第37話 三人で食事
今夜はリィーシャの厚意に甘えて宮殿の客室で一夜を過ごすことにする。
キシャナとルトルスもシェーナの傍にいて世話をすることで話はついている。
「宮殿の台所を借りて、何か消化の良い料理を作るよ」
「ありがとう。今は特にお腹も空いていないし大丈夫だよ」
「そうか……気分は平気なのか?」
「ああ、全然平気さ。明日には動けると思うし、朝方に戻って冷蔵庫を引き取る準備をしないと」
そわそわしながらシェーナの体調を気遣うキシャナは落ち着かない様子だ。
ルトルスは部屋の入口に陣取ると、シェーナ達の警護に努める。
「俺よりルトルスに何か料理を作ってやってくれ。『闇核』を入手で動き回ってもらったんだ」
「それには及ばないさ。単独任務で食料の確保は自分で……」
「そういう訳にもいかない。ルトルスには危険な役割を担当させておいて、俺がこんな調子で心配させてしまった。呆れた奴だと思われても仕方がない」
「そんなこと言わないでくれ! さっきの妙な物でシェーナの言葉を聞いて嬉しかったんだよ。あんな取引を持ち掛けられても、シェーナは芯を曲げずに私やキシャナを守り、故郷にいる両親も守り通すその信念に敬服する」
ルトルスはシェーナに近付いて正面から抱き付くと、彼女の本音が窺えた。
ルトルスのためにキシャナは台所を借りて、栄養のある料理を作り始める。
鍋にバター、水、コンソメを入れておき、一口サイズに切った人参、玉ねぎとすりおろしたショウガを先程の鍋に入れて火を通していく。
ある程度煮込んだら灰汁が出てくるので取り除いて、塩コショウで味付けを整えると野菜スープが完成する。
「とりあえず、揃っている食材で野菜スープを作ってみたよ」
キシャナは野菜スープを三人分の皿に取り分けると、食卓を囲んでキシャナの料理に舌鼓を打った。
温かいスープが胃の中を通って、食欲を満たしていくのが実感できる。
「やっぱりキシャナの作る料理は最高だな」
「そう言ってもらえると嬉しいな。ルトルスはどうだった?」
「ああ、文句なしに美味い。私が作ったら、キシャナのような料理はできないだろうな」
「今度、ルトルスに料理を教えるよ。慣れれば料理は楽しいよ」
「……そうか。考えておくよ」
ルトルスにとって戦闘訓練や剣術以外の分野は縁がなかった。
サバイバル訓練を積んで最低限の食料調達と料理はできるが、それはあくまで生存するのが目的であって、料理を楽しむようなことではない。
選択肢が増えることは決して悪くないし、新たな可能性に出会えるかもしれない。




