第43話 帰還
昼過ぎに解放されると、シェーナはルトルスと一緒に商業地区の中央広場にあるベンチで腰を下ろす。
「……すまない。私が役になりきってしまったせいで、シェーナやサリーニャ達に迷惑をかけた」
「最終的に引き受けたのは俺だし、ルトルスは悪くないよ」
歴戦の猛者として五大国に武勇が語られるルトルスに芝居とはいえ、騎士として剣を交えたらどうなるか思慮が浅かった。
思いつめた顔をするルトルスにシェーナは彼女を抱擁すると、一つ提案をする。
「今夜、ルトルスの部屋で寝てもいいか?」
「それは……」
「あっ、別に変なことはしないよ! 前世は男だったけど、今は女同士の楽しい会話ができたらなと思って」
店の開店前で忙しいことは理解しているつもりだが、シェーナはルトルスの武勇や騎士としての側面以外に趣味や好物をよく知らない。以前、キシャナと初めて出会って食事と酒を楽しんだことを思い出すと、歓迎会の意味合いも兼ねてルトルスを楽しませたいとシェーナは考えた。
「迷惑だったかい?」
「いや、積極的なシェーナは好きだよ。今夜を楽しみにしているよ」
シェーナはルトルスの手を取ってエスコートすると、二人はキシャナが待っている料理店へと戻っていった。
「ただいま。遅くなってすまん」
「二人共! どこで道草を食ってたのさ。また行政地区に連行されたのかと心配してたんだよ!」
行政地区に連行されたのは事実なので、シェーナは詳しいことは省いて説明すると、炊飯器が三日後に入手できることをキシャナに報告する。
「炊飯器は嬉しいけど、それ以上に二人の無事が確認できて本当によかった」
キシャナはその場で泣き崩れると、何事もなく帰還した二人に安堵する。
「心配かけてすまなかった。ほら、もう泣くなよ」
シェーナはキシャナに手を差し伸べると、腹の虫が鳴ってしまった。
ルトルスもシェーナに続いて腹の虫が鳴ると、キシャナは呆れて笑いがこぼれた。
「しょうがない連中だね。昼飯は用意しているから、テーブルに着いて食べよう」
キシャナが冷蔵庫から大皿に盛られた食事を運んでくると、三人で食卓を囲み料理を堪能した。




