第20話 闇核(ダークコア)
三日後、シェーナはキシャナと料理店でパンケーキの試作をしていた。
牛乳、卵、ヨーグルトをガラス製のボウルに入れて混ぜる。
薄力粉、ベーキングパウダー、砂糖、サラダ油は異世界になかったので代用の油を用意してボウルに加えてかき混ぜる。
これで生地作りは出来上がり、フライパンを温めてバターを引いて生地をお玉ですくって両面を焼いていく。
「ふわふわのパンケーキだ。今回はヨーグルトを使用したがマヨネーズでもふっくらしたパンケーキができる」
キシャナは前日に作った特製のジャムを容器から開けると、パンケーキにかけていく。
シェーナは実食すると、食べ応えがある食感でパンケーキとジャムが上手く絡み合っている。
「これは美味しいな。ハーブティーとセットにしたら女性に人気が出ると思うよ」
「ありがとう。前世で女子から作ってくれとせがまれたことがあったから、割とパンケーキは楽だな。あとはクレープも作れる」
デザートの知識はさすがだなとシェーナは感心する。
材料の仕入れや調理はキシャナが、シェーナは会計事務と調理補佐として店の経営を回していく。朝昼は軽食とデザートを主力に、夕方から夜にかけては冒険者が寄り付けるような居酒屋を考えている。
店の経営ましてや料理店は初めての経験なので、緊張と焦りはある。
冷蔵庫が届いた次の日を開店日として商業地区や居住地区の掲示板に広告を貼りだして、行き交う人にビラ配りもやってきた。
店の正面入り口から、寝不足気味のエルフがシェーナに声をかける。
「ここが例の店か。なかなか雰囲気あっていいわね」
「いらっしゃい。サリーニャ、彼女がキシャナで元クラスメイトの……」
サリーニャはキシャナを舐めるように見ると、うなだれた声を上げる。
「人妻感のあるダークエルフと美人な女騎士のお姉さんが経営する料理店か。何であんた達は前世が男だったのに立派な胸と美貌があって、私は幼児体型のエルフなんだよぉ!」
「サリーニャ、落ち着いて……」
シェーナはサリーニャをなだめようとするが、彼女は続けて言葉にする。
「前世は薔薇、異世界では百合が成立するあんた達はいいわよ! せいぜい私は二百歳になるリィーシャさんの幼女ババアの組み合わせが関の山よ!」
何を言い出すんだこの人はとサリーニャを黙らせるために、シェーナは口の中にパンケーキを放り込む。
すると、パンケーキをよく噛み締めてサリーニャは落ち着きを取り戻す。
「ごめん、ここ数日は飲まず食わずの徹夜の作業だったから、つい本音が出てしまったわ。リィーシャさんに差し上げた冷凍庫と同じ物を作ったから、あんた達にあげる。今日はそれの使い方と何か美味しい料理を目当てに来たのよ」
サリーニャは冷凍庫の箱と小型の機械をシェーナに渡す。
基本的な使い方は前世の冷凍庫と変わらないが、動力が電気ではない。
電気の代わりに『闇核』と言うエネルギーを利用している。
『闇核』は主に魔物の体内に蓄積されて、倒した魔物から専用の抽出機で取り出される。
サリーニャはパンケーキを食べ終えて席を立つ。
「その小型の機械は『闇核』の抽出機だから、死んだ魔物の近くに抽出機をかざせば自動的に抽出作業が始まるわ。大体、オーク一匹分でその冷凍庫は一日分の稼働はできるわよ」
箱には『闇核』の残量を示す数値があるので、足りない分は魔物を退治して補充をする必要がある。
そうなると、継続的に魔物討伐をしないと冷蔵庫や冷凍庫は維持できない。
シェーナが『闇核』回収係として動くと、調理まで手が回らない。
必然的に誰かを雇い入れる必要がある。




