわかっているし、何故『毒の華』がこのタイミングでキノコちゃんに接触してきたのか非常に気になるというのが正直なところだ。

 ここで私が出て行ったらたぶん『毒の華』は身を隠すだろうし、しかも今私が動くということは――



「…………」


「? なんですか?」



 黙っていろと言われたからか律儀にお口をチャックして、しかしどこへ行くでもなく私の隣でお利口に待機していた主人公ちゃんが小首を傾げた。

 この子が居るんだよなぁ。

 いや、この場で時間を停滞させてキノコちゃんのもとに向かったら、それは当然主人公ちゃんにも感付かれるわけで。主人公ちゃんがついてきて困ることがあるかと言われれば別にないのかもしれないが…………ん?

 私は主人公ちゃんを見た。



「? なんですか?」



 もう一度小首を傾げた主人公ちゃん。

 ちょうどいいところにうってつけの存在が居るではないか。



「アトリー。貴様シュヴァルツのことは知っているな?」


「え? はい、もちろん」


「どう思う?」



 唐突かつ抽象的な問いかけに主人公ちゃんはますます不思議そうな顔になるが、彼女らしく素直に考えて答えをくれた。



「見た目はカッコいいのに、意外と可愛い人ですよね! 流石アシュタルテさんの友達って感じです!」



 せやろ?(後方腕組み友達感)

 キノコちゃんってわりとビジュアル系なんだよね。元々背が高くてスタイルもいいんだけど、今までは不健康すぎてガリガリの体型だったのが、最近はだいぶ健康的にふっくらしてきたもん。であの特徴的な髪色とか標準装備のヘッドフォンとかでしょ?

 それなのに喋ると途端に可愛いんだもんなー! あれはズルですよ、ずる。

 私はうんうんと頷く。ついでにどうやら大丈夫そうだと安堵もする。目の前で『ぺかー!』と笑っている未来視チート主人公が呑気に笑っているということは特に問題ないということだ。



「あ! そろそろ集合時間ですよ。行きましょうアシュタルテさんっ」


「はいはい」



 差し当たり、私はお仕事しながらキノコちゃんからの連絡を待つとしますか。



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― 新着の感想 ―
そんなSiriに明日の天気を聞くようなノリで未来を聞くなよ…
支持率の方は毒の差し金にしてはお上品なやり方だと思ってたけど絶賛暗躍中っぽい雰囲気出してる某眼鏡の可能性が出てきたかぁ。たしかに下級貴族までなら関わり合いありそうだ。 あとこういう絶望的状況だと主人公…
主人公ちゃんは一瞬で空気を変えるなあ
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