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ハヤブサトテガミ  作者: とべる
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選択

人生間違ってばかりだ。

これまで謝った選択ばかりしてきた。

10歳のとき、初恋をした。それから5年間告白もできないままずっと片想いをしていた。

16歳、バンドを組んだ。今まで味わったことのない快感。代わりに10年間やっていた空手に嫌気がさしやめた。

21歳、大学で適当にサークルに入って学生生活を謳歌。いわゆる大学デビュー。

23歳、地域の金融機関に就職。

25歳、結婚。

26歳、不倫。

人生最後にならなきゃここまでの選択がどうだったかはわからない。ただ、現時点では全ての選択を誤ってきたのではないかと思えてくる。

今おれは職場で事務仕事をひたすらこなすだけの毎日。何の面白味もない。奥さんに対しての愛情も日に日に薄れつつある。職場で可愛い後輩に心を奪われていたりもする。べつにだからといってその子と不倫する気もないし、向こうはおれより断然レベルの高い女の子。

おれは一度不倫している。よくわからないところで紹介された女の子だ。一度してからは怖くてもうしてない。ましてや同じ職場じゃできるわけない。

家族を愛す気にもなれないし、職場恋愛もとてもじゃないしできない。人間どうして誰かを愛せなきゃ生きようという活気が起きないのだろう。そんなことを思う。

こんな風に愛しかたがわからなくなったのは間違いなく初恋をこじらせたせいだ。

彼女の名前は何といったかな。ああ、りなちゃんか。

「はぁ。」

今日もため息をつきながら家に帰る。職場の後輩に恋している自分に対しての哀れみと奥さんを大事にできない愚かさを痛感する。

「ただいま。」

家に帰ると奥さんは何の疑いもなく笑顔でおかえりと言う。

今日おれの頭の中で思っていたこと、それがばれたらこの幸せは一瞬で消え去るのか。考えると怖い。

「お風呂わいてるから入ってきな。」

「うん。」

風呂に入るため自分の部屋からパジャマを取り出す。その時タンスの隣に立て掛けてあるギターに目がいく。

アコースティックギター、オービルギブソンダブ。おれは心の中でそのギターのことを「Jくん」と呼んでおる。彼は高校生のときから今までずっとおれのことを見てきた。自分の部屋にずっといるから、悩んでいるとき、気分のよいとき、人には言えない秘密を抱えているとき、全部知ってる。今日も彼が何かおれに問いかけている気がする。

これからどうするんだ。それでいいのか。

おれにもわからない。風呂に入る前に一度ベッドに横たわる。

天井を見上げる。思い出すなぁ。こうやって仰向けになってりなちゃんに乗っかられてたんだ。10歳のとき彼女は人気者で男子からたくさんちょっかいをかけられていた。おれもその一人。彼女はそんな男子たちに馬乗りになって怒っていた。男たちはそうやって気を惹いていた。

あの時、あの子に恋をしなければ。


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