488話_side_Primrose_『剣の誓い』クランハウス
~"転生令嬢"プリムローズ~
え。なにこの空気。
なんで私は紅茶を飲む姿を全員に見守られているのか。本気でわからない。
シリウス閣下の治療をして欲しいとベルさんからスレイに依頼があったそうで、それはこちらとしても好都合だったのでさっさと都合をつけてお招きに預かったわけであるが、応接室に通されたかと思えばミリティア嬢の執事君が出てきてお茶を淹れてくれて――という次第だ。
ちなみにこの場の面子はなんか挙動不審なベルさんに、その後ろに控えているシビル先生とグレン。外部講師組ということで、私と面識があるためこの場に呼ばれたのだろう。
んでミリティア嬢の執事のトビアスくん。主人公ちゃんの身辺に関しては調査済みなので、彼のこともリゼルちゃんというメイドのこともレックスくんのメイドのクリスティンさんのこともついでにダリオくんのことも普通に知ってる。
それから私が同行させたスレイとヴァイオラ。まあ人選的には妥当なところだろう。スレイという名のドロシーはともかくとして、ヴァイオラおじさんはこう見えて『ヴァイスヤークト』屈指の常識人だからな。他がイカレ過ぎてるだけとも言う。
プリムローズとして活動するからには実家の風聞にも配慮しないといけないので、久し振りに令嬢ムーブかましてやるかと意気込んだはいいものの、どうしたことか私が何もしていないのにベルさんがビビってる件。
かと思えば彼女に限らずシビル先生達もなんだか様子がおかしいし。これはあれかな、私の全身からあふれ出るアシュタルテ侯爵家特有の外道オーラが仕事をしちゃったのかな。そのわりにはトビアスくんは平気そうな顔しているし、たぶん彼は外道耐性が高いんだな。きっと普段から外道に曝されているに違いない。突然のミリティア嬢外道説爆誕。
冗談はさておき。
まあ普通にアシュタルテ侯爵家のネームバリューが強過ぎるだけだろう。私本人にはなんの実権もないに等しいが、さりとて私に対する礼を失すれば本物の外道(※お父様)が出てくる可能性があるのだから、そりゃあ下手なことは出来んわな。
みんなごめんよー、ストレステストさせに来たわけじゃないんじゃよー。
余談だが紅茶のレシピの件は職業病みたいなものである。
いつかの夜会でシューベル氏に喋った気もするが、私達のような裏家業においては幻影によるなりすましへの対策というのは常に求められる。そしてこれは主人公ちゃんに講釈を垂れた気がするが、だからこそ私達のような人種は己の輪郭――所謂パーソナリティを曝け出すことをとかく嫌うのである。
紅茶の好みに関して言えば、実のところ私はそもそもコーヒー党なので紅茶よりもコーヒーが好きだ。それでも紅茶を飲むのは勿論カッコつけるためだ。一応、お紅茶は令嬢のフォーマルアイテム的なところがあるので、社交のために少なからず嗜んでおく必要もある。それはともかく紅茶で好きなレシピはと訊かれれば、圧倒的にクラリスちゃんの淹れる紅茶である。なにが特別なのかというと隠し味が違う。具体的にはマシュマロ。私がマシュマロティーを好むことを知っているのはこの世でクラリスちゃんだけであり、絶対に私と彼女が二人きりの時にしか淹れないものだ。
つまり私と二人きりなのにクラリスちゃんがマシュマロティーを淹れなければ、それは異常事態を意味する。クラリスちゃんに限らず、ハイメロートやヴァイオラやブラックピッグなどに対してもそういう判断材料が別個にある。そういうのを張り巡らせておかなければなんとなく不安になってしまうのは紛う方なき職業病だろう。
なお今回クラリスちゃんがダリオくん経由でトビアスくんに伝えたのであろう茶葉のブレンドは比較的私好みのレシピであり、クラリスちゃんがそれを伝えたということはなんら含む意味がないということだ。
余談ついでに、この従者が主人の好みをこっそり伝えるという文化。これマジで大事。
特に学院でよく見かけるような、甘やかされて育って自意識だけが不相応に肥大化した我儘令嬢令息に限っては、遇された先で自分好みの品が出てこなかっただけでキレ散らかす輩が普通に居る。それが当然の環境で育ってきたからね。
私のような一応大貴族は基本的にもてなされる側なのであまり神経質になる必要はないのが幸いだが、家格の低い貴族達にとっては冗談抜きで死活問題になりかねないんだこれが。
さあ、なんでこんな空気になってるのかは謎だし、一応ゲストであるはずの私が進行の音頭を取らねばならないのも謎だが、たぶんコレ私が話進めないと一生進まないな。
というわけで本題にいきたいのだが、そのためにはベルさんをなんとかしなくては。
とりあえず比較的話が通じそうなグレンに振ってみる。
「なあグレン」
「うん?」
「ダンクーガ夫人は一体どうしてしまったんだ」
「心の準備が間に合わなくて頭が爆発したようだな……」
ようだな……じゃねーよ。
だがまあ、理解出来なくはないのだ。ベルさんの望みはシリウス閣下の治療である。重傷を負っている閣下を今夜の戦いに真面に参戦出来るようにするには、最早通常のどんな治療手段でも無理だろう。となれば私がバッヘル領でクロードくん達を治したようなインチキ回復魔法擬きに頼らざるを得ない。
つまり彼女は頼む側の立場だ。
そして相手は悪名高きアシュタルテ侯爵家。
どんな対価を要求されるかわかったものではない。ここで言うのは、法外な報酬を吹っ掛けられるという意味ではない。むしろ金銭の話であればわかりやすかっただろう。問題は我々が『金に困っておらず地位にも名誉にも興味が無い外道』という厄介極まりない一族であるということだ。要するに文字通りの意味で、本当の意味で何を要求されるかわかったものではないのである。
これで時間的な猶予があれば話も違っただろう。クリューガー子爵なども交えてじっくり作戦を立てればよかった。だが生憎とそんな時間はない。つまり碌な作戦もない。そこにアシュタルテ襲来。ゲーム―オーバー。
まあ、打診があったのはベルさん側からとはいえ、この時間に押し寄せたのはこちらの都合だ。というのも私、この後ゼロ円スマイルから呼び出し食らってるので。
なので時間は掛けられないし、勝手に纏めさせてもらおう。準備のための時間を与えないように早急に交渉に望むことで相手を慌てさせて主導権を握るという卑劣極まりないムーブだぞ!
「まず、ダンクーガ夫人。バッヘル領ではハイゼン姉妹が大変世話になったようですね。お礼申し上げます」
「はっ、はい。いえ、それはむしろこちらの台詞と言うか……あ、やっぱりリスティちゃんも貴女の配下なんだ?」
「ええ。スレイは私の子飼いの兵士ですが、リスティは外部の傭兵という違いはありますけど」
と言って示すのは背後に控えるスレイの姿だ。尤も、実はこの人がリスティなんですけどね。
「今回、貴女が我々に望むことに関してはスレイから聞いていますが、私がこうしてこの場に臨んだのは、こちらからも貴女方に望むことがあるからです」
私の言葉にベルさんは頷く。
当然、互いの望みの程度が釣り合っていれば、それを交換条件として丸く収まるだろう。
きっとベルさんは少ない時間の中で様々なパターンを考えただろうし、あるいは代替として自分から提案出来る条件なども見繕ってきたはずだ。今彼女の脳裏には私の言葉に対応して切るためのカードが用意され始めていることだろう。
だが、申し訳ない。
私は貴女の思惑に沿ってやるつもりなど更々ないのだ。
「私の望みは一つ。次の戦いでシリウス閣下がサラマンデルロードと戦うことです」
「「「は?」」」
綺麗に声が揃った『剣の誓い』組に構わず、言葉を続ける。
「そのためにこちらが提示できる対価として、シリウス閣下の現在の負傷を一切の後遺症なく完治させる用意があります」
「「「はぁ?」」」
言うなれば、怪我を治してやる代わりに殺されるかもしれない相手と戦ってこいや! ということだ。どうだ外道だろう。
などと嘯いていても仕方がないので、私は真剣な表情を和らげて肩を竦める。
「所謂、利害の一致というやつですね。貴女方はシリウス閣下に戦わせたい。我々もシリウス閣下に戦って欲しい。閣下本人のご意向は、確認するまでもないと思っても宜しいですか?」
「あ、はい。ええと、既に『リベンジさせろー!』って喚いてるくらいだから」
「結構。ただしこちらとしても技能の安売りはいたしませんし、情報を秘匿する観点からも条件を設けさせていただきます。治療の対象はシリウス閣下お一人だけです。また貴女方の治療現場への立ち合いは基本的に認めません」
同じく重傷を負っているクリューガー子爵などの治療は行わない。線引きを厳格に決めておかねばキリがなくなるからだ。
そして立ち合いを認めないのは私の都合である。というのもシリウス閣下の傷を治すための方法は言うまでもなく私の時間魔法による『遡行』なわけだが、つまり今背後に控えているスレイことドロシーではなく私自身が執り行う必要がある。
即ち、私が転神してスレイをやればいいだけなのだが……上手くいかないんだなぁこれが。ベルフェルテ戦で変なことを試したのがいけなかったのか、どうもアヴァターが安定しないのだ。一過性のものというか、私の調律次第で解決する問題だと思うが、多少手こずりそうではある。今朝の時点でドロシーを影武者に仕立てた際にはまだ発覚していなかった問題だが、結局選択肢はあるようでなかったということだ。
これが意味するところとは、少なくともシリウス閣下本人には私の正体を晒すことになる、ということだ。勿論本意ではないし、情報漏洩を防ぐための手立ては実行するが、その対象は少ないに越したことはない。
というわけで、可能ならば私と閣下、それからカモフラージュのためにスレイ(ドロシー)の三者のみの空間で施術を行いたいところだ。
「……わかりました。こちらからも条件、というほどのものではないけど、治療はこのクランハウスの医務室で行ってください」
「問題ありません。ではそのように」
私の身一つあれば事足りるので、別に場所はどこでも構わない。
それにしても、この条件で了承したということはルークくんは『花告祭』での一幕を両親に伝えていないのだな。私が息子を殺そうとした相手であると知っていれば、流石にもう少し警戒するだろう。
尤も、アシュタルテ侯爵家の風聞だけでも警戒されるに充分だと言えるが、今のところは私個人が培った信頼がそれに勝ったのだと思っておこう。私が、というよりスレイが、かもしれないが。
「すぐにでも掛かります。……スレイ、行くぞ。ヴァイオラはさっさとコートでも回収してこい」
ベルさんに案内をお願いし、私は腰を上げ、スレイを伴って移動しようとする。ヴァイオラは別に要らないので適当に追い払っておく。
するとベルさんは若干不思議そうな顔をして、
「貴女も行くの?」
実際に治療を行うのはスレイなのだから、私まで行く必要はないだろうという疑問だった。
私はそれに笑顔を返した。
「ええ。疑り深い性質でして」
「別に、貴女との約束を破ったりはしないよ?」
「ああいえ、そうでなく」
ベルさんが私の提示した条件を無視して治療現場を覗き見すると思っているわけではない、と言っておこう。
実際、彼女はそんなことしないだろうし。人間性云々以前に、そもそも彼女はスレイの魔法行使をその目で見ているのだから、今更正体を確かめようとする理由もない。
なので、まあこのくらいが妥当だろう、という理由を告げておく。
「私は、貴女方ほどにこの女を信用しておりませんので」
◇◇◇
「――よく言うよまったく」
「ある意味事実だ」
「ボクからすれば酷い茶番を見せられた気分だね。噴き出すのを堪えるのに苦労した」
「貴様が脈絡もなく噴き出したところでスレイの風評に傷がつくだけだから存分に噴き散らかしてくれて構わないぞ」
「いやそこは構えよ」
「……なぁ」
「「うん?」」
私とスレイが同時に声のほうに振り向くと、そこにはベッドに横たわったまま胡乱な視線を投げてくるおっちゃんが。
まあシリウス閣下なんだけども。
「俺は一体なにを見せられてんだ?」
「ああ失敬。実はですね――」
簡単に事情を説明する。治療云々の話は案内のベルさんが事前に説明しているので、私が語るのはこちらの事情。即ちスレイの正体である。
ちなみに私は閣下のベッドサイドの椅子に腰掛けていて、その背後にスレイの姿をしたドロシーが立っている。
「――と、いうわけです」
「こりゃあベルには聞かせられねえな……」
「ええ。勿論聞かせないでやってください」
黄昏るような顔をしている閣下だが、まあ私の言い分をまるきり鵜呑みにしたわけではないのだろう。謎の不調で現在の私はこの場で転神をしてみせることは出来ないので、証拠を示すことが出来ないのだ。
別に彼に信じてもらうことが目的ではないので、さらっと流して取り出したるは一枚の紙。
何かというと、所謂『同意書』である。これこれこういう治療行為をするから事前に承諾してくださいねっていうやつ。
「今まで見た中で一番斬新な『血の誓約書』の使い方だな」
「話が早いでしょう?」
大した内容は書いていない。私が閣下を治療する代わりに、閣下は私の正体を秘匿する、というようなことがつらつらと書いてあるだけ。サラマンデルロードと戦う云々のことは書いてない。敢えて書くまでもないし、書くことでスクロールの強制力が変な作用して閣下の足を引っ張る可能性も否定出来ないので。
とにもかくにも時間がないのだ。
私と彼の間で信頼関係などというものを悠長に培っている暇がないので、ビジネスライクに片付けよう。シリウス閣下は私から受け取ったスクロールを一撫でするように視線を走らせると、特に何を言うでもなくあっさりと署名をしてくれた。
本当に話が早くて助かる限りだ。
「では早速」
私は椅子に座ったまま『ChU2W』の端末刃を展開する。背後に広げた七基の端末を出力装置として、ブーストされた魔力で強引に閣下の負傷を時間遡行させる。
唱えるのはすっかりお馴染みの『再誕の祈り』だ。
「……訊いてもいいか」
膨大な金色の魔力が照らし出す中で、眩し気に目を細めた閣下が呟くように言う。
私は魔法を維持したまま「どうぞ」と促した。
「アンタはなんで俺を戦わせようとするんだ?」
「こうしないと貴方が死んでしまうから、ですかね」
私が治療をしようとしまいと、彼は戦場に立つつもりだろう。無論、出来る限りの治療を試みるだろうが、これだけの傷だ、気休めにしかなるまい。そしてそんなコンディションであのサラマンデルロードの前に立てば、結果は火を見るよりも明らかというものだ。
「英雄とは因果な商売ですな」
「……まあなぁ」
「ダンクーガの在り方は、ある意味で私達やリヒトベルガーに似ている」
この王国においてリヒティナリアは『主君』、アシュタルテは『悪性』、フレンネルは『均衡』、リヒトベルガーは『秩序』だ。
そしてダンクーガは『英雄』である。
彼等は魔物の脅威を前にして戦わないという選択肢を取ることが出来ないのだ。例え勝ち目など無く、死にかけていようとも。魔王という大禍が存在しない世界において『英雄』を名乗ることの宿業とでも言おうか。
初代の剣聖ダンクーガが一代限りの英雄であればよかった。しかしダンクーガは英雄を冠する伯爵家となってしまった。英雄の一族だ。一代限りの英雄を保全するために『逃げる』という選択肢を取ることすらを奪われた。ダンクーガは一人ではないからだ。
その辺り、何を考えてそうなったのか張本人っぽいヤツに訊いてみたいところだが、彼の現状を思えば、もしかするとダンクーガが英雄伯家となった経緯に剣聖本人の意思は関係していないのかもしれないな。
結論、英雄伯家は魔物を相手に戦い続けることでしか『英雄』を担保出来ないのである。
「魔王が既に居ないのに『英雄』を続けているのは、いつか必要になる日が来ると思っているからですか?」
「そんな大層なもんじゃねえ。親父や爺さんが受け継いできたものを、俺の代で終わらせるのもどうかと思ってるだけだ。……だがまあ、ルークに同じ道を歩かせるのかっていうと、多少悩むところもあるがな」
平和な世で、英雄たらんと拘る必要があるのか。
存在意義を問う悩みであった。
「『英雄』が求められる日は来ますよ。それも近いうちに」
「なに?」
「具体的には……」
今が学院後期開始の時期だからぁ、原作的に見て『宵の魔王』が復活するとしたら、
「半年後くらいでしょう」
勿論私はそれを阻止するつもりで居るが。
私の予言を聞いたシリウス閣下は少し意外そうに目を瞠った後、気が抜けたような笑みを浮かべた。
「?」
「いや、半年後がどうのって言った奴が、そういや最近もう一人居たと思ってな」
「おや……」
どっちかな。たぶんミリティア嬢かな。
ああそうそう。ミリティア嬢と言えば、
「少し前のことですが、学院にて」
「ん?」
「私とミリティア・リリア・ハートアートは思想的に対立しました。なので私は彼女を始末しようとしたのです」
「いきなりぶっこんでくるじゃねえか」
顔を顰めたシリウス閣下は、しかし台詞とは裏腹に然して動揺もしていなかった。
それで? と話の続きを促してくる。
「ええ。そこを貴方のご子息に邪魔されまして。勿論私は、邪魔立てするようなら彼も諸共に始末するつもりだったのですが、結局更なる横槍でうやむやになった……という顛末ですな」
「……ルークからそんな話は聞いてねえ。ここで言わなければ恩だけを売りつけられたはずだ」
「興味がありません」
失礼ながら、恩義とか損得とか、どうでもいいのだ。
いや勿論、あるに越したことはない。自らに利するファクターはいくらあっても困らない。
だが些事だ。
たった一つの大きな目標の前には、あまりにも。
「私があの時、ご子息を殺めなかったのは結果論です。単なる偶然の結果。もし、今後再び私とハートアートが対立することになれば、そして再びご子息が私を阻むことあらば…………まあ、何度も都合のよい偶然は起きないでしょう」
「…………」
「ね? 死んでる場合じゃなくなったでしょう?」
私は魔力を収め、端末刃を霧散させる。
ベッドから半身を起こしたシリウス閣下の身体には最早一片の傷もない。完全復活であろう。
しかし彼はそのことに反応を示すよりも、訝しげな顔で私を見てくる。
「ルークを殺してえのか、生かしてえのか、どっちなんだアンタは」
「重ねて申し上げますが、興味がありません」
言いつつ、椅子から腰を上げ、私はスレイを促して出口へと向かう。
興味が無いというのは一片の事実であるが、より正確に言うならば、それどころではない。
話が変わってきたからだ。
一言で表現するならば、バランス調整。
早急なテコ入れが必要なのだ。味方勢力というか、人類側に。
有識者曰く魔公とやらは全部で四人居るらしい。ということは、あのベルフェルテやフェンリス級のネームドがあと二人居るわけだ。魔公は当然魔王の復活を望むだろうから、つまり魔王復活を阻むためには奴等を殲滅せねばならない。
戦力が足りないのだ。圧倒的に。
私は自分自身が人間基準では大概なチートバグキャラだと思っているが、その私を以てしてもベルフェルテ一人の相手をするのがやっとなのだ。
単純計算で、私があと三人必要だ。
「……この世界をクソゲー化させているのは、一体どこのどいつだ」
思わず毒突く。後ろを歩くスレイが問うような視線を向けてくるが、なんでもないと手を振っておく。
まあ、今更な話。今更な話だ。
実際、慣れたものだ。
私の人生がクソゲーでなかったことなど、一度たりともなかったのだから。




