第9話 わたしをころして
あれから、どれだけの時間が経過しただろう。
「イヨッ!!」
ケイシーの放った矢が集団の胴体を貫き、放たれた氷の刃が彼らの胴体を切り裂く。
矢と魔法の線が交錯する空間の中、しかし魔物の集団はまるでゾンビの如く、足を折られても腕を千切られても彼らに襲い掛かるのだ。
「うわ゛、うわああアアア!!」
そんな状況にアキが付いていける筈もなく、襲ってくる魔物に向かって刀を振り翳すが容易く躱され挙句追い込まれる。
「――っ、『アイス・ロック!』」
しかし、横殴りにするよう、その魔物の胴体に氷礫が衝突し、その間にアキは逃げ出す。……ケイシーの魔法だ。お礼を言いたかったが、そんな暇すらなかった。
ふと、視界が暗くなる。それは、今にも踏み潰さんとばかりに上げられた豚の足によるものだ。
「…………ッ!」
足を怪我しているので岩上から動きたくないケイシーがどうしようかと悩んでいると、どこからともなく黒刃の礫が飛来し、豚の足を直撃。痛みに喚きながら、別所に足が下ろされた。
「ユリセアちゃん、魔法……」
「…………っ、ハァッ――……はぁ、っ――た……単純な……の、は…………」
……魔法を使うのには、その種類にもよるがかなり頭も使うらしい。
先程の『アイス・ロック』のように、簡単な物ならば魔法陣を丸覚えするだけでも出来るが、普通は状況に応じて計算する。当然、難しい魔法であればあるほど複雑になっていき、魔法の発動速度にも大きく影響する。
つまり、ユリセアはかなり意識が朦朧としていたのにも関わらず、魔法を使ってのけた事にケイシーは驚いたのだ。まともな思考すら出来ない状態で、計算を一瞬で遂げる……これは余程すごい魔導師でもないと出来ない。
「うぇ……っ、体力、が……ゼエッ……もた、な、い……」
とはいえ、ユリセアはほとんど満身創痍。彼女は戦えるような身体能力も体力も一切持ち合わせておらず、魔法が使えなければただの雑魚。まともに戦闘など出来やしない。
(……あれ)
ふとケイシーの頭の片隅に、疑問符が浮かぶ。
彼女もあの怪我で魔紅力に浸かっているというのに、大丈夫なのだろうか。魔紅力の影響を感じさせる症状すら出ていない。耐性が強いと言っていたが、そこまで……。
「やば……ッ」
だが、疑問に思考を使う時間はない。
手を翳して風の付与魔法を矢に掛ける。矢を放つと、魔物に突き刺さった瞬間そこから風の刃が生成されて、魔物の腐れ足を切り取る。
――自分の魔物の相手で精一杯の二人に代わって、私が他の敵を食い止めないといけない。
私があの時怪我をしたから、あそこでゆっくりしたから、楽しくて浮かれていたからこんな事になった。だから、だからアレンがこんな事になった。
みんなを助けなきゃ。自分の責任だから、私がみんなを助けなきゃ。誰一人欠けさせないでここを出なきゃ。
責任の重圧が彼女の動力源となり、風をまとった矢が着々と魔物を射ってゆく。彼女の魔力を犠牲に、魔物の侵攻は比べてかなり低下した……が、ふいに魔物の濁流の中から飛び出して、こちらへ斬りかかって来る何かが見えた。
「……っ、また! アレン……ッ」
手を前に伸ばす。出来るだけ怪我をさせずに動きを止める為、彼の足と地面を氷で固定させようとするが、容易く避けられ、距離が一気に縮まった。
一瞬の困惑。弓に手を掛けるが間に合わない。
迫る。避けられない。
「――ッッ!!」
足場を蹴り、後方に飛びながら矢を放つ。矢がアレンの腕を穿ち、同時に彼の大剣がケイシーのいた足場を崩した。
「ひ゛ッ……ぁ」
紅液に着水した傷口から魔紅力が流れ込み、バチバチと血管が浮き出る。後ろによろめき、しかし倒れてしまわないように、浮かんだ涙が零れてしまう前にもう一発矢を放ち……アレンの肩を貫いた。
体を操られていても、アレンの意思はある。きっと痛くて、辛いに決まっている……。
状況がどうであれ、私にアレンは殺せない。殺さない。……殺させない。ユリセアが、彼を殺そうとする彼女が手を出せない状況になって良かった……等と考えてしまい、自らの醜さに嫌気が差した。
肩を穿たれた衝撃も、痛みも、アレンの行動には一切の支障をもたらさない。
無慈悲に構えられた大剣。ケイシーは後方に避けようとするも、あまりの痛みで力が入らない。
刃が迫る。弓を地面に突き立て、ソレを支柱に体を後ろに投げ出す。
刃が迫る。先程ケイシーのいた場所を刃が掠め、空を切る。急所は逃れた――が、それだけだ。
刃が迫る。
「ケイシー!!」
くるくるくる、と宙をナニカが舞う。
空中に投げ出されたままの体で、呆然と見つめる。アキの叫び声、固定されたアレンの瞳。
ドサリ――と、自らの体が地面に落ちるのを感じて、理解する。
「――いぎ、ッッぁぁア゛ア゛ああアアア゛ア゛ア゛ア!!」
膝から下が無くなった両脚。断面から大量の魔紅力が流れ込んで全身を駆け巡り、膨れ上がった血管がはち切れんばかりの模様を模して浮き上がる。痛くて、痛くて、もう何も考えられない。ただ痛みを和らげようと、喚き、叫び、地面を転げ回る。
そんなケイシーを、底無しの空洞のようなアレンの視線が貫く。豚の嗤い声が響くと同時に、トドメの一撃を加えようと大剣を上に掲げる……
「――ヤ゛メロォぁあああアア゛!!」
が、それはアキの追突によって遮られた。
アキの接近など気にも留めていなかった為、彼は突進された勢いで地面に倒れ、起き上がろうとするも上から刀で抑え込まれる。
「……ッ! クソ、もうやめろって! アレンさん、どうし、たら……っ」
【グヒィイぃぃィ゛ィ゛ィ゛――――】
先程までの上機嫌な様子とは打って変わって、あからさまに不機嫌な声を出す豚。複数の足をまるで地団駄を踏むかの如く地面に打ち付け、その度に地面から衝撃が加わる。
「……ぁい……つ」
ユリセアが呟く。
散漫とした思考も意識も少しだけ戻ってきた。全身の痛みに歯を食いしばりながら、体を引きずって自らを安全圏へと移動させる。
この豚はかなり頭が悪い。踏み潰した足の裏には魔物達の残骸と血――自らの操る魔物を踏み潰している事に気が付いていない。
【ブぎぃぃィイイイぃい!!】
その時だ。豚の足の一本が、独善的な怒りを乗せてアキ達の元へと下り――
ぐるリ。世界が半回転する。
アキにはそう思えたが、正確には豚の胴体が半回転した。
ユリセアの魔法だ。豚の影から黒い手が伸び出し、足に絡み付き引っ張ったのだ。大幅にバランスを崩した豚は足と逆方向へ倒れ――その瞬間だけ、残った魔物達と触手の運動の全てが止んだ。
「――ッ?!」
アキは、突然腕を掴まれた感触に驚き、詰まった声を漏らす。……その正体はアレンだった。
アキは理由を悟る。魔物が動けない意味、豚の支配から逃れた一瞬だ。
ガクガク震える手と眼球に、覚束無い言葉。アレンはそれらを一つ一つ、まるでまばらなパズルを組み立てるかの如く、途切れ途切れに言い綴った。
「……いま、し……か、ない、から……オ、おれ、……を、こ、ころし……て……」
「ぁ……あ、アレン……さ」
アレンは、手に持った大剣をゆっくりと離して、アキの刀を彼の方へ押しやる。
「お前は……ニゲ、て……生きのび…………。あぁ――ケ、ケイシー…に、――あ、…………あや……」
【ぎ……ぶィぃぃィィ…………】
豚が、喉の奥を震わせて身体を擡げる。
殺せ――確かにそう言った。
刀を持つ手が震える。目が合う。急かされる。
殺せ? 分かってる。状況を考えてみろ、今しかチャンスはない。
ふと、アレンとの会話の数々が脳裏を巡る。涙が溢れる。無理だ、そんなの…………
豚が体を起こした。
呼吸が荒れる、思考が荒れる。
殺さないと、自分が、殺される。時間はない。けど、殺すってなんだ。心臓を貫く事、目の前の相手を、刀で突き刺して、肉を貫いて……。
「……――ぅ、ぁ…………」
アレンの体が不自然に蠢いた。
躊躇ってる時間はない。やるしかないんだ……自分は、やるしか――――
――ズっ、ドン!!
「――――は」
決意を固めようとしたその手前。
アキの仕業ではない。呆然と目の前――いや、アレンがいた場所よりも遥か天井付近を見つめる。
アレンを突き刺し、遥か遥か高くに打ち上げた真っ黒な一本の杭。杭を伝って血が流れ、飛散したソレがアキの額に飛び散る。ユリセアの魔法だ。
杭は、すぐにボロボロに崩れていくよう消え去り、残されたアレンの死体だけが落ちてゆく。
【ぐっピーーーー!!】
突然、歓喜に満ちた子供のような声を豚が発する。
今までのイライラなど忘れてしまったかのように、子供が自分の好きな玩具にがっつくかのような勢いで落下するアレンを掴み取ると、ゆっくり、食べ始めた。
「……っ!!」
その隙にユリセアが魔法を使い、先程の黒い影の手で豚を地面に固定する。豚はアレンに夢中で気が付かない。
仮に、もし豚が気が付いたとしても、これではしばらくの間動けないだろう。
「おい……っ、ハアッ……記憶、喪失。逃げる……っ、なら、今しかない」
頭の眩みを抑え、途切れ途切れにアキに言う。繊維の運動が止んだ為、閉ざされていた出口が口を開いていた。
ケイシーの怪我では逃げたところですぐに死ぬ。彼女を置いて、せめて二人で逃げようと言うのだ。
「ぅ…………あ」
豚が口内で骨を砕く音が反響する。今まで見知っていた人が、アレンが食べられている音だ。
怖い。怖くて足が動かない。動きたいのに動けない。膝が地面に落ちて腰が抜け、体中の汗腺から汗が吹き出して、見開かれた瞳が小刻みに震える。
「――っ、あ…………、まっ、て……ァ……キ」
アキのズボンの裾を軽く引っ張った存在、その正体を理解して、瞳だけをそちらへ向ける。
萎びた猫耳とくしゃくしゃな顔は、元の快活さを微塵にも感じさせない。魔紅力が体内をまわって下半身は真っ紅に染まりきり、震える手の平と同じく声も不安定で弱々しかった。
「ぅ……ぉあ、わた……――ぁ、わた、ㇱ……ぃたい、わたし……この、まま……じぁ――」
「け、ケイシー…………」
「だか……だから……そ、まぇに、わた……を…………」
もはや痛みでまともに言葉を発する事すら出来なかった。
このままじゃ、私もアレンみたいになってしまう。意識を持ったまま、あの天井に吊るされて、痛みも感情もそのままで操り人形にされてしまう。
私はどの道逃げられない。この状態では逃げても死ぬ。
だったら、だったら私は、あの豚に殺されるくらいなら、生きて意思を持ったまま操られていてしまうくらいなら、私は、私を――
「ワ、わた……ワタㇱ……を、……わたし、を…………っ……わたしを、ころ、して…………っ」
「――――は」
とても情けない声が口からこぼれる。
言われてしまったと思った。話し掛けられた時から、言われてしまう気がした。
「な……っ、何……ぃぃ言ってんだよ。……いや、だ……っ、嫌だッ! ケイシーも、ケイシーも一緒に…………」
「だめ、にげ……れない。にげ……て、も……しんじゃ…………。ァレ……んの、しを――……むだに、したくない。はや、く、わた……を……ころ、て――……に、にげ、て……っ……」
その言葉に胸が締め付けられて、感情となり、全身を駆け巡った。
嫌だ、嫌だ、ケイシーはまだ生きているじゃないか。アレンとは違う、自分を守る為じゃない。まだ生きているのに殺せというのか。
武器を持つ手が震え、刀がカタカタと鳴る。
ケイシーの心臓部分あたりを見る。武器を見る。ここに、刺せというのか。
「ぃ……ぃぁ、あ…………」
声が漏れる。
本当にどうしようもないのか。分かっているが、分かりたくない。あんなに元気だったのに、少し前まで笑い合って、みんなで飲みに行こうって約束したのに。
「…………いぁ……だ……」
なんだこれ、何だこれ。
全身を駆け巡る思い出の数々。とても短い時間だったが、それでも大切な思い出だ。
それが、こんなにも簡単に崩れてしまった。そして今度は自分が、彼女を、彼女の全てを無にしてしまうのだ。自分が、あの思い出を壊すのだ。
「はゃ……く…………」
ケイシーが急かす。
自身に巻き付く手の存在に気付いた豚は、巻き付く手を解こうと動き出すが、解けない。しかし、ユリセアはその様子に危機感を感じ取り、アキを見限り逃げてしまった。
「……ぁぁ」
刀をギュッと握り締める。
ガクガクと震える手を握り締める。殺したくない、時間が無い、殺したくない、殺したくない。
殺すのは怖い。人を突き刺すのが怖い。ケイシーだって怖いハズだ、殺したくない。
「……ぉね、が……ぃ…………」
「…………ぁぁあ」
涙が溢れる。濁流の如く、顔面を酷くぐしゃぐしゃに濡らす。
これは、彼女の望んでいる事なんだ。
そう、これは彼女の為に、彼女の為に、彼女の為に彼女の為に彼女の為に彼女の為に彼女の為に彼女の為に。
彼女を、救う為に。
刀を少しだけ上げる。
嫌だ、怖い、刀をより握り締める。
ぽつり、と。
「……ぁり、がとう…………」
ふと、ケイシーの顔が、優しく綻んだ。あの元気な笑顔とは違う、穏やかな笑み。
それは、アキが殺そうと決意したと思ったのか、殺される幻覚を見たのか、わからない。もう、わからなかい。
真っ白だ。アキの頭はまっしろだ。
殺す、ころす? 刺すんだ、彼女を。
刀を動かすだけ、やり方が、わからない。殺す? わからない。もう、なにもかも、なにもかも、
なにもかも、なにもかも、なにもかもなにもかもなにもかもなにもかも――
「ぁぁああぁあアアァあああアアアアアア!!」
ケイシーの言葉が切欠となった。
叫ぶ。叫んで自分を誤魔化し、騙し、感覚を、感情を麻痺させて――刀を振り下げた。
――グぷ、り
心臓を貫く。
苦しそうな表情をして、血を吐く。
まどろみ、
すっ――と、
死ぬ。
「…………」
人を、殺した。彼女を、殺した。
確かに、この手で殺した。
「ひ…………」
突き刺した瞬間の感触。肉に刺し込む感触。
感覚が手にまとわりついて、離れない。
最期、苦しそうだった。
本当に、これで――
【ぎぶぃぃッ!】
未だに手から逃れようと藻掻いていた豚が声を発し、アキはハッとする。
人を殺した。人を殺した。
逃げなきゃ――そう思うのに、立ち上がれない。力が入らない。
【――ッぶウぅ!!】
自由の身となった豚は、もう憤慨している様子はなく、真っ先に目に止まったケイシーを繊維でつまみ上げる。
アキは、ただただその様を見ている事しか出来なかった。
今日で三度目の光景。ケイシーの胸に刺さった刀を放り投げると、慣れた手つきで彼女を喰らう。
「ゥ……ヴぉえッ……」
吐いた。
彼女を刺した感覚が離れなくて、余計に吐いた。
彼らとの、楽しかった時を思い出して、吐いた。
ほんの数分前とは変わり果てた姿。
気持ち悪い、気持ち悪い。
早く逃げなきゃ、自分もこうなる。早く、嫌だ、怖い怖い怖い
なのに、動けない。
「……う……ぅひ……ぁ」
気色の悪い苦笑い。
どうしてこんな事になってしまったんだ。こんなにも簡単に、無くなってしまうものなのか。
「ひひㇶぁ、……ぁ、ぁぅああァ……」
みんな、みんな死んだ。
少し前まで笑顔だった、話していた、楽しかったのに、死んでしまった。
瞳からぼろぼろと涙が流れる。既に絶望で折れてしまった膝は、もう立ち上がれない。
【ぶギッ……げ】
豚がケイシーを喰らいながら座り込むアキに焦点を向け、ゆっくりと繊維の触手を伸ばした。
アキは、ふとこの感情に既視感を覚えた。
それは――そうだ。この世界に来たばかり、最初の時とよく似ている。
あの時の自分と、今の自分が混同する。
ここってドコだっけ。日本? 異世界? まあいいや。ああ、帰らなきゃ、カエラナキャ……そうだ、ここは公園。あの夕焼けに飛び込んで、帰らなきゃいけない。
「ㇷ……ㇷ゚ひㇸぁ……?」
――違う。
もう、かえれないんだった。
「ㇶ……ヒヘはははっ、ひへへへっ! うはっ、はははははへひへひ!!」
何だか突然、とってもおかしくなって笑った。
なんとまぁ、惨めなこった。思考も狂った、人生を狂わせた、みんなを、自分が、もうおかしくって、オモシロくって!!
もう死ぬ、絶対に死ぬ。すぐそこの死が、確実な未来が、もうよくわからなくて、わっかんなくて、どうでもよくて、怖いのがわからなくて。
「いっ……いへへ、へへヘへっ!! エヘッ!! えへっ!!…………へ……」
笑う、嗤う。酷く怯えた笑い声を上げ、からっぽの瞳を豚に向ける。
触手が迫る。視界の端で追う。
「…………」
ふっ、と。嗤い声が止む。
死ぬ。本当に死ぬ。
触手が迫る。先端に付いた鉤爪がギラりと輝くが、どうしようもない。
死ぬとどうなるんだろう。確実に、すぐそこの死に対面したら、自分はどうなってしまうのだろう。
「……ぅ……、ぅあ……ああ」
スト――――ン。ナニカが胸に落ちた。
触手の鉤爪を見る――怖い。
怖い。こわいこわい。
怖いこわいコワいこわイ怖いコわイこわイコワイこワイコわいコワイ怖イこわイ
みんなの死を踏みにじって、自分も死ぬんだ。
死にたくない。死にたくない。帰りたい。ごめんなさい、お母さん、お父さん、助けて、助けて、会いたいよ、俺は、俺は――――
「……うぃ……ぁうあ……ぁああ」
耐え切れない程の感情の濁流。
溢れ出しても足りなくて、泣いても、吐いても、狂ってオカシクなっても足りなくて。
もはや人間一人が処理するのには不可能なソレは、彼の体を今にも破裂させようとパンパンに犇めくソレは――
【ブひベッ!】
お腹いっぱいだったのか、はたまた口に合わなかったのか。食べ掛けのケイシーを豚が投げ捨てたのと同時に、
「ギャぁぁアアああぁアァあ゛あ゛アアあア嗚呼嗚呼あああア゛ア゛ああァ゛あ゛ア゛嗚呼!!!!」
紅色に乗せて破裂した。