卒業
それからおれは約5年間、学校からの帰り道の8割方はりなちゃんとエントランスで鉢合わせしていた。つまり、中学卒業までおれは彼女に恋をし続けた。そして、それは5年間告白も何もできずに終わったことを意味する。
中学校の卒業式の日。そのころおれはもうりなちゃんに告白することも諦めていた。なぜなら中学になればりなちゃんはますますモテていておれはますます引っ込み思案になったからだ。小学生の頃のようにちょっかいをかけにいくような感じではなくなっているし、りなちゃんはどうもスポーツのできるやつが好きなようで野球部やサッカー部とばかり話をしている印象だった。当のおれは一応バスケ部に所属していたが足手まといの珠拾いだった。
卒業式が終わり、特に誰とも思い出を話すこともなく、式が終わればすぐに家に帰った。
家についても他のみんなはまだ最後の思い出をつくりにゲーセンに行ってプリクラでも撮りにいってるんだろうと想像がつくと吐き気がした。
嫌気がさしたおれはなんとなく家を出た。結局家を出て、卒業プレゼントでおばあちゃんに買ってもらった携帯音楽プレーヤーを耳にし、しばらく好きな音楽を聴きながら散歩した。
夕日が沈む頃、好きなアーティストの好きなアルバムを3周ほどしてようやく家に帰ってきた。
さっさと今日が終わればいいのに。そんな気持ちだったが、エントランスにはいつもと違う光景があった。
藤島が1人で立っていたのだ。