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カイロ
あれから約5年。もうりなちゃんとは会ってない。藤島とも会うことのないまま一人暮らしのため引っ越しした。
ああ、りなちゃんと出会わなければ。そんなことを思い職場に積まれた大量の資料に目をやる。まったくやる気が起きない。
「先輩。」
後ろから声がした。振り返ると後輩の女の子がいた。最近気になっているひとつ下の女性だ。
「元気ないですよ?大丈夫ですか?」
「あ、ああ。」
急に気になる女性から声を掛けられて何も答えられなかった。
「あ、最近冷えてきましたもんね。」
「そ、そうだね。」
「はい!」
女性が何か手渡してきた。
それは真っ白い袋。カイロだった。
「え?」
「あげますね。」
そう言って女性は自分の持ち場に戻っていた。
おれの心臓の鼓動が止まらない。このどきどきは五年ぶりだ。