432話_side_Keika_『剣の誓い』クランハウス
~"生贄の少女"彗華~
ラクサーシャさんは四肢の全てを金属製の義体に置き換えているのだけど、先日の一件で一番最初に彼女に接触したダイちゃんが言うには、実際に戦闘になるまでは彼女の四肢がそういうものだとは気付かなかったらしい。というのは、ラクサーシャさんの義体は外観こそ完全に金属の光沢を有しているが、輪郭自体は生身の女性の手足となんら遜色ないものなのだ。彼女の職業であった修道女というのはそもそも肌を露出しない装いをするものなので、つまり修道女の格好をして普通に生活している分には、見た目で彼女の義体に気付くのは難しいということだ。さっきリュウ君が握手をして驚いていたけど、それどころか彼女の義体は体温や疑似的な感触すらも再現可能みたいなので、手袋越しに触ってもわからないくらいかもしれない。もっと言えば、全身を義体化していた修道士クロスは、金属製の義体の上から『スキン』と呼ばれる人工的な皮膚を纏って人間の振りをしていたので、同じようにすれば外観すらも生身の四肢相応に欺ける可能性すらある。
それはさて置き、何が言いたいのかというと、つまりラクサーシャさんの義体は彼女の生身の肉体を模したシルエットになるように製作されているわけだ。先日の一件でリュウ君が交戦の末に切断した義体は、一応は私達の戦利品ということで押収し、そしてこのクランハウスでラクサーシャさんと再会したことで本来の持ち主に返還され、最終的には修復作業を行うことになるロイドさんの手に委ねられた。彼の辣腕のおかげで、早くも義手のほうは最低限の機能を復旧してラクサーシャさんの肩口に再接続されているが、残る義足のほうは今もロイドさんの研究室にあって修復作業を進められているはずだ。
ところで、このクランハウスに来てから暫くの間、まだ私の友人達も復調しておらず、棚ぼた的に呪詛が解かれた私一人が元気ピンピン状態だった頃、それ故に私は他の人達の御世話役を一身に買って出ていた。それは友人達のみならず、同時期にここに来ていたラクサーシャさんのお世話も含まれている。元は被害者と加害者の関係だった私と彼女だけど、ここで再会した当初のラクサーシャさんはドルチェちゃんが死んでしまったと思い込んでいたこともあって、生気もなく、塞ぎ込んで、とても見ていられない有様だった。そんな相手を恨む気持ちなどすぐに消えてしまって、私は自分でも不思議なくらいに献身的に彼女の世話を焼いたものである。今だから思うが、きっと私自身も混乱していて、何かに打ち込んでいたかったのだろう。ラクサーシャさんは一人では何も出来ない状態だったので、食事の世話に始まり、着替えや入浴も全部私がお手伝いした。私には友人達のお世話もあったので、ずっとラクサーシャさんに付きっきりだったわけではないけれど、同じく介助役を担ってくれていたイザベルさんなんかと比較しても、やっぱり私が一番多くの時間を彼女とともに過ごしたと思う。
さて、そんなラクサーシャさんの入浴のお世話をしていた時のことだ。このロイエンタールという街の風土柄というのか、クランハウス内にも結構立派な大浴場があって、それとは別個に個室の浴室もいくつかあるのだ。その頃といえば私もまだ自身の容姿を晒すことに消極的だったし、ラクサーシャさんへの配慮もあって、入浴は専ら個室を使わせてもらうことになっていた。幸いなことに、私の身体は半ば魔物化してしまっているので、素の筋力は常人のそれを大きく逸脱している。四肢を失っているとはいえ、成人女性一人の身体を抱えて入浴の補助をするなんて以前の私ではとても考えられない重労働だっただろうが、魔物の膂力を以てすれば何程のこともない。そんなこんなで何度も彼女の裸を見ている私だからこそわかることがある。
ラクサーシャさんのボディラインは、そーとー凄いということだ。貞淑を求められる修道女として、ちょっとどうなのと心配になってしまうくらいには、どえらい身体つきをしている。まず胸がぼんっ、で腰の括れがきゅっ、からのお尻のはりがぼーんっ、である。ドルチェちゃんの件があって食事も喉を通らない状態だった当時でそれなのだから、健全に過ごしていた頃の彼女であればもっと凄かったのだろう。ボディラインが比較的出難い修道服でも、あれはちょっと隠しきれないんじゃないかな、と私は思う。最早自分と比較して悔しさすら湧かない程度には戦力の格差があるのだ。
それで、ここからがようやく本題なのだけど、そんなどえらい身体つきをしているラクサーシャさんの生身の手足を模して製作された義体というのは、やっぱり相応の造形をしているわけだ。特に足のほう。あの肉感的な魅惑のヒップから繋がって、違和感ないシルエットを描けるように、修道士クロスは余程入念に拘ったと見える。その制作風景を想像すると胃がキリキリむかむかしてくる私なので、それはもう考えないことにして、大事なのはラクサーシャさんの義体の脚は、すらっと長く、それでいてしっかりむっちりした素晴らしい造形をしているということなのだ。
私とリュウ君とラクサーシャさんが連れ立ってロイドさんの研究室を訪れると、そこでは作業台の上に置かれた女性の脚(のように見える義体)を囲んで突っつきまわしているいい歳こいた大人の男が三人も居た。
「「うわぁ……」」
あまりにショッキングな光景に、私とリュウ君のドン引きが唱和する。
いや、わかりますよ、作業台の上のそれが隣に居るラクサーシャさんの義体であるということは。勿論修復作業のために必要だからこうしていることも理解は出来る。ただ、左右の義体の片方は伸ばした状態で、もう片方は膝を曲げて立てた状態で置かれているという、ある種の扇情的なポージングの如き配置の妙と、先述の通り輪郭自体は普通に肉感的な魅惑の脚であるという点があわさって、なんだかとても背徳的な光景に見えてしまうのだ。しかもそれ、今は切り離されているけれども、これまでラクサーシャさんが日常的に使っていた彼女の脚なのだ。それを――
「いや待て。違う、これは違う」
慌てて振り返ってあわあわと弁明し始めるのはロイドさんだ。
「なにか非常に不本意な勘違いをされている気がするが、決してやましい目的があったわけではなくてだな」
「あははぁ、それキミ、語るに落ちるっていうんだよ」
ロイドさんの盛大な自爆というか自白を横から揶揄したのは、彼と一緒に義体を突っついていた初見の男性だった。室内にはロイドさんの他に二人の男性が居て、どちらもロイドさんと同年代くらいの若い人である。
揶揄をしたほうの男性は、適当に伸ばされた金髪を雑に纏めた、全体的にあまり身なりに気を遣っていなさそうな人だ。顔立ちとか体格はそれなりに優れているのに、自分の容姿を気にするという意識がまるでなさそう。別に不潔ではないけれど、言うなれば不潔にならない最低ラインで妥協しているみたいな。簡単に言えば、ロイドさんと同じタイプだ。彼もまた、研究に熱が入るとそれ以外の色々が疎かになって、平気で食事を抜いたり徹夜したり、衣服も着たきりだったりするみたいだし。
それともう一人のほうは、どちらかというと熱心な他二人を一歩引いた立ち位置で見ていただけという印象だったが、こちらは見た目の印象も他二人とは明確に異なる。一言でいえば軽いのだ。軽薄っていう言葉が一番似合う。整髪料でツンツンにセットされたヘアスタイルに、耳にはピアス、首元にはシルバーのネックレス、手にはいくつもの指輪、と一転して自身をデコレーションすることに余念がない雰囲気だ。
対照的過ぎる二人は私達にとっては初見の人物で、たぶんこれまでにクランハウス内で見掛けたこともないと思うので、ここに居るということはロイドさんを訪ねて外部から来たお客さんなのだろう。
「こっちのニヤついてるのがミヒャエル。チャラついてるのがヨシュアだ」
「そんな雑な紹介あるかよ……」
「あははぁ、ロイドに社交性を期待するだけ無駄だろう」
「いやコイツもお前にだけは言われたくねえと思うぞ……?」
などと仲の良い遣り取りをする彼等は、どうやら学生時代の同期だったらしい。ロイドさんと同種っぽい感じの男性がミヒャエル・グラハイト・シューベルさん。正反対っぽい感じの男性がヨシュア・ウル・ジレさんだ。名前から察する通り二人とも王国の貴族様であるらしいが、本人達曰く『実権のない立場でしかないので気にしないでくれ』とのこと。
彼等は王都の学院――私達の最終目的地でもあったエンディミオン魔法学院の出身で、大学部生時代には同じ研究室で切磋琢磨した仲なのだとか。腐れ縁が切れずに現在に至る、とロイドさんは不本意そうに教えてくれたが、学生時代の友達と今でもこんなに仲が良いというのはとっても素晴らしいことだと私は思う。故郷では辺境の小さな村育ちだった私達には、仮に緑后の件がなかったとしても一生縁のない話であっただろう、所謂キャンパスライフというやつだ。
ロイドさんの昔馴染みが二人で何をしに来たのかと思えば、なにも旧交を暖めに来ただけというわけではなく、どうやら別に目的あっての来訪だということだった。
「ドルチェが齎したフェムトファイバー擬きや、この義体の件で知見を借りたかったのでな。こちらで実験した結果と所見を添えてレポートをコイツ等の職場に送ったんだが……」
「ちょうど休暇で暇だったからねぇ。実物見たほうが話が早いよ」
「ってな具合でまさかの本人が乗り込んできたってところだな」
な、なるほど。
研究者という職業のイメージにそぐわないフットワークの軽さだけど、よく考えればロイドさんからして自分で黒い森に乗り込んで必要な素材を魔物からぶんどってくる肉体派の研究者なので、あれかな、類友ってやつかも。
なお王都からこのロイエンタールまでは馬車鉄道が直通なので、ある程度の財力があって身元が確かな王国貴族であれば即日で来るのも難しくない。私達の苦労を思えば若干の虚しさを禁じ得ないが、異邦人というのは往々にしてそういうものだ。
「それで、実際に見てどうなんだ? 役に立たないなら今すぐ帰ってくれていいぞ」
冗談か本気かわからない調子でそんなことを言うロイドさんに、ヨシュアさんは慣れたものなのか苦笑を浮かべた。彼は手袋を着用した片手で、作業台の義体の横に置かれていたガラスケースのようなものを取り上げた。
中にはキラキラと輝く糸の束のようなものが封入されている。察するに、あれがドルチェちゃんの使っていた『なんとかファイバー』なるものだろう。私の視線を疑問と受け取ったのか、ヨシュアさんはケースの中身を観察しながら言葉を発する。
「俺は色々と手広くやってるほうだけど、一応専門は繊維系でさ。っと俺達全員、学生時代は魔法材料の研究をしてたんだ。俺は繊維系、シューベルは金属系、ロイドは樹脂系、ってな具合でな」
「そうなんですね……?」
正直その辺の学術的な知識はさっぱりの私である。傍らのリュウ君を見ると無言で肩を竦められた。彼は王国語を話せないので黙っているが、聞き取りは出来るといってもネイティブの自然な会話にはついて行けないし、よしんば聞き取れても専門的な内容を理解するのはそもそも難しいだろう。
「コイツに関しては、この場でうんともすんとも言い難いが、わりと可能性は感じる。てかロイド、これどっから出てきたって?」
「おそらく教国由来の先端材料かなにかだ」
「ははぁ、成程道理で」
愉快そうにケースを眺め眇めつしているヨシュアさんの視点には、きっと私達素人では理解出来ないなにかが見えているのだろう。
次にロイドさんが水を向けたのはシューベルさんだ。何故か彼だけは友人からもファミリーネームで呼ばれているから倣っておくけれど、なにか事情でもあるのだろうか。
「僕のほうは、そうだねぇ……」
こちらはこちらで、何が楽しいのか終始ニヤニヤしている。
適当そうに視線を巡らせた彼が捉えたのは、私達と一緒にこの場に訪れていたラクサーシャさんの姿であった。
「ねえロイド。もしかしなくてもそこの車椅子の女性がこの義体の適合者だよね?」
「そうだ」
ロイドさんの肯定に応じてぺこりと頭を下げて名乗る彼女の言葉が聞こえているのかいないのか、シューベルさんはずんずんと大股で彼女のほうへと歩み寄ってくる。妙な迫力に圧されて私とリュウ君が思わず脇に避けて道を空けると、シューベルさんはラクサーシャさんの目前まで来て、感情の読めない笑顔のまま彼女の身体を見下ろした。
車椅子に座ったまま見上げることしか出来ないラクサーシャさんは、ここに来てからは仕事着である修道服を着ていない。そもそも酷く損傷してしまったので、元々来ていた服は処分してしまったのだ。故に見た目から彼女が教会関係者であると判断することは出来ない。今の彼女は黒い簡素なワンピースを着用していて、ぺたんと平たい膝丈のスカートを見れば、中に足がないことは見て取れる。
「接続側の義体が見たいんだけど、見せてくれるかい?」
実になんでもないように告げたシューベルさんに、私は一瞬彼がなにを言っているのかがわからなかったが、私が理解するよりも先にラクサーシャさんが迅速に答えてしまう。
「どうぞ」
そう言って、彼女はなんの抵抗もなく衣服のスカートを捲って見せたのである。
余談だが、どえらいボディの持ち主であるラクサーシャさんは、着用する下着も結構どえらい。特にショーツ。いや、足の付け根まで義体化されているから、関節への引き込みを避けるためには着用出来る形状が限られるのだと、本人から聞いてはいるけれども。
一言で表現すれば『紐』である。
「どれどれ……」
両足の付け根付近で切断された義体を見せるということは、つまりそういうことであり、車椅子に座ったままスカートを両手で捲り上げて色々とアブノーマルな光景になってしまっているラクサーシャさんを、あろうことかシューベルさんは平然とした顔で正面にしゃがみ込み、顏でも突っ込まんばかりの至近距離で観察し始めたではないか。
「な、なな……な、」
わなわなと震えた私は、次の瞬間、
「なにしてるんですかぁああああああああああッ!!?」
渾身の力で振り抜いた右手がシューベルさんの肩のあたりを捉え、彼は「へぶぃ!?」と変な悲鳴を上げて吹っ飛んだ。
魔物の膂力から繰り出される手加減抜きの全力全開パンチをお見舞いしてしまった事実に気付いた私が蒼褪めた時にはもう遅く、彼はその辺の器具を派手に巻き込みながら戸棚の影に突っ込んで見えなくなった。
慌てる私を他所に、リュウ君がぼそりと呟く。
「ふむ……相変わらず際どいな」
「リュウ君?」
しっかりちゃっかりはっきり見ていたらしい彼を笑顔で睨む。
相変わらずってどういうことかなぁ?
「い、いや違うぞケイ。戦った時に、たまたま、そう! 不可抗力でっ」
「えぅぅ~! リュウ君のすけべぇ!」
やっぱり男の人はああいうのが好きなのだろうか。彼の好みならば挑戦したいところだが、生憎と私のような貧相な体形でそういう無茶をすると非常に気の毒な光景になってしまうこと請け合いなのである。
というか!
「ラクサーシャさん! 修道女がそんなことしていいんですか!? ダメですよね!?」
「はい、いいえ。ええと……はい?」
何故叱責されているのか全くわからないとでも言わんばかりに目を白黒させているラクサーシャさんに、もしかして私のほうが間違っているのではないかと不安すら湧いてくる。そんな状況に助け舟をくれたのは、部屋の隅の定位置に格納されているロイドさんのマギアドライブからの声であった。
『ラクスにその辺のこと言っても意味ないのだ』
「え? ドルチェちゃん?」
『ドルチェ達は修道士様の義体化適合手術を受ける時に、精神構造に一定の暗示処置をされているのだ。よくわかんないけど、人ならざる形態を有するにあたって、人間としての自己認識を保護するために必要な処置なんだって』
ど、ドルチェちゃんが難しいこと言ってるぅ……!
勿論まったく理解出来なかった私は、助けを求めてリュウ君のほうを見る。なおドルチェちゃんの言葉は私が喋っている『魔物語』と同系統の術理的言語なので、リュウ君にもちゃんと意味が通じている。
「まあ、要するにゲテモノ義体を接続された人間が、自分をゲテモノであると認識してしまわないようにセーフティを掛けたということだろう。武道でも、たまに似たような話を聞くよ」
「へぇ……そうなんだ」
「だが、それがなんだってあけっぴろげにパンツをご開帳することに繋がるんだ?」
リュウ君、言い方っ!
折角私が頑張って直接的な表現を避けてきたのに!
『ぱんつは知らないけど、ラクスの場合は自分の義体に疑念を抱かないように暗示されてるはずだから、隠すっていう発想がないのだ。ついでに言うと手足が一本もないのにわりと平気そうなのも暗示で精神が守られてるからなのだ』
「一概に良し悪しとも言い難いということか……」
「えぅ、つまりどういうこと?」
「そうだな……簡単に言えば、シスターラクスは『下着を見せてくれ』と言われたらちゃんと断れるが、『義体を見せてくれ』と言われたら無条件で応えてしまうということかな」
それでたまたま義体がああいう状態だったので、ああいう悲劇が起きてしまったと。
「おぉーいシューベル無事かぁ? 今度こそ死んだか~?」
わりと洒落にならない不吉な冗談を言いながらヨシュアさんが散乱する器具を掻き分け、なんとかシューベルさんを救出してきた。
咄嗟に本気で叩いてしまったのでかなり危険な威力が出てしまったと思うのだけど、幸いなことにシューベルさんに目立った怪我はなさそうだった。
「いてて……こんなこともあろうかと、服に衝撃緩和を仕込んでおいて正解だったよ」
「腕折った教訓が活きたな」
察するに、身に纏った衣服に予め衝撃を緩和する魔法が施されていて、それが私のパンチを和らげてくれたみたいだ。
「あのねえキミ、僕じゃなかったら死んでたかもしれないよ今のは」
「ごめんなさいぃ」
「それに患部を視ずに診察できる医者がいるかい? いないだろ? それで殴られたらたまらないよ」
「お、おっしゃるとおりですぅ」
只管ぺこぺこ頭を下げるしかない私に、リュウ君が気遣わし気に「今度から気を付けような」と言ってくれる。
ぶつけた腕を擦りながら戻ってきたシューベルさんは、半目でヨシュアさんのほうを見遣る。
「殴るなら僕じゃなくて、後ろで覗き見してただけのヨシュアにしてほしいところだねぇ」
「そういうこと言っちゃうなら俺からも言わせてもらうがなシューベル、そもそも悪いのはいきなりあんなこと頼むお前だからな? 見せる見せない以前に、デリケートな部分だってのは普通ならわかるところだろうが」
「?」
「いやマジでわかんない顔すんな。医者だって普通は患者の尊厳に配慮するからな?」
最終的に、私もシューベルさんもラクサーシャさんも全員が等しく悪かったね、で落ち着いた。
なお私はガチ反省である。本当によくない。魔物化した肉体の出力を持て余しているようでは、いつ誰を怪我させてもおかしくない。
「ほんで? 殴られた甲斐はあったのか?」
「うん。わりと僕の得意分野だねぇ。ちょうど都合のいい実験体もといモルモッtじゃなくて、あーテストベッドを探していたところだから、運がいい」
シューベルさんが自信ありげに告げた言葉に、ずっときょとんとしていたラクサーシャさんの顔色が変わる。彼女ほどではないが、私もリュウ君も、あと気のせいでなければマギアドライブの中のドルチェちゃんも。
なおシューベルさんの発言中の不穏過ぎる部分に関しては全会一致で聞かなかったことにした。
「どうかなロイド、彼女の処置、僕に任せてもらっても――――うん?」
既にやる気満々なのか、責任者的立場であるロイドさんに了解を取ろうとして振り向いたシューベルさんが、言葉の途中で怪訝そうな声を上げる。私達もロイドさんのほうを見てみると、そこには――
「なんてこったロイドのヤツ、――立ったまま失神してやがる」
ああ無惨。理由は推して知るべし……!




