表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻転生って信じる?  作者: Lynx097
二章_Gが大量に発生する話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/909

47話_side_Fo_貴族学生寮_プリムローズ私室

・R15つけてるしこのくらい大丈夫よね?



 ~"新人メイド"フォノン~



「ただいま戻りまし、た?」



 学生区での買い出しを終えたアタシが寮に戻ると変な光景が広がっていた。



「ああ。おかえりフォノン」


「ご苦労様です……」



 口々に声を返してくれるご主人とクラ姉。それは良いのだけど、



「ええと……なにしてんですか?」



 本当に何をしているのかさっぱりわからない。

 アタシの目に見えている光景だけを端的に語るのであれば、こうだ。


 ご主人がクラ姉のお尻を眺めている。


 しかも、お仕着せのロングスカートをたくし上げさせて、レースのショーツに包まれたクラ姉の完璧なヒップを、しげしげと観察しているのだ。これでご主人が男性だったら完全に未成年お断りの状況であるが、生憎と女同士であり、アタシの知る限りご主人にそっちの気はない。

 クラ姉が気の毒なくらいに真っ赤になっていることはさておいて、ご主人は至って真面目な顔だから尚更謎だ。


 ご主人は時折思案しながら、手元のノートになにやら書き込んでいる。



「ん?ああ、ちょっとな……――よしクラリス。前も頼む」



 あっけらかんと告げるご主人に、クラ姉はちょっぴり涙目になった。

 クラ姉は小声でなにかを呟きながら(たぶん自己暗示的ななにか)、ソファに座るご主人へと向き直ると、しずしずとスカートをたくし上げて見せた。白いガーターストッキングに包まれたクラ姉の脚線美が、そしてそのさらに上の神秘の花園が露になる。常日頃から従者として業務に励むクラ姉の肢体には無駄な贅肉など一欠片もなく、それでいて女性らしい丸みも失っていない。羞恥で真っ赤になったクラ姉の表情と合わさって、なんだかアタシですらもイケないものを見ているような背徳感に襲われてしまう。

 げに恐ろしきは、あんな真似をさせながら平然としているご主人だろう。



「ううむ……ここで重ねて……これを中心に、いや……」



 ぶつぶつと呟きながら、ご主人はノートとクラ姉のショーツの間で視線を往復させる。

 もしかして、下着のデザインでも考えているのだろうか。だとしても、何故突然?



「なあクラリス。やはり少し触っても、」


「それだけはどうか、どうかご勘弁をっ」


「むう……」



 眺めるだけでは飽き足らず、あろうことか触りたいと言い始めたご主人に、クラ姉が必死の形相で食い下がる。ご主人は不満げというか、怪訝そうな顔をしている。いつも一緒に入浴しているのに、今更下着を見られることの何が恥ずかしいのかと思っているのだろう。

 たぶんそれは、シチュエーションの問題だと思いますけど。

 ちなみにクラ姉にもアタシが知る限りではそっちの気はない……と思う。たぶん。ないはずだけど、クラ姉の場合はご主人への忠誠心が高過ぎて、男に嫁ぐくらいならご主人と添い遂げるほうが良いとか本気で思ってるっぽいからなぁ。性別とかを超越した愛、的ななにかである。



「まあ、こんなところか……」



 とりあえず一段落したらしいご主人がクラ姉に「もういいぞ」と告げて、それからアタシに「見るか?」と訊いてきた。お言葉に甘えて、ご主人が広げたノートを覗き込ませてもらう。

 そこにご主人らしい精緻な筆跡で描かれていたのは、なにやら不思議な文様だ。



「刺繍の図案、かなにかですか?」


「まあ、そうだな」



 なんらかの規則性がある文様であることはわかるけど、モチーフが全然わからない。

 状況だけで判断すれば、ご主人はクラ姉のショーツに刺繍を追加するつもりなのだろう。かと言って、何故わざわざクラ姉が穿いているショーツを観察していたのかはさっぱりなのだが。

 ちなみにクラ姉は真っ赤に火照った頬に手を当てて、頑張って冷却中である。



「最近の講義で『紋章術』というのを習ってな」


「魔法陣とか描くやつですよね」


「うむ。その一種で衣服に文様を縫い込む技術があるのだ」



 紋章術は名の通り、魔法的に力のある紋章を描くことで魔法を行使する技能だ。

 この技能の強みは、魔法使いが描いた文様に魔法を籠めれば、その魔法使いの手を離れた後でも使用ができる点だ。勿論、籠められた魔法が一回分なら一回発動すれば効果が失われるわけだけど、文様が健在であれば魔法使いがもう一度魔法を籠めれば再度使用可能になる。

 いわば、即席の魔法道具を作るようなものなのだ。

 最近のアタシはご主人の教材を貸していただいて勉強しているので、ポピュラーな魔法技能の簡単な説明くらいはできるのである!



「それで、クラ姉のぱんつで練習ですか?」


「いや、練習は自分の外套で済ませた。これは本番だ」



 その言葉にアタシだけでなくクラ姉も瞳を瞬かせた。

 てことはなにか、ご主人はクラ姉のショーツに刺繍をするためにわざわざ紋章術の講義を受けてきたのか。



「言っておくが、別にクラリスの下着に思い入れがあるわけではないぞ」


「あっはい。そっすか」


「そうなんですね……」



 何故かちょっと残念そうなクラ姉はさておき、



「どこぞの侯爵令嬢が私を目の敵にしているのは知っているだろう」


「え?ええ」


「私にちょっかいをかけてくるぶんにはどうでもいいが、貴様らが標的にならんとも限らん」



 たぶんご主人が警戒しているのはどこぞの侯爵令嬢ことクレインワース様のことではなくて、その取り巻きの貴族連中の暴走だろう。実際、アタシも日々の生活の中で、縁も所縁も無いはずの他家の使用人に嫌がらせを受けたり、あからさまに嫌味を言われたことがある。きっとクラ姉も同じ――というか、ご主人と多く一緒に居るクラ姉のほうがそういう目に遭った回数は圧倒的に多いはずだ。

 尤も、アタシは勿論クラ姉だって貧民街育ちのメンタリティなので、そんな嫌がらせ程度で傷付くようなタマではない。


 今のところは取るに足らない嫌味や嫌がらせ程度だが、それがエスカレートして実際的な暴力に変わる可能性をご主人は危惧している。

 アタシ達は魔法使いではないので、実力行使に出られると非力な小娘相当の抵抗しかできない。メイド教育の一環で護身術程度は仕込まれているけど、本当に嗜み程度のものでしかない。



「そうでなくとも、貴様らは見目が良いからな。いつかのクソのような輩が再び現れん保証もない」



 吐き捨てるようなご主人の言葉に、アタシは「あ」と思い至る。

 この学院に来てすぐの頃、上級生の男子学生にクラ姉が目をつけられて乱暴されたという事件があった。今はアタシ達と一緒にこの部屋の管理を行ってくれている学院メイドのハンナとヘレナと知り合うきっかけになった一件だ。もう一人、あの件で知り合った人物にドロシーさんという学院メイドが居て、彼女の働きのお陰で間一髪のところでご主人がクラ姉を助け出すことができたとか。

 間一髪ってのは、つまり取り返しのつかない事態になる前に、っていう意味だけど。


 まだ記憶に新しい事件だけど、思い出すたびに背筋が寒くなる。

 クラ姉が男に乱暴されたというのもショックだったけど、それ以上に、件の上級生に対するご主人の激怒が恐ろしかった。あんなに怒ったご主人を見たのは間違いなく初めてだった。

 プリムローズ・フラム・アシュタルテという人が怒り狂うと、激したり怒鳴ったりすることはなくて、只々只管に温度が下がっていくのだ。怒りのボルテージが上がれば上がるほど、その態度が、言葉が、瞳が、絶対零度の冷たさを帯びていく。あの姿を見て初めて、アタシはご主人が紛れもなくアシュタルテ侯爵家の一員なのだとようやく実感したくらいである。


 ちなみに、その上級生はマルトー子爵家の令息だったのだが、彼は既にこの学院に在籍していない。

 ご主人がどういう手管を駆使したのかはわからないが、あの事件から幾日もせずにマルトー子爵が学院から息子を引き取っていった。十中八九、マルトー子爵家に対してアシュタルテ侯爵家からの圧力が掛かったのだ。

 尤も、ご主人曰く『クラリスが止めなければこの手で殺していた』らしいから、これでも温情ある処置だったのだろう。


 アタシとクラ姉が思い至ったことを理解して、ご主人は苦々しい顔で言葉を続ける。



「なので、保険として貴様らの衣服にお守りを仕込んでおこうと思ってな」


「お守りってどんなのです?」


「端的に言えば、ごく短時間貴様らの身を護り、それを私へと知らせる機能を持たせるつもりだ」


「知らせる、ですか?」


「居場所がわかれば私が転移で介入できる」



 要するに、ご主人が文字通り飛んできて助けてくれるということか。転移魔法ってアタシは見たことないんだけど、滅茶苦茶高難度の魔法であるということくらいは知ってる。なんかご主人が当たり前のように出来るっていうから流しちゃいそうになるけど、普通にすごいこと言ってるよね。

 ご主人が出来ると言ったら出来るんだろう、たぶん。


 衣服に紋章術を施す場合に用いる糸は、普通の刺繍糸を用いる場合と、魔力の糸を用いる場合がある。魔法陣を描く際に黒板にチョークで描くこともあれば、魔法使いが己の魔力で虚空に陣を描くこともある。ソレと一緒。物理的な文様は描くための場所や素材、道具が必要になるけど、一回描けば物理的に失われるまで残るし、都度魔力を注げば誰でも何度でも使える。魔法的な文様は一回こっきりだけど、いつでもどこにでも描けるという利点がある。

 今回ご主人がやろうとしてるのは魔力糸を使う方法。魔力糸は基本的には目に見えず、魔法使いが魔力を流している間だけほのかに発光する代物だ。ただし、稀に居る魔力を視認することに長けた魔法使いの目には普通に見えることもあるし、勿論見えなくなっても効果を発揮して消滅するまではちゃんと持続する代物である。

 まあ、紋章術の刺繍はそもそも見せるものではないので、用いるのが魔力糸だろうが刺繍糸だろうが、衣服ならば裏地やインナーなどの見えない位置に施すのが一般的。

 ちなみにご主人が着ている学院の制服にも紋章術の刺繍が施されていて、量産品故に簡易なモノではあるが複数の文様を組み合わせ、魔物との戦闘にも耐え得るレベルの防御性能を制服に持たせているらしい。



「私の技量が低いせいだが、発動条件を織り込むのに難儀してな」



 使用者が魔法使いであれば条件の設定はしなくてもよい。自分で魔力を流して発動させればいいのだから。だけどアタシ達のような非魔法使いが使う場合はそうはいかない。発動条件を文様の中に正しく織り込まないと意図しない瞬間に発動してしまったり、必要な時に発動しなかったりするのだ。

 例えば身を護るための魔法を仕込むとして、条件を『使用者が悪意を向けられた場合』とか『使用者が危害を加えられた場合』とかに設定できれば良いのだけど、曖昧な条件であるほど暴発・不発のリスクは高まるし、その上文様の難度も高い。

 なので発動条件は『わかりやすく、明確に』が初心者のモットーである。以上教本より抜粋。


 ご主人がポンポンとノートを叩きながら言う。



「これの発動条件は『着用者以外が脱衣を行おうとした際』だ」


「それって」


「わかるだろうが、これは貴様らの貞操を守るためのものだ。私の拙い技量ではそれが限界でな。本当に最後の最後にしか発動しないお守りレベルだが、無いよりはマシだろう」



 確かにそれなら不発も暴発もしようがないだろうけど、正直それが役に立つ日は来て欲しくないなぁとアタシは思う。いや、役に立つ日が来ないのが一番で、用意しておいて困るものでもないから飽くまで保険なのはわかっているけど。

 お仕着せとかに同じ条件で文様を施したとしても、例えば他人から少し袖を引かれた時とか、あるいはエプロンを家具に引っ掛けてしまった時とか、衣服に無理が掛かった瞬間に魔法が誤認して発動しかねない。だが下着ならばその心配もない。



「私の技量が上がれば、もう少しマシなものを作るさ。ああそれと」


「?」


「男を誘惑するときは、間違っても相手に脱がせようとするなよ。魔法が発動してしまうからな」



 アタシは反応に困って曖昧に頷く。

 主に貴族の学生が気に入った使用人を合意の上で『つまみ食い』するのも然程珍しい話ではないと聞く。男女限らずだ。使用人にとっても必ずしも悪い話ではなくて、例えば高位の貴族に気に入られれば、より良い環境に引き抜いてもらえる可能性があったりするのだ。

 その点で言えば、ご主人の下という天国みたいな環境を手放す気はアタシには更々ないのだ。少し前に、自分の愚かさ故に一度失いかけているものだから尚更強くそう思う。



「このクラリス、身も心もお嬢様の物に御座いますれば。殿方にうつつを抜かすことなど」


「それとこれとは話が別だ。公私を弁えろとは、なにもプライベートを捨てろという意味ではない」


「ですが、」


「別に強制はしないがな。ただ個人的には、」



 ご主人は言葉を区切って、珍しいくらいに柔らかい表情でアタシ達を見た。



「過ぎた青春は戻りはしない。友情も恋愛も、できるときにやっておかねば勿体ないと思うぞ」



 無論職務優先で頼むぞ、と冗談めかして。

 折角身近に同じ立場の人間が多くいる環境なのだから、この機に友人を作ったり恋人を作ったりしても構わないとご主人はお許しくださっているのだ。環境が特殊なせいかもだけど、周り見てても従者同士の恋愛って別に珍しくないみたいだし。それをお許しくださるということは、先の練術場での一件を経て、アタシが反省して意識を入れ替えたことをご主人は評価してくれて、ある程度は信用してくれたということだ。

 それが、なんだかすごく嬉しい。


 でも、同時に漠然とした不安を覚えた。

 だって、それってご主人にだって当て嵌まることだ。

 ご主人自身の青春は。そんなものは最初から存在しないとばかりに振舞うご主人の様子があまりにも自然で、どうしようもなく不安を煽るのだ。



「というわけでフォノン」


「はい?」


「勿論貴様にも協力してもらう」



 一瞬なんのことかわからなかったが、すぐにショーツの刺繍のことだと気付く。



「ぱんつ見せればいいんですか?」


「うむ」


「あの、穿いてるのを見せる必要はあるんですか?」


「あるぞ。まったく同じ文様でも、平面に施されたものと立体に施されたものは別物だからな」



 例えば、カーペットに暖房効果の紋章術を施したとして、敷かれたときに発動するようにしたならば、円筒形に丸めて仕舞っておく時には発動しない。あるいは虫除けの紋章術を施したとして、丸めて仕舞っておく時に発動するようにしたならば、床に敷かれて平面になった時には発動しない。



「別に貴様等それぞれにサイズの近しいマネキンでも用意すればいいのだが……実物があるのにそれもアホな話だろう?」


「勿体ないですもんね」



 んむんむとアタシとご主人が頷いていると、まだ若干赤面しているクラ姉は『それで済むならすぐにでも手配するんだけど……』みたいな微妙極まる表情をしていた。

 そういう事情もあって衣服に紋章術を施すのはそもそも難度が高いようだ。大抵は布地が硬い外套なんかの背の裏地とかに平面的に施すのが主流だ。あるいは襟とか。要するに着用中に効果を発揮させたいのであれば、着用時に形が崩れない場所でないといけない。文様自体にある程度の冗長性を持たせれば、多少布地が曲がったり伸縮した程度ならば問題ないっぽいけど。



「下着に立体文様を施すのであれば、貴様やクラリスが着用した状態で成立するように設計しなければ意味がない。要は衣服をオーダーメイドするのと同じことだ。できれば採寸させて欲しい」


「ああ。だから触りたいとか言ってたんですね。クラ姉拒否ってたけど」


「どの道、実際に紋章術を施す際には触れることになるがな」



 ご主人の言葉に、ようやく頬の赤みが引いてきていたクラ姉が「ひぇ」と声を漏らしてまたもや真っ赤になってしまった。

 そっか。刺繍と言っても魔力糸だから、実際に針と糸を使うわけじゃなくてご主人がその手で描くことになるのか。だったら二度手間するくらいならアタシ達が穿いている状態で作業したほうが絶対速い。なおアタシ達の下着一つ一つにわざわざご主人が魔法を施すのって凄い手間なんじゃないかとも思ったけど、ご主人曰く『モデルを確立さえすればコピーするのは一瞬で済む』とのこと。要は二回目以降はいつもの『フッ』で終わるってことだ。

 ちなみにご主人の想定では、脱衣まで行かずとも『他者の手』によって『文様が崩れた瞬間』に発動するように仕込むとのこと。



「アタシは別に触ってくれていいですよ」


「そうか。助かる」



 うん。だってアタシは別にご主人に触られて興奮したりしないし(爆)。




 なお、その後の顛末はクラ姉の名誉のために詳細は伏せておくことにする。

 忠誠心が高過ぎるのも困りものである。



・2021/7 補完2の内容を追記。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ぱんつを貞操帯モドキ魔道具に仕立て上げるんですね。 プリムさんの愛がアツイ! この勢いだと少々物騒な防犯グッズも用意しそうですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ