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第49話 魔王の居場所

 昼過ぎになると、順調に客足を伸ばして店は賑わいを見せている。

 この時間帯は商人や冒険者の出入りが激しく、どこの店も昼食目当てで満席になる。


「三番テーブルの焼き鳥! 一番、七番テーブルの牛丼だよ!」


 キシャナは手際良く調理した料理をグラナが配膳していく。

 シェーナはキシャナとルトルスのサポートに入って、肉料理とデザート作りに奔走する。

 リィーシャには休憩に入ってもらい、一人三十分のローテーションを組んで休憩時間を設ける。


「そろそろリィーシャさんが戻ってくる。次はルトルスが休憩に入ってくれ!」

「私の休憩はいらない。シェーナ一人でデザートを作らせることになる! 魔物に囲まれて逃亡するような軟弱者と変わらない」

「それは駄目だよ。俺は大丈夫だから、休憩はしっかり取ってもらうからね」


 責任者として、休憩返上で働かせることはできない。

 大げさかもしれないが、過労死に繋がるような真似は絶対にさせないつもりだ。


「適切に休むことも大切なことだよ。肉体を酷使して体を壊されたら大変だ」

「……わかった。シェーナが私達の体調を考えてくれているのは嬉しいよ」


 厨房の奥にある休憩室からリィーシャが出てくると、交代でルトルスが入っていく。

 想像以上に店の切り盛りは大変だとシェーナは実感しながら、夕方になる頃には食材が底をついて店を閉めた。

 一同が食堂に集まると、シェーナは労いと感謝の言葉を述べる。


「今日はおつかれさまでした。おかげさまで、食材は全部使い切って完売致しました! 開店初日もあって、お客様の客足は順調な滑り出しで明日に繋がるような結果になったと思います」


 明日使う食材は今日の夕方過ぎに届く予定になっているので、シェーナとキシャナは店に残って食材の確認と仕込みを進めていくつもりだ。

お手伝いのリィーシャとグラナには給金の封筒を渡す。


「ありがとうございました。こちらは今日働いて下さった分の給金になります」

「いや、私は受け取れないよ。一応、君達が所属するギルド長だからね」


 特別な事情がない限り、ギルド長が所属メンバーから金銭を受け取ることはできないことになっている。


「私の分はグラナ君に差し上げて下さい。それと、彼をこのまま店に雇ってくれませんか?」


 リィーシャの突然の申し出に、シェーナ達は驚いて声を上げる。


「宮殿に戻すより、ここで働いていた彼の顔はイキイキとしてたからね」

「……私は構いませんが、グラナはここで働くことに抵抗はないのか?」


 仮にも魔王と称される人物が、本格的に店で働くことは了承するだろうか。

 下級貴族出身のシェーナは貴族の社交界に居合わせたことがある。そこでは家柄や誇りを主張してぶつかり合うことが多く、シェーナ自身が出世や家柄に興味はなかったので、なるべく顔を出さないようにしていた。

 グラナのような魔王は社交界みたいな輝く場所が相応しいのではないか。


「そんなものはないよ。むしろ、君達はなかなか面白い組み合わせだから興味が湧いた。こちらこそ、よろしく頼むよ」


 グラナはあっさり了承すると、シェーナ達に握手をする。

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