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第35話 死の淵

「浩太起きろよ! 飛行機が出立した直後に爆睡かよ」


 誰かが自分を揺さぶって起こそうとする。

 頭が鉛のように重く、目を覚ますと親友の康弘の顔があった。


「ああ、おはよう。浩太って……俺のことか?」

「おいおい、大丈夫か? 今日から修学旅行なんだから、しっかりしてくれよ」

「ん……修学旅行か」


 周囲を見渡すと、機内のアナウンスが耳に入ってクラスメイトが座席で談笑している。

 康弘は修学旅行のパンフレットを広げて旅行先の散策はどうするか訊ねてくる。


「自由行動は何する? 観光先は色々あるから悩むなぁ」

「俺はどこでもいいよ。折角だから彼女に告白したらどうだ? 福原さんのことは好きだったんだろ?」

「ちょっ……何で浩太が知ってるんだよ! 誰にも話してないのに、お前はエスパーか!」


 あれ? どうして康弘の彼女を自分は知っていたのだろうか。

 康弘から直接聞いた覚えはないし、何か大切なことを忘れているような気がする。

 必死に思い出そうとすると、頭痛が激しくなって頭に(もや)がかかったようになる。


「反対側の座席にいる外国人のお姉さんだが、さっきから浩太に熱い視線を送ってないか?」


 康弘は反対側の座席を指さすと、たしかに外国人のお姉さんがこちらを凝視している。

 銀色の長髪に騎士鎧を身に纏っているのはコスプレ衣装なのだろうか。


「大人になったら、あんな美人と酒を交わしたいな。浩太はあの外国人と取り合いなのか?」

「いや、全然知らないよ。でも……彼女とはどこかで出会った気がする」

「デジャヴってやつか? まあダメ元で口説いてみろよ」


 康弘が背中を押すと、反対側の座席にいる外国人のお姉さんを目の前に照れてしまって硬直してしまう。


「……やっと見つけた。私と一緒に帰ろう」

「えっ?」

「私はシェーナ・ウラバルトだ。君を連れ戻すために待っていた」


 シェーナと名乗る女性は自分の手を引っ張り、彼女の胸元に飛び込んだ。

 すると機内は大きく揺れて、足元から煙と炎の手が上がる。

 反対側の座席にいる康弘は炎で道を寸断されてしまう。


「康弘!」

「……お前はここで死ぬべきじゃない。その人と一緒に元の世界へ帰るんだ」

「何言ってるんだ! お前も一緒じゃないと」


 悲痛な叫びで親友の名前を呼ぶが、炎は勢いを増して機内を包み込んでいく。

 康弘ではない優しい女性の声に変わると、続けて言葉にする。


「私は一足先に元の世界で待っているよ。お前を……シェーナを」


 声はそこで途切れると、全てを思い出した。

 浩太はシェーナの身体に取り込まれると光に包まれて意識がはっきりと元に戻った。


「シェーナ!」


 そこにはキシャナやルトルスの姿が目に映り、シェーナは死の淵から生還したのだと初めて実感した。

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