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第34話 信念

 狭い取調室でシェーナは縄を解かれて椅子に座らされる。

 カリューは衛兵を下げると、単独でシェーナの取調を始める。


「お前に絶好のチャンスを与えようと思う。ガフェーナの二人をこの毒薬で始末したら、俺が口添えしてハシェルで騎士の地位に戻れるよう手回ししてやる」

「断る! 二人は私の大切な仲間だ。それにハシェルの騎士と戻るつもりもない。二人の身元はリィーシャさんが保証しているし、あなたが彼女達を裁く権利はない!」


 真っ当な取調ではなく、カリューは悪魔の取引を持ち掛けてシェーナを丸め込もうとする。そこまでしてガフェーナを目の敵にするリンスルが異常なのか、またはカリュー個人の正義感が突き動かしているのか分からないが、シェーナは語気を強めて非難する。


「そんな話なら私は帰ります」

「いいのか? この話を断れば、街の治安を乱した罪でお前をハシェルに強制送還することもできる。国外逃亡を謀ってガフェーナの連中とつるんでいたことを知られれば、お前はハシェルで断罪されるだろうし、その責任としてウラバルト家の一族も同罪だ」


 街の治安維持を任されているカリューなら、本気でシェーナを強制送還させることはできるだろう。退路を断って取引に応じさせるカリューにシェーナは心底怒りが湧いてきた。こんな奴が勇者に招かれていることに深い憤りを覚える。

 キシャナやルトルスを守り、ウラバルト家の家名を守る最善の選択肢はシェーナの中で決まっていた。


「引き受けてくれるなら、将来を約束しよう。何なら、私の部下として置いてもいいぐらいだ」

「私は仲間を売るような真似はしないし、ウラバルト家の両親にも迷惑はかけない」

「お前は馬鹿か? そんな方法はねえんだよ! 私の言う通りに首を縦に振ればいいんだ」

「あるよ。私はお前のようなクズに屈するつもりはない! あまり私をなめるなよ?」


 シェーナはカリューが提示した毒薬を手にすると、躊躇せずに口へ放り込む。

 すると、身体は全身に痺れるような感覚と吐き気が襲い始めて、寒気が続いてやってくる。カリューは何か言い放っているらしいが、シェーナの耳には届かず意識を保つのにも限界が近づいてきた。

 その場に倒れ込むシェーナは最善を尽くしたと誇りに思い、目を閉じて意識を失った。

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