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輪廻転生って信じる?  作者: Lynx097
一章_魔法学院と黒い森

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22話_side_Mil_平民学生寮_サロン



 ~"もう一人の転生者"ミリティア~



 この学院の学生寮は性別だけでなく身分でも別れていて、貴族階級用の学生寮と平民階級用の学生寮は別の場所に所在している。

 寮の設備を見ても、当然というか貴族用のほうがだいぶ豪勢なのだけど、平民用の寮にもサロンくらいは有る。

 平民階級の学生たちってサロンみたいな施設を使う習慣が薄いというか、そもそも茶会とかそういうのにあまり興味がないような人が多いのか、基本的にこっちのサロンは空いている。習慣が薄いから、いざ利用しようと思っても勝手がわからずに尻込みしちゃうってのもあるかも。

 無論、貴族の学生がわざわざこっちに来ることも殆どないから、私がミアベル達と会うにはもってこいの場所なのだ。


 そんなわけで、暇な平日の夜なんかには私は平民用の学生寮を訪れて、サロンでミアベルやノエルとお茶を飲みながら談笑することにしているのである。折角憧れの主人公達と友達に成れたのだから、交流したくてしょうがないのだ。



「二人はもう学院に慣れたかしら?」



 私が訊くと、ミアベルは元気よく、ノエルは控えめに頷いた。



「最初はカルチャーショックで死にそうだったけど、流石に慣れてきたかな」


「私も」


「それもこれも、色々教えてくれたティアのおかげだよぅ!ほんとにありがとっ」



 ミアベルのまっすぐな言葉に、私も嬉しくなる。

 原作ではミアベルは貴族の価値観がわからずにトラブルを起こしたりもしてたから、それを未然に回避できるように色々とアドバイスをしたりしたものだ。私の苦労の甲斐あってか、ミアベルも原作よりスムーズに学院の空気に慣れることが出来たみたいだし、よかった。

 原作主人公にこんな風に感謝されるなんて、ファン冥利につきるってものだ。



「私が好きでやってることだし、大したこともしてないから、気にしないで」


「ティアってクールだよね~」


「ね。落ち着いてて、すごいと思う」



 むふふ。そんな風に持ち上げられると背中がむず痒くなっちゃう。

 なんだかんだで前世の分だけ精神年齢は高いはずだから、その分冷静でないと嘘である。

 中身はこんな感じのミーハーなんだけどね。



「変なヤツに言い寄られたりはしてない?ミアベルもノエルも美人だから、心配だわ」


「あはは、ないない。ノエルはともかく、わたしなんかに言い寄る物好き居ると思う?」



 からからと笑うミアベルに、ノエルが微妙な顔を向けている。

 わかるわかる。

 その無自覚さと無防備さが見てて心配になるんだって!ミアベルには自分がどれだけ男子の視線を集めているのか、頼むからほんの少しでも自覚して欲しいところだ。



「あ、そういえば」


「なに?やっぱり――」


「じゃなくて、幼馴染と再会したりはしたなぁ、って」



 ミアベルが何気なく言った言葉に、私は内心の興奮を必死に抑え込んだ。

 気分は『キタ―――――!!』である。


 この世界の原作である『夜明けのレガリア』は内容的にはほぼ少年漫画だったけど、一応出身は少女漫画畑だ。だから主人公のミアベルは可愛らしい女の子だし、彼女と青春模様を繰り広げる複数のヒーローも当然存在するのだ。

 現状既に学院中の女子からの噂と羨望の対象となっているレオンヒルト様・カーマイン様両殿下も、原作通りならばゆくゆくはミアベルに惚れてしまうはずである。もともとライバル関係にあった彼らが、今度はミアベルという一人の少女を賭けて衝突するという胸キュン展開が待っているのだ!


 それでもって、今まさに話題に上がったミアベルの幼馴染くんも、彼女を取り巻く素敵な男の子のうちの一人だ。

 彼は結局ミアベルとは幼馴染以上の関係にはなれない、言い方は悪いが噛ませ犬的ポジションなのだけど、正直私はやんごとなき方々よりも幼馴染くんのほうが断然好きだった。

 俗な言い方をするならば前世での『推し』なのである。

 原作通りに彼がミアベルとの恋に破れるならば、もしかしてもしかして私にもチャンスあったりしたりするんじゃないかなー、なんて邪な期待も少しあるわけで。



「幼馴染?」


「それって男の子?」



 テンションぶち上げの内心は置いておいて、表面上は知らない振りをして問い掛ける。

 ノエルも興味津々の様子だ。



「うん。ロイって言うんだ。ちっちゃい頃よく一緒に遊んでたんだけど、ロイが王都の学校に通うんだ~って言って会えなくなって、それっきり」


「へえ。王都の学校ってことは、もしかして貴族?」


「そうなの!この前昼休みにばったり会ってさ、なんで居るの!?って二人して驚いちゃった!で、訊いてみたらロイって実は男爵家のお坊ちゃんだったんだって!」



 改めて聞いてみると凄まじい運命力である。流石は主人公。

 余談だが王都の学校って勿論このエンディミオン魔法学院だけではないから、その幼馴染くんが通っていたのはたぶん普通の教育機関としての学校。前世で言うところのジュニアハイ――中学校相当の場所だと思う。平民に門戸を開いている学校も昨今では少なくないから、学校に通っている=貴族とは必ずしもなり得ないのが実際のところだけど。



「ロイの本名って、レックス・モラン・コーリッジって言うんだけど、ティア知ってる?」


「ええ勿論。コーリッジ男爵家と言えば優秀な騎士を多数輩出している家系ね。レックス様は長男だし、男爵位という括りで見れば有力な家だから、わりと優良物件だと思うわよ」


「おお、流石ティア。詳しいね!」



 言うまでもなく、ここまで詳しい理由はレックスが原作キャラだからなのだけど。


 ミアベルの実家がコーリッジ男爵領にあるので、つまりレックスは領主の息子だ。彼は幼いミアベルに初対面で一目惚れした純情少年であり、領主の息子であると知られれば敬遠されてしまうと思って愛称しか名乗らなかったという経緯がある。

 長男として家を継ぐ責任があるので平民であるミアベルと結ばれる未来を諦め、己の恋心に蓋をして王都に進学、そしてそのまま王都のエンディミオン魔法学院へと進み、初恋の相手であるミアベルと運命的な再会をする、という胸キュンポイント百点!って感じのストーリーなのだ。


 レックスは精悍な顔つきをした長身の男子で、騎士の家系らしく鍛え上げられた屈強な体格をしている。

 性格は真面目で実直。正義感が強く、卑怯な真似を嫌う。ミアベルのことを一途に想い続けながらも、愛を押し付けることを厭い最後には潔く身を引いた、好青年中の好青年だ。


 幼い頃に知り合って幼馴染と呼べるほどに親密に過ごし、十歳そこそこで離別して、お互いが十五歳になって再会するって、ドラマチックにもほどがあるでしょうよ。だって、別れた時にはお互いに子供だったのに、数年ぶりに再会した時にはミアベルは女性らしく美しく、レックスは男性らしく精悍に、かつての面影を残しつつ異性として意識せざるを得ない風貌に育ってるんだよ?

 原作でレックスが成長したミアベルに一撃でノックアウトされたのも無理からぬ話だと思うし、むしろそのシチュエーションでレックスに惚れないミアベルの精神どうなってんのと。

 とまあ前世の私はそんな風に思っていたわけなんだけど、今となって思えばたぶんレックスは良い人過ぎて、良い人で終わっちゃう典型的な例だったんだなと。


 大丈夫!例えミアベルに選ばれなくても私が居るよ!伯爵家だよ!お買い得だよ!

 などと妄想の翼をはばたかせる私を置いて、ノエルとミアベルが会話している。



「幼馴染ってことは、仲良いんだ?」


「うーん、どうだろ。昔は確かに仲良しだったけど、今は数年ぶりに会っただけだしなぁ」


「でもほら、数年ぶりでもお互いにわかったんでしょ?」


「それはまあ、ロイがあまりにも変わってなかったから」


「昔の面影があった、ってこと?」


「ううん。それもあるけど、どっちかってーと、性格的な?」



 ん?と少し疑問に思う。

 レックスって、そんなに印象的な性格していただろうか。

 好青年だけど、控えめで、我が強いタイプではなかったはずだが。



「あの、ミアベル?」


「なに?」


「レックス様って、どんなかたなの?」



 思わず訊いてみると、ミアベルは「んー」と可愛らしく思案して、すぐにパッと笑った。








「変態!」








 ――――ハッ!


 いけない一瞬気絶してた。

 いやいや待て待てお願いちょっと待って。

 ミアベル貴女は一体誰の話をしてるの?


 ノエルもきょとんと瞳を丸くしている。



「へん、たい?」


「うん!いっつも変なこと言ってたんだよね。この前再会したときだって『俺は外見年齢12歳以下の令嬢にしか興味はない(キリッ)』とか言ってたから一瞬でロイだってわかったもん」



 私は脱力した。


 おいぃ、ソレ絶対中身は転生者だろ。

 てかその特定の一キャラクターを狙い撃ちしたかのような性癖暴露すんの頼むからやめて。

 絶対くっそ面倒くさいことにしかならないから。


 ただでさえプリムローズの中身転生者疑惑が拭えなくてストレスなのに!


 いやもうむしろ、その偽レックスがプリムローズに突撃してくれればいいんだ。どっちに転んでも変態は爆散する気がするけど、少なくともプリムローズの反応は見れるわけだし。


 ああ、さよなら私の初恋……。

 原作レックス、今なら貴方の気持ちが少しわかるよ。

 初恋って実らないものなんだね。



「あらら……それじゃあミアベルは守備範囲外なんだね」


「ねー。再会した時、『なんで育ってしまったんだ。昔はあんなに可愛かったのに』とか言ってさ。思わずグーで殴っちゃった!」



 うわあああ、やめてぇ。

 私の中のレックスの思い出をぶち壊さないでぇ。



「ミアベルに惚れてる男の子たちが聞いたら怒りそうな台詞だね」


「そんな人たちが居ればね~」



 居るよ!結構居るから!

 たぶん無駄だと思うよノエル。ミアベルの鈍さは筋金入りだと思う。

 何故ならそれも主人公たる所以だから。



「ミアベルは気になる人は居ないの?」


「え、わたし?」


「うん。この学院って色んな人が居るじゃない。ほら、王子様とか」



 おお、ノエルってばぐいぐい行くね。私もそれは結構気になるんだけど、下手にクールな令嬢って言うキャラ付いちゃったせいで、あんまりそういう話題振れないんだよね。逆に訊かれたら困るし。

 そうだなぁ、と真面目に思い返しているミアベルを見守っていると、



「あ!気になる人、居る!」


「え!ほんとに!?」



 おや。誰だろう。

 まだ王子とかとは知り合ってもないはずだけども。



「最近ね、たまに会えるメイドさんが居るんだ」


「はい?」


「銀髪でね、すっごい美人なの。いつも優しくしてくれて、会えるとちょっとドキドキしちゃうんだぁ」





 ……銀髪で美人のメイド、ねえ?


 嫌な予感する!すっごい嫌な予感するけど!



「ちなみに、誰のメイド……?」


「えっと、なんか、侯爵家で働いてるって言ってた!」



 どう考えてもプリムローズのメイドです本当にありがとうございました。


 どういうことなの!?


 私の知ってる原作はどこに行っちゃったの!?


 ていうかそもそもあのメイドどこから出てきたのよぉ!!






 もしかして……メイドが転生者の可能性もある?




2021/5 最後の行を変更。本来原作にまったく登場しなかったクラリスが転生者である可能性に言及しないのは不自然なので。

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― 新着の感想 ―
[一言] 故郷の領主家長男(幼馴染)の人物評に「変態」を選ぶあたりに、再会出会い頭の暴言に対する怒りが見える。 「ちょっと変わってる」じゃダメだったんな。 あの言い方だとヤベー奴にしか聞こえない。 …
[気になる点] 前話でミアベルが「一般ピーポー」と言っていたから彼女も転生者だと思っていたが、そうではなくこの世界に英語が存在するのか? それとも今回の話ではうまく隠してるのか。 幼馴染の方のロリコ…
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