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第95話 エルフの里 本屋

 リィーシャは大会運営側と協議して会場の後始末をするために残るようだ。

 シェーナ達は東エリアに移動すると、里のエルフや冒険者が(こぞ)って温泉施設へ入って行く姿があった。


「温泉か。シャルティユの温泉も悪くないけど、ここの温泉はどうだろう」


 シェーナは温泉の効能が書かれている立札を見ると、骨折、火傷、関節痛、疲労回復と冒険者には嬉しい効能が揃っている。


「皆が揃ったら、温泉に浸かりに行かないか?」

「いいですね! 汗も掻いているので、さっぱりしたいです」


 ルトルスは提案を持ち掛けて、ペトラは賛成に回ると、シェーナは二人を見渡して恥ずかしがって口を(つぐ)む。

 二人はシェーナの心中を察する。


「私は別に気にしませんよ? むしろ見せろと言われても文句は言えない立場ですので……」


 ペトラの寛容な気持ちは嬉しいが、そんな理不尽な事は言わないからとシェーナは釘を刺す。


「そんな小さな事を気にしても仕方あるまい。キシャナもシャルティユでは普通に入っているし、シェーナも堂々としていればいい」


 それができれば苦労はしない。

 シェーナは誰もいない時間帯を見計らって、シャルティユの温泉に通っていた。

 たまに冒険者の団体が温泉に押し掛けてきた事もあったが、注意を払って温泉場から離れることがしばしばあった。


「……分かったよ。皆揃ったら温泉に浸かって、その後は食事にしよう」


 シェーナは降参すると、二人の気持ちを汲んで賛成に回った。

 温泉施設の他に、サリーニャが雇っているエルフとダークエルフが出店している本屋があった。さすがにサリーニャが管理している地下施設の漫画と比べて数は劣るが、主力の漫画の他に魔法書や地図も取り扱っている。


「この前、シェーナと一緒に読んだ漫画の続巻はあるかな?」

「あれはサリーニャの地下施設で見つけた漫画だから、取り扱っているかな」


 シェーナは店員のエルフに確認を取ると、どうやら取り扱っていないらしい。

 やはり地下施設にあるだけのようだ。


「仕方がない。今度サリーニャのところに行って続巻を買おう」

「残念だが、そうしよう。少し店内を見て回ってもいいか?」

「そうだね。ペトラも欲しい漫画があったら買ってあげるよ」

「あ……ありがとうございます!」


 ペトラはお礼を言うと、三人はそれぞれ欲しい漫画を探しに散開する。

 シェーナはファンタジー漫画が置いてあるジャンルの棚に足を運ぶと、試し読みができるオススメ漫画を見つけた。幾つか読んでみると、どれも面白い内容だったので読んだ分の漫画は一巻ずつ購入することにした。

 会計の列で二人と合流すると、シェーナが二人の選んだ漫画もまとめて支払うことにする。

 会計の列に並ぼうとした時に、グラナが何冊か本を持って現れた。


「あっ……」

「グラナか。ルトルスやペトラの分も一緒に会計を済ませるから、グラナの分も俺が買ってあげるよ」

「いや……この魔法書は高いからさ。シェーナに負担は掛けられないよ」


 グラナは言葉を濁らせながら、魔法書は自分の金で払うと主張する。

 回復魔法や補助魔法を完璧に使いこなすグラナに、シェーナはグラナの魔法に対する姿勢を称賛する。


「偉い! その飽くなき探究心は俺も見習いたいよ。普段からグラナの魔法には世話になっているし、遠慮しなくていいよ」

「本当に大丈夫だから……その気持ちだけ貰っておくよ」


 シェーナはグラナの魔法書に手を触れようとすると、グラナは慌てて拒否を示す。

 何か様子が変だなと思ったシェーナだが、ルトルスはお構いなくグラナの魔法書を取り上げた。


「『回復魔法の真理』、『女騎士達の禁断の愛』、『古代魔法と近代魔法の方程式』か。私もお前の探求心を見習いたいな」


 ルトルスはグラナが持っていた魔法書の題名を読み上げると、一冊だけ明らかに異質な物が混じっていた。

 グラナは魔法書二冊の間に、同人誌を混ぜて誤魔化そうとしていたようだ。

 これはとても気まずい。


「……やっぱり、魔法は今のままで十分かなぁ。魔法書は元の棚に戻しておくよ」


 かつて魔王と呼ばれた男は、寂しげな背中で魔法書と同人誌を元の棚に戻していった。

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