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輪廻転生って信じる?  作者: Lynx097
八章_笑顔

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494話_side_Frederica_討伐者ギルド_仮設陣地



 ~"女帝の孫"フレデリカ~



「はぁ~~~~っ、緊張したよぉー」



 慣れないプレッシャーから解放された私は大きく身体で息を吐き、隣に居た知己がその様子を見てクスクスと笑みを零した。

 私はじろりと横目で睨む。



「笑いごとじゃないよー。王族だよ? 王子様なんだよ?」


「ええ。私も王族の方を直接拝するのは初めてです」


「なんか納得いかないなぁ。なんでアストレアさんはそんな自然体なの? 緊張しない生き物なのー?」



 私の八つ当たりじみた恨み言に、しれっと「そんなわけないじゃない」と返してくる彼女は友人である。淡いブロンドをポニテにしたスタイルがお馴染みの、大人びた雰囲気の少女。

 名前はアストレア。最大クランである『パンツァー・ドラグーン』のリーダーである黒竜卿の右腕を務める才媛だ。

 私とアストレアさんは今夜の戦闘に備えた対策会議に今まさに出席してきたところで、これからそれぞれのクランに戻って構成員に伝達を行うことになる。その対策会議というものの出席メンバーがまた凄くて、大雑把に言えば各勢力――『王宮騎士団』『討伐者ギルド』そして『討伐者クラン』の有力者が会議の場に呼ばれているわけであるが、ということはつまり今回の騎士団の司令官である第二王子殿下もその場に居たわけで、あくまでも一出席者でしかない私と王子殿下の間に会話があったわけじゃないけど、いや、同じ部屋に王子様が居るんだよ? そんなん緊張するに決まってるじゃん。

 第二王子殿下は確か私よりも年下だったはずだけど、威厳というかオーラみたいなのが凄かった。いや見た目だけでわかるほど小娘(わたし)の目は肥えてないけれど、だって会議に参加してる騎士団の重鎮っぽい人とか歴戦の騎士味がある人とかが、みんなみんなちゃんと王子殿下に敬意を払ってるのがよくわかったもの。立場上当然の敬意などではなくて、むしろ彼等の雰囲気はフランクなくらいだったんだけど、だからこそ騎士のおじさん達が年若い殿下をちゃんと信頼して上に戴いているのがよく分かったというか。


 歩きながら、アストレアさんは「ほら」と人差し指を振る。



「私の場合は、ウチのリーダーの見てくれがあんなだから、基本的に交渉事は私の仕事なんですよ」


「あー」



 言われて思い出すのはアストレアさんの上司である黒竜卿の姿である。あんなトゲトゲの全身鎧を常に身に纏っている人なので、普通の椅子じゃあ座ることすら出来はしない。先の会議にクランリーダーの彼ではなく秘書のアストレアさんが出席したのもそういう都合なのだろう。

 それでもってアストレアさんが王族の存在にも比較的動揺していないように見えたのは、単純に踏んできた場数の違いということなのか。

 私は一応『赤原同盟』の代表という形で会議に出ていた。討伐者クランからの出席者はクランの等級で選ばれていて、Bランク以上のクランからは代表者が出て情報共有を行い、それ以外のクランやクランに所属していない討伐者に対してはギルドから後程開示が行われることになる。等級の高いクランは基本的に比例して構成人数が多いので、ギルドを介さずに直接情報を持ち帰ってもらったほうが話が早い。

 『赤原同盟』からは負傷したおばあちゃんの代わりとして私が、『パンドラ』からはアストレアさんが、もう一つのAランククランである『剣の誓い』からはサマンサさんという女性が出席していた。あそこはいつもはサブリーダーのクリューガー子爵が出てくるのだけど、彼もまた負傷しているため今回は別の人ということだった。


 ちなみに。

 私はロイによって軟禁状態から助けられた後、クランの空中分解を防ぐために出来ることをしようと思ってクランハウスに戻ったのだけど、そこでは上層部のメンバーが手ぐすね引いて待っていた。

 おばあちゃんの腹心だった彼女等をどうやって説得するのかが山場になると覚悟していただけに、それはかなり意外な展開であった。

 彼女等は戻った私を見るなり、当然のようにおばあちゃんの代役として暫定クランリーダーに据えて、あれよあれよとクラン内に周知させてしまった。どう考えても最初から決まっていたような手回しのよさに、私は結局おばあちゃんの掌の内で転がされているだけなのだと悟らざるを得なかった。

 おそらく、再起不能という虚報を流して行方を晦ませたおばあちゃんが、事前にその後の方針を腹心達に伝えていたのだ。私が自宅を抜け出したことは使用人達から知らされていてもおかしくないので、ならば私はこう動くだろうと見透かされていたのである。

 まあ、私にとっては好都合というか、クランを守るという一点だけはおばあちゃんと方針が一致していることを確認出来てむしろ嬉しかったくらいなのだけど、なんとなく釈然としないものはある。



「それにしても、やっぱ騎士団はすごいよねー」



 歩きつつ、私は靴を鳴らして床をこんこんと叩く。

 私達が現在歩いている場所は、実は今朝の時点では存在していなかった場所なのだ。いかにも急造感が漂う、鉄骨と板材を組み合わせた武骨極まる通路なのだが、これは今夜の戦闘のために騎士団が作り上げた仮設陣地の一部なのである。

 今日の午前中ごろから続々とロイエンタールに到着した王宮騎士団は、昨夜の戦闘で半壊したギルドの内外郭を修復するのかと思いきや、徐に増築し始めて巨大な迎撃陣地という名の砦を建造してしまった。



「それはもう、私達討伐者とは資金も人材の豊富さも比べ物になりませんからね」


「魔法使いの数だけなら討伐者もそんなに負けてないはずなんだけどなー」


「技術と教育の水準が圧倒的に異なります」



 国防を担う正規軍なのだから、当然と言えば当然である。討伐者だって魔物を相手に国防を担っていると言えなくもないが、私達はあくまでもビジネスとして魔物を狩る職業であるのに対して、騎士団は国防のために戦うことそのものが仕事なのだ。

 この仮設陣地は王宮騎士団が誇る魔導工作部隊の仕事である。

 地属性魔法により地形を操作し基礎を構築し、錬精術により物質の組成を変化させ岩石から鋼鉄を生み出す。それらを組み上げ炎属性魔法によって溶接し、強固な構造物を造り上げていく。水属性魔法により近くの水源を引っ張ってきて、鋼管の中を通して陣地に行き渡らせ、氷属性魔法により冷却し高温環境への対策とする。

 魔法使いの騎士団員ばかりが酷使されているというわけではなくそれ以外の団員も陣地構築のために測量を行ったり、あるいは設計者らしき者が現場監督の横であれこれと指示を出していたり、ギルドと連携して物資の搬入をしている者達も居れば、組み上げられた陣地にぎ装を施している者達も居る。



「こういう、規律訓練された行動っていうの? アストレアさんのところは比較的似たようなことしてると思ったけど」


「むしろ騎士団のそれがオリジナルで、我々はそれを模倣しているに過ぎません。まあ、必要に迫られてということでもあるのですが、『パンドラ』のような大所帯になってくると結局こういった組織構造を意識しなければ早晩機能不全を起こしますから」


「うわー、ウチも他人事じゃないなぁ……」



 その時、私達が歩いている仮設通路に大きな影が差す。

 この通路は元々のギルド外郭から増築された関係で、およそ地上三階程度の高さに敷設された一種の高架通路なのだが、その高架通路と同じ高さの何かが、通路の隣をゆっくりと歩いているのだ。仮設通路には壁がなく、落下防止の柵がある以外は視界を遮るものがないので景色がよく見える。

 重々しい足音を響かせながら移動するそれは、一言で表現すれば超巨大な鎧、である。

 その姿を見遣ったアストレアさんが、苦笑気味に肩を竦める。



「尤も、あれはどうやっても真似できませんが」


「おっきぃねー……」



 如何に工作部隊が地属性魔法を駆使して基礎と材料を整えようが、それを陣地として組み上げることが出来なければ意味がない。そこで大活躍している立役者こそが、私達の隣を歩いていく巨大鎧であり、なにかというと所謂ゴーレム兵器なのだ。

 勿論、一体や二体ではない。ここから見える限りでも数十体規模の相当な数が居る。原始的な土くれのゴーレムならばまだしも、どう見ても最先端技術の結晶であるゴーレム兵器を現地調達するというわけにはいかないので、あれらは騎士団の装備品の一種として王都から搬送されてきたものである。馬車鉄道で運んだのか、あるいは転移でもさせたのかはわからないが。

 陣地構築に大活躍だが、本来の用途は当たり前に戦闘用だ。



「私、『サラマンデル』の大群なんてどうすればいいんだーって思ってたけど、あのゴーレムの群れ見てたらなんか勝てそうな気がしてきたよー」


「というより、『サラマンデル』に対抗するためにこれだけの大盤振る舞いが許されているのだと思いますが」



 私が少し前に戦った『はぐれサラマンデル』はある種の例外であったと理解しているが、普通のサラマンデルでも一般の討伐者にとっては充分過ぎる脅威なのだ。なんせ、規模が違うのだから。そこをいくと、少なくとも体格で拮抗出来る巨大なゴーレムが戦列に加わってくれるというのは安心感が半端じゃない。

 のっしのっしと隣を歩いていたゴーレムはその腕に資材を満載して運んでいるようだが、歩幅が桁違いに大きいのであっという間に私達を追い抜いて去っていった。



「? あれは……」



 不意にアストレアさんが訝るような呟きを零したので、私はゴーレムに向けていた視線を戻す。私達が歩いている通路の先に、人影があったのだ。それ自体は別に、先程から騎士やギルド職員や討伐者と擦れ違うことも少なくないので、おかしなことではないのだが、アストレアさんがわざわざ気に留めた理由はすぐにわかった。

 その人影が、明らかにこの場に似つかわしくない雰囲気だったからだ。



「ていうか、あれ?」



 目を凝らした私は、その人影が見知った相手であることに気付き、反射的に呼び掛けていた。



「おーい! シィナー!」



 人影は二人組で、通路の端に立って先程の私達と同じようにゴーレムを眺めているようだった。

 その内の、私達に近い側に立っている黒髪の少女は、どう見ても私の友人の一人であるシィナであったのだ。シィナほどの黒髪美人を私は他に見たことがないので、間違えるはずもなかった。

 私が通路の先に聞こえるように大声で呼び掛けて手を振ると、シィナはすぐに気付いて視線をくれて、そして同時に私の隣のアストレアさんが何故か顔を蒼くしてこちらを見た。



「ちょ、おま何してんねんっ!?」


「えー?」



 小声で怒鳴ってくるアストレアさんに私が目を丸くしていると、彼女は前方を指差して言葉を続ける。



「どう見てもお貴族様やんけ! 人違いでしたじゃ済まへんで!!」


「へっ」



 言われてシィナのほうへと目を向けると、楚々とした歩みでこちらに向かってきてくれている彼女は、やっぱり私の知っているシィナに違いない。だが、彼女の顔にばかり意識が行っていて気付かなかったが、その装いは私が知っている姿とは大いに違っていた。

 まず、ひと目ですさまじい高級品であるとわかってしまうような、着物。生憎と東方の服飾にはそんなに詳しくないけど、あんな綺麗な刺繍だか染め抜きだかが入った絢爛な布地が高価でないはずがない。だがそれよりもなによりもヤバいのは、彼女が肩に羽織ったストールっぽいマントの存在である。

 どこからどう見ても家紋らしきものが刻まれたそれが、貴族の礼装であるということはいくら私でも知っている。ついでに言えばマントの豪華さが貴族としての格を表しているはずなので、ほぼ間違いなく、あれは高位貴族の礼装である。

 そして、黒髪を有する高位貴族という存在が、この王国においてはほぼほぼ唯一であるということも、幸か不幸か私は知っている。


 フレンネル辺境伯家。


 王国四大貴族の一角。

 それこそ、ここの領主であるブラッドフォード伯爵家すらを家格で凌駕しているほどの、大貴族中の大貴族である。



「――――ひょっ」



 変な声出た。あれもしかして私死んだ?

 だらだらと冷や汗を流す私の横で、アストレアさんは彫像のように固まっていた。

 つい先程、会議に王族がいる程度では緊張しないなどと話していた彼女であるが、直接相対するのはやはり話が違うのだ。などと言っているうちにシィナはとうとう私達の眼前まで辿り着いてしまう。

 というか、今更な話だがせめて私達が行くべきだったのでは。これだと私がシィナを呼び付けたみたい、というかそのものではないか。

 冷や汗を増量した私に、シィナはおかしそうに表情を緩めた。



「お友達にそのように怯えられては、わたくし、寂しくなってしまいます」


「えっと、いやあの、私」


「身分を隠していたのはわたくしですし、ここは公の場でもございません。どうか、これまで通りに接してくださいませ」



 私としては彼女が腰に佩いた太刀がいつ抜き打たれるか気が気でなかったのだが、そんな緊張を知ってか知らずかシィナは私がよく知っているいつも通りの穏やかさで微笑んでいる。



「改めまして、イオ・キサラギ・フレンネルでございます。故あって、シィナという名で討伐者活動もしております。フレデリカさんには、その折に大変お世話になりました」



 ね? と悪戯っぽく目を細めて水を向けてくるシィナ改めイオに、私はようやく変になっていた呼吸を落ち着けることが出来た。隣のアストレアさんは未だに恐々としながら、私に向かって畏怖と感心が入り混じったような視線を向けてくる。

 いや、別に私はなにも凄いわけじゃないんだけど、よく考えなくても四大貴族のお嬢様にお友達認定されてることって相当凄いんじゃなかろうか。


 しかし、少し思うのは、もしかして貴族というのは私達平民が思うほどには怖くない人達なのかもしれない。だって目の前のイオは言うに及ばず、ロイだって貴族だけど優しいし、ロイのお友達の貴族の子もいい子ばかりだし、ダンクーガの人達だって皆いい人だし。考えてみれば貴族といえど同じ人間なのだから、闇雲に恐れる必要なんてないのかもしれない。



「それと、こちらはわたくしの級友で――」


「プリムローズ・フラム・アシュタルテだ。よろしくしてやるつもりはないから覚えなくていいぞ」



 そんなことなかったわ。

 イオは一人ではなかった。隣になんだかとても可愛らしい少女を伴っていたのだ。こんな場所でシックなゴシックドレス姿の白髪の少女はどこからどう見ても貴族のお嬢様であるわけだが、イオのお友達ならばきっとこの子もいい子に違いないと思った。


 そんなことなかった。


 たぶん十歳そこそこくらいの幼い女の子だというのに、威圧感が半端じゃない。下から睨まれてこんなに気圧されたのは初めての経験である。彼女が名乗った瞬間にアストレアさんが『ひゅっ』と呼吸を止めたが、理由はわかる。


 だってアシュタルテってこの子も四大貴族じゃないですかやだー!


 凄い。今日一日だけで王家に加えて四大貴族の半分とエンカウントしてしまった。生きて帰れたら自慢に出来そう。

 というわけでビビり散らす私とアストレアさんを庇うように、イオがプリムローズちゃんに声を掛ける。



「また貴女はそんな物言いをして」


「ふん」


「どうして悪印象を振り撒くようなことばかりするのです?」


「親の教育がよかったからだろうな」



 ずっと憮然としていたプリムローズちゃんだが、イオに言葉を返す際には笑みを見せた。といっても見た目にそぐわない露悪的なニヤリ顔ではあったものの、少なくともイオに対する気安さのようなものは感じた。



「申し訳ありませんお二人とも。アシュタルテさんは聞いての通り少々お口が悪いところがございますが、理知的なお方です。理不尽をなさることはありませんのでご安心ください」


「それは貴様等の心掛け次第だがな」


「もうっ、またそうやって」



 折角のイオの気遣いを混ぜっ返すプリムローズちゃんに、またイオが言い募ろうとして、私は咄嗟に話を逸らそうとした。イオとプリムローズちゃんの関係性というか力関係が今一よくわからないせいでもあるのだが、喧嘩をするなら他所でやって欲しいし、お願いだから私達を巻き込まないで欲しい切実にっ。



「あああのっ、イオ達はここで何を?」



 とりあえず咄嗟に出た質問がそれであったが、それ自体は普通に気になることだ。先程私とアストレアさんが出席していた会議の場にイオ達は居なかったし、だとすれば一体なんの用事があってご令嬢が二人してこんな仮設通路にたむろしていたのか。

 私の質問に対する反応は対照的であった。

 イオは少し困ったような笑みを見せ、プリムローズちゃんは雰囲気を明るくしてぴこんと顔を上げた。



「ええと、そのなんと申しますか……見聞のため、でしょうか」


「ゴーレムをな! 見に来たのだっ!」


「「はい?」」



 失礼とか抜け落ちてきょとんとしてしまった私達には構わず、プリムローズちゃんは通路の柵まで駆け寄って、そこから見える景色を指差した。



「こんな光景、二度と拝めないかもしれないからな。この機に思う存分眺めておかなければ! 見ろ、アイゼンクリーガがこんなに!」



 そう言って彼女が興奮気味に示した先には、さっき私達の横を歩いていったのと同型のゴーレムの姿があった。陣地構築のために駆り出された同型のゴーレムが無数に居るので、私も最初に目にした時は驚いたものの、今となっては『あーはいゴーレムだね』くらいにしか思わない。

 すると私達の反応が鈍いのがお気に召さなかったのか、プリムローズちゃんは頬を膨らませた。



「しかもマークフォーなんだぞ! まだ実戦配備されてから半年程度しか経っていない最新鋭型だ! それが群れを成している光景なんて、間違いなく世界初なんだからな!」


「え、えと……マークフォー?」


「第四世代だ! 嗚呼……あの直線と曲線が滑らかに連なるシルエット、たまらん……! ダンパーが沈み込む重量感、たまらん……!! 駐機姿勢の鉄塊感、てゃまらんっ」



 うっとりと恍惚とした眼差しで遠くのゴーレムを眺めるプリムローズちゃんは、そのまま涎でも垂らさんばかりの勢いである。ほんの一瞬前までの威圧的なお嬢様像は木っ端みじんに消し飛んだと言えよう。

 最早その姿はただの変な人である。彼女の容姿が反則的に優れているので、辛うじて怪しさよりも可憐さが勝っている。



「ゴーレムの建造に際して視覚情報がもたらす戦術的利点を考慮に入れた技術者の英断には拍手を送りたいところだ! わざわざ複数のデザイナーを集めてゴーレムの外観をコンペティションしたんだぞっ! やはり見た目というのは重要だ。敵を威圧し、味方を鼓舞し、そしてなによりかっちょいい!! あっ、こっち来た!」



 早口過ぎて全然聞き取れない蘊蓄らしきものを披露しながら、また一体のゴーレムが資材を運びながら仮設通路の横を通過しようとしていることに気付いたプリムローズちゃんは大興奮だ。

 仮設通路の落下防止柵は私達にとってはちょうどいい高さだけど、とっても小柄なプリムローズちゃんにとっては少々高過ぎるみたいで、彼女は大接近してきたゴーレムを思う存分観察するために殆ど跳び跳ねるようにして柵に上半身を乗せて身を乗り出し、浮いた両足をご機嫌にパタパタさせている。半ば宙に浮いたような振る舞いは、たぶん魔法で姿勢制御をしているのだろう。無駄に高度で呆れる。

 かと思えば通り過ぎ行くゴーレムを追い掛けるためか、ぴょんと飛び降りて、てててーっ、と少し前方まで駆けていき、また柵に飛び付いてパタパタ。ゴーレムを操っている騎士のサービスなのか、通り過ぎ様にゴーレムが軽く手を振ってくれた日にはもう、プリムローズちゃんは瑠璃色の瞳をきらっきらに輝かせて歓声をあげる始末。


 威厳ナシ!


 いやまあ、最初の威圧的な態度よりもずっといいと思う。うん。

 なんというか、こう。



「かわいい」

「かわいい」

「かわいい」



 全会一致。かわいいは可決されました。

 やっぱり、意外と貴族って怖くないのかもしれない。



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[一言] ゴーレム萌えのプリム氏Kawaii。 でっかいから流石に侯爵家でも持ってないよね…。 強化外骨格なら貴族家の保有もありかと思うけど…。 基地祭りで自衛隊機を激写するカメラの人みたく、PiG…
[良い点] 全会一致でかわいいが可決されてしまったか。 さすプリ(さすがプリムローズお嬢様)。 イオちゃん、PiGで撮ってクラリスに送ってあげて! それにしてもこの食いつき具合、そのうち自分専用機…
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