第13話 リィーシャの取引②
リィーシャの部屋の前に二人は立つと、ノックをして入室する。
「おや? 意外と早く決断したね。適当に座りなよ。折角だから晩酌に付き合ってくれ」
リィーシャは読んでいた本を閉じて、二人を歓迎する。
箱のような物から氷を取り出してグラスに入れると、リキュールを注いでいく。
「最近、商業地区で錬金術師が工房を開いてね。そこの錬金術師からロックという飲み方を教わったよ。なかなかの変わり者で、錬金術で氷を製造する箱も彼女から譲り受けた。ストレートだと香味やアルコールがきついリキュールだけど、氷が溶けだしていくと、さっぱりした味に変化していくんだ。読書をしながら時間をかけて酒を飲みたい私には打って付けの飲み方だよ」
二人はリィーシャが取り出した箱に驚いて、それが冷凍庫のような物だと理解する。
冷凍保存ができれば、料理の幅を広げることができる。
今度、工房を開いた錬金術師と面会して同じ物を作れないか交渉してみる価値はある。
下戸なシェーナと笊なキシャナは初めてロックで酒を口にするが、冷えていることですっきり飲むことができた。
シェーナは興味本位でリィーシャに酒の話をする。
「リィーシャさんは酒が好きなんですか?」
「たしなむ程度だよ。ほろ酔い気分になって嫌な事は忘れられる」
「嫌な事ですか」
「意外だと思ったかい? 人は誰だって口にできない悩みがあるものだよ。酒はその捌け口になってくれる」
リィーシャはグラスのロックを一気に飲み干す。
彼女が内に秘めていることは歴戦の勇者と旅を続けてきた彼女しか分からないことかもしれない。
リィーシャは書類を確認すると、棚の奥から金貨三千枚が入った袋をテーブルに置く。
「改めて商業ギルド『森の聖弓』の加入を歓迎するよ。キシャナ君は『女神の剣』に加入していたと思うが、移籍手続きはこちらで進めておくよ」
シェーナが「感謝します」、キシャナが「ありがとうございます」と謝意を述べる。




