第39話 冷蔵庫到着
翌朝、シェーナの身体は元通りに回復して宮殿を出る仕度を整えていた。
「おはよう。身体の調子はどうだい?」
「おはようございます。おかげさまで問題なく動けます」
「それはよかった。これは私が調合した栄養剤だけど、よかったら使ってくれ」
リィーシャが見送りに来ると、シェーナの体調を気遣って栄養剤を用意してくれた。
「ありがとうございます。ルトルスから聞いたのですが、警戒に当たってくれたそうで」
「こちらの不手際だったからね。これぐらいは当然の処置だよ」
一晩中、警戒に当たってくれたリィーシャはいつもと様子は変わらない。
ルトルスの話によると、行政地区全体の広さで警戒網を張り巡らせるのは並の集中力と体力ではないらしい。エルフ族特有の探知スキルを応用した技術で、シェーナを独房フロアから発見できたのも、このスキルのおかげだ。
シェーナ達はリィーシャに一礼して店に戻ろうとすると、リィーシャは思い出したかのように三人を引き止める。
「肝心なことを言い忘れていた。お詫びではないが、店の開店日は何かと人手が足りなくなると思うから、微力ながら私ともう一人の者が協力に入るよ」
「えっ! しかし、行政地区での仕事があるのでは?」
「非番を取ったから平気だよ。それに、あくまで私的な立場での協力だから問題ないよ。雑用から何でもこなすつもりだから、遠慮なく申し付けてくれ」
何かと普段から世話になっているのに、店の仕事まで引き受けさせるのはシェーナにとって心苦しい思いだ。
店に戻ると、丁度大きな荷物を抱えた数人のエルフが目に飛び込んだ。
慌てて業者のエルフ達と合流すると、シェーナは冷蔵庫を指定した場所まで運ばせて、受取のサインをする。
業者のエルフ達を労って、キシャナはアイスハーブティーを振舞う。
「朝早くから、ありがとうございます。宜しければ、冷たい飲み物をどうぞ」
ミントをティーポットに入れると沸騰したお湯を注いで数分蒸らしてから、氷をグラスに入れて注いでいく。お好みで砂糖やはちみつで甘さを調節できることを教えると、業者のエルフ達は満足して帰っていった。
早速、冷蔵庫の性能を確かめるためにルトルスがかき集めた『闇核』をエネルギー変換させると、冷蔵庫の中からひんやりした空気が充満を始める。
「やったな! 無事に冷蔵庫も使えるようになって食材の保存は完璧だな」
キシャナはシェーナとルトルスにハイタッチすると、テンションを上げて喜びに浸る。
保存の他にも、調理過程で冷蔵庫を使用する場面もあるので、そのことを一番理解しているキシャナは子供のようにはしゃいでいる。
「普段は大人っぽい彼女だが、違う側面もあるのだな」
「割と前世からあんな調子だからなぁ」
ルトルスにとってキシャナは大人びたダークエルフだと認識していたが、素の彼女を知っているシェーナにはいつもと変わらない姿だった。




