第91話 エルフの里
百年前までエルフ以外の者は立ち入りが禁止されていたが、エルフの長が代変わりしてから
森は他種族を受け入れるために解放された。
解放された主な理由は、簡潔に述べると時代の変化である。
人間の数も昔に比べて人口は増えて、ここ数百年間で戦争の規模も大きくなった。
エルフ達は種を守るために、人間や他種族の文明を取り入れて繁栄させようと舵を切ったのだ。
森を抜けると、若いエルフ達の賑やかな声が出迎えてくれた。
「ようこそ、エルフの里へ!」
若いエルフ達が里の入口で地図のような物を手渡してくれた。
よく見ると、里のガイドブックのようだ。
想像していたのと違って、静かな場所だと思っていたが、遊園地のような賑わいでシェーナは驚いてしまった。
「驚いたかい? 私が若かった頃はこぢんまりした里だったけど、最近は森を解放してお祭り騒ぎさ」
「ええ、賑やかで楽しそうですね。訪れてよかったです」
リィーシャは里全体を見渡しながら、シェーナに語りかける。
現在、里の人口比はエルフやダークエルフが九割、人間や他種族の者は一割になっているらしい。
時代の流れなのか、最近はエルフと人間が結婚して、ハーフエルフの誕生が話題になった。
エルフは数百年前まで他種族と交流を拒んでいたので、ハーフエルフは今後エルフの未来を担う存在になっていくのかもしれない。
「私は長に挨拶してくるから、君達は里をゆっくり見物でもして楽しんでくれ」
リィーシャはシェーナ達と別れて、里の奥へと消えていった。
シェーナはガイドブックを広げると、里に点在する施設を確認する。
里は大きく分けて中央と東西南北の五エリアで構成されている。
東は主に観光エリアとして、外部から訪れた者をもてなすための娯楽施設がある。
西は里のエルフで作った農産物を提供した料理店が並んでいる。
南は森や里の治安部隊が詰めている兵舎や訓練施設がある。
北は畑や牧場が広がり、農作物を育てるための土地で形成されている。
前回ルトルスと訪れた農村でも見たことだが、エルフの里でも他種族の若者を受け入れて農業の成り手を育てているらしい。
中央は里の住人が暮らす家々で構成されている。
「どこから見て回ろうか?」
シェーナは皆に意見を求めると、バラバラな意見が返ってきた。
キシャナは北、ペトラは西、ルトルスは南、グラナは東である。
「各々みたい場所へ行こう。昼になったら、西のエリアに集まって昼食にしようか」
シェーナの意見が通ると、皆は各エリアに向かって歩き出す。
シェーナはルトルスと一緒に南を見て回ることにする。
「じゃあ、行こうか」
「……うん」
シェーナはルトルスの手を引いてあげると、南のエリアに向かって歩き出した。




