第75話 試食
一部の例外はあるが、魔物は『闇核』のエネルギーに呑み込まれた動植物の類だとグラナは語る。
「その理論が正しければ、リザードは蜥蜴、ミノタウロスは牛、コカトリスは鶏に変化するかもしれないな」
シェーナは魔物の風貌を連想してみたが、食材として扱うのは抵抗がある。
美味しそうな食材に化けるかもしれないが、果たして人が口にしても害はないのだろうか。
料理をお客さんに提供する訳だから、食材の衛生管理は徹底して行わないといけない。
「試しに、その豚とやらを調理して食べてみないか?」
「……本気か?」
「毒や麻痺になっても、私が瞬時に回復魔法で対処するよ。もし食べられるのなら、今後は『闇核』の回収と同時に食べられそうな魔物を捕獲してくるよ」
グラナはシェーナ達にオークだった豚を食そうと提案する。
過去、未知の物を食してきた先人達の功績は敬意に値するとシェーナは思う。
特に毒性があるフグは研鑽を重ねた結果、前世では美味しく食べられる食材の代表格と言っても過言ではない。
「キシャナはどう思う? 調理全般はキシャナの担当だから、意見を聞いておきたい」
「面白い試みだと思うよ。毒草も扱い方次第では治療薬に早変わりするからね。その豚を使って、何か作ってみるよ」
「……わかった。試食は俺が責任を持ってやるよ」
話は決まり、キシャナはオークだった豚を捌いて料理の準備を整えていく。
豚バラ肉、豚もも肉、豚ヒレ肉、豚ロース肉と分類する。
まずは豚ロース肉を両面に塩、コショウ、小麦粉でまぶしていくと両面に溶き卵をつけていく。フライパンに油を引いて、豚ロースをこげ色がつくまで両面を焼くと豚ロースのピカタが完成する。
それを皿に盛り付けて、特製ソースをふりかけるキシャナはシェーナのテーブルへと運んでいく。
「とりあえず、簡単に一品作ってみた。見た目は普通のピカタだが……」
「食欲をそそる良い匂いがするし、見た目は問題なさそうだね」
万が一の場合は治療を頼むとシェーナはグラナと目を合わせると、提供された料理を口にする。
シェーナは目を瞑りながら味を確かめると、よく噛んで胃の中に押し込んでいく。
その様子をキシャナはバケツを用意してグラナは回復魔法を唱える準備をしながら見守る。
「……普通の豚肉だね。これが元オークだとは信じられないよ」
「どこか痛いところはある? 豚肉になったオークに苦しむシェーナは見たくないよ」
「特に痛いところはないし、平気だよ。これなら食材として提供しても問題ない」
キシャナはシェーナの身を案じて、サリーニャがこの場にいたら同人誌のネタにされていたかもしれない。念のため、グラナに異常がないか魔法で調べてもらったが、毒や麻痺のような症状は見られなかった。
その後、豚バラ肉や豚ヒレ肉と続けて試食していったが、身体に異常は見つからずに問題はなかった。




