第83話 お互い②
中立国家プライデンを興していなければ、ここに集まっている者は今頃全く違う人生を歩んでいたかもしれない。
シェーナは深い溜息をついて、話を切り上げる。
「愚痴ばかり吐いてすまなかったな。今日は楽しかったよ」
「……今度の休みに私と二人でデートでもするか?」
「えっ!?」
「グラナと狩りに出かけた時に、小さな農村に立ち寄ったことがあったんだ。料理に使える食材も豊富にあったし、長閑で平和だった。この城塞都市シャルティユも活気がある街で悪くはないが、たまには静かな場所で息抜きできたらと思ってな」
デートと言われて驚いた声を上げてしまったが、人が大勢行き交う城塞都市を離れて息抜きに静かな村を訪れるのも悪くないなとシェーナは思う。
「それなら、皆で行こう! ちょっとした小旅行の気分で」
目を泳がせてルトルスの提案を修正するシェーナだが、ルトルスはどこか不満そうな顔をする。
「君は女性のデートに友人を連れ回したりするのか?」
正面扉から呆れた様子のサリーニャが現れると、シェーナに詰め寄っていく。
「丁度、新作の漫画の感想が欲しかったのよ。人妻ダークエルフと新人の従業員を借りていくわ」
「いや、急にそんな……」
サリーニャは間髪言わずにシェーナの足を踏むと、痛がるシェーナを無視して話を進めていく。
「君の所に来ている神様にも説教したいし、君も元騎士や男だったなら女性の誘いを無下にするのは感心しないわね」
シェーナを睨んで圧力をかけて畳みかけるサリーニャに、シェーナは降参してルトルスに振り向いて言葉をかける。
「ルトルス。今度の休みに二人で、その……デートに行こう!」
精一杯の勇気を振り絞って、シェーナはルトルスにデートの承諾をする。
お互いに顔を赤く染めて握手を交わすと、やれやれと言わんばかりに、サリーニャはテーブルにある練習用で握ったおにぎりを一口食べて二人の幸せな顔を眺める。
しばらくすると、グラナとペトラが散歩から戻ってきた。
「今戻ったよ。あっ……」
「只今戻りました。先輩と散歩できるなんて夢のようですよ」
グラナは何か察した用で、ペトラから距離を置く。
それに気付かず、ペトラはサリーニャに挨拶をすると顔を確認して凍り付いた。
サリーニャはペトラを正座させると、小一時間程の説教が始まった。
三日後、約束の休日にシェーナとルトルスは普段着でグラナの瞬間魔法を使って農村から程近い街道まで送ってくれた。
「ありがとう。約束の時間になったら迎えを頼むよ」
「ああ、何なら約束の時間を過ぎても構わないよ。二人の邪魔はしないつもりだ」
「おい……」
グラナは意味深な気遣いをして瞬間魔法で帰って行った。
キシャナとペトラは先にサリーニャの工房に向かって、今頃は漫画を読んでいるだろう。
二人っきりになったシェーナとルトルスは照れながら手を繋いで、村を目指して歩き始めた。
ここまで読んで下さり、ありがとうございます!
7月1日~7月3日は勝手ながら投稿をお休みさせていただきます。
次回の投稿は7月4日(木)予定です。
何卒、よろしくお願い致します!




