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第78話 異世界転生のルール

 店の営業が終わると、シェーナはペトラを連れて行政地区で住民票と身分証明書の発行手続きに向かう。

 書類は不備がないかシェーナが目を通して精査している。


「お手数おかけします」

「別に気にしないで。これで審査は通ると思うけど、万が一に出身地を訪ねられたら、ハシェル国の僻地にあるヴィネ村の出身って答えてね」

「分かりました。神様が嘘を付くのは少々気が引けますが、混乱を避けるためなら仕方ないですよね」


 ペトラが神様だと周囲が騒げば、彼女を一目見ようと人が押し寄せるは必至だ。リンスル聖王国の神官やそれに付随する信者が神託を授かろうと、店の前に行列を作られても困る。


「よく勘違いされるのですが、神様も部門によって役割が決まっていますので、役割以上の願い事は基本的にスルーです」

「そうなんだ。ペトラにお願いできることはやっぱり転生関係のことかな?」

「そうですね。最近、前世でシェーナさんがいた世界では異世界ブームになってまして、そういった願望のある魂は異世界に飛ばしたりしてましたよ」

「それって……前世の記憶を継承してないよね?」

「前回も申しましたが、記憶は抹消するのが神界のルールです。記憶継承の異世界転生はできませんが、異世界で生まれ変わる望みは聞き入れることができます」

「……多分、願望がある人は記憶継承できているのが前提だと思うよ。そして特殊なチート能力を授かることもね」

「そんなことはできませんよ! 一人の人間にそんな力を与えれば、下界のパワーバランスが崩れて混沌を招きます。下手をしたら神の領域を侵す行為に繋がりますし、絶対にあってはなりません」


 幸いなことに、シェーナ達のような異世界転生組は特殊なチート能力はなかったので、ペトラが派遣されて穏便に済んでいる。

 異世界転生を望む者にとって、神界のルールやペトラの話を知ったら詐欺だと思うだろう。


「そんな願望を抱くより、親から授かった命を大事にしてもらいたいですね。前世で頑張った分は来世に上乗せして人生を歩めるようになっていますから。私もシェーナさん達の素晴らしい人生を謳歌できるように頑張りますからね!」


 救済処置はあるのだとペトラは熱く語ると、道端の石に(つまづ)いて転倒する。

 衣服をはたいて立ち上がると、膝にすり傷ができている。

 シェーナは髪を結っていたスカーフを解くと、ペトラの膝にスカーフを巻いて止血を施す。


「大丈夫か? 俺は回復魔法ができないから、こんな応急処置になってしまったけど我慢してくれ」

「ありがとうございます! 神様なのに鈍臭くてすみません。きちんと洗ってお返しします」

「そんなことは気にしないで。ペトラは回復魔法を使えたりはしないの?」

「攻撃魔法と剣の扱いなら少々ですかね……」

「そうか。後でグラナに傷を治してもらおう」


 攻撃魔法は何度か拝見したが、剣を扱えるのは意外だった。

 腰に鞘を収めた剣もなかったので、シェーナは攻撃魔法主体の使い手だと思っていた。

 手には剣を握ってできる豆もなかったので、あくまで護身用に学んだだけかもしれない。


「そこの庁舎で手続きをするよ。俺も同伴してフォローはするから安心してくれ」

「はい……少し緊張して参りました」


 二人は庁舎入口で受付の列に並ぶと、シェーナはペトロの手をしっかり握って雑談を始めると彼女の緊張を解そうと努力した。

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