第82話 お互い
グラナとペトラは城塞都市の散歩に、キシャナは温泉へ入りに出かけた。
シェーナとルトルスは食堂に残って、お互いに食器の片付けをしながら今日の夕飯について感想を述べる。
「今日の料理は美味しかったよ。あの南瓜の煮付けは個人的に好きな味付けだったし、俺も今度作るときは参考にしようかな」
「今度一緒に作ってみるか?」
「ああ、是非頼むよ。今度の夕飯は俺が担当だから、ルトルスが好きな料理とか希望があれば作るよ」
「私はシェーナが作る料理なら何でもいいよ。ペトラではないが、家庭的で愛情がある料理なら大歓迎だ」
「じゃあ愛情を注いだ豚肉料理を作ろうかな。ルトルスとグラナが確保したオークの豚肉は残っているし、トンカツとかもいいな」
シェーナは明日の献立を思案しながら食器を片付け終える。
ルトルスやグラナはトンカツを食すのは初めてだろうし、キシャナには晩酌を用意してもいいだろう。ペトラは女神と言う立場から、割と異世界の文明について把握していると思うので、意外とシェーナ達の知らない料理を作れたりするかもしれない。
ルトルスも食器を片付け終えると、二人は食堂に移って予め炊飯器で炊いていたご飯をボウルに移して、おにぎりを握っていく。
おにぎりを作る時は水を少なめで炊くのが基本的だ。炊けたご飯はボウルに移して混ぜていく。そして手を綺麗に洗った後、手のひらに塩を振ってご飯を手に取って具を入れていく。ご飯で具を包むと、優しく握る感覚でシェーナは実演を進めていく。
「これで完成だね。本当は海苔を巻いたりしたいけど、今回は省略するよ。塩むすびを握った工程と変わらないから、ルトルスならすぐにできるよ」
ルトルスはシェーナに教えられた方法で、おにぎりを握っていく。
工程のスピードを落として、シェーナは参考程度に分かり易く実演を重ねていく。
その甲斐あって、数回握っていく間にルトルスはコツを掴んだようで上手に握れている。
「いいじゃないか! 完璧に握れているよ」
「シェーナの教え方が丁寧だったから……」
ルトルスは頬を赤く染めると、握ったおにぎりをそのまま口にする。
シェーナも自分が握ったおにぎりを口にすると、二人は自然と笑顔になる。
「シェーナともっと早く出会えていたら、私は違う人生を歩めたかな」
「どうだろうな。ガフェーナとの戦争で遠征部隊に派遣されていたら、ルトルスと戦場で剣を交えていたかもな」
「……嫌な時代だな。それこそ私もキシャナやサリーニャのように前世でシェーナと出会えていたらと思うよ」
「前世の俺は女にモテなかったし、どちらかと言うとキシャナは女にモテたよ。文武両道なルトルスが前世にいたとしても、俺の事は眼中になかったと思うよ」
シェーナはテーブルの席に着くと、ルトルスが前世にいたと仮定した話に首を横に振った。
戦争には直接参加しなかったが、もし前線に派遣されていたらルトルスや配下の暗黒騎士と一戦交えていたかもしれない。お互いに国の威信や立場もあっただろうから、斬りあって終わっていただろう。




