第11話 今後の生活
部屋に戻ると、二人はテーブルに座って現状と今後の事を相談する。
シェーナは家賃を滞納していたキシャナの生活を心配して、問題点があれば一緒に解決したいと思っている。
「キシャナは今までどうやって生計を立てていたんだ?」
「商業ギルドで薬草を持ち込んだり、冒険者や観光客を目当てに占いさ」
「魔物討伐はやらないのか? 危険は伴うけど、報酬はかなり貰える」
「……ごめん。あまり殺生な依頼は請け負いたくないんだ」
「……そうだったな。そのために城塞都市を訪れたのに」
キシャナは魔物討伐と聞くと、口が重くなる。
人殺しが嫌で同族でダークエルフの故郷を離れたのに、魔物討伐をさせよう誘ったのは配慮が足りなかったとシェーナは反省する。
「魔物討伐は俺一人でやるよ。キシャナは家事の仕事をして役割分担をしよう」
魔物討伐は魔物の種類にもよるが、高額な報酬で請け負うことができる。
一体当たりの相場は大体決まっている。
デーモンが金貨百枚、グリフォンが金貨六十枚、オーガが金貨三十枚、オークが金貨十枚。
依頼者の事情次第では報酬が上乗せされる場合もあるので、高額な魔物討伐は人気が高い。
シェーナは騎士団で活躍していた頃には部下と協力してグリフォンの討伐、オークをソロで討伐した実績があるので、魔物討伐で安定した生活を送れる筈だ。
シェーナの提案にキシャナは猛反対する。
「シェーナを危険に晒すことはできない! もし討伐に失敗して魔物に凌辱されたり酷い仕打ちに遭わされたりしたら、私は一生後悔する」
「腕には自信があるさ。騎士団では魔物討伐は仕事の日課だったし、引き際は心得ているつもりだ」
「お願いだ……シェーナがいなくなるようなことは嫌だ!」
キシャナはシェーナの胸に飛び込むと、目に涙をにじませて引き止める。
魔物討伐以外で高額な報酬は希少な薬草、鉱物、道具を納入と限られてくる。
シェーナにそんな目利きのスキルはない。
「それなら君達に良い条件の仕事があるよ」
驚いた二人は玄関先から声がする人物を確認すると、そこには隣の部屋に住んでいるリィーシャの姿があった。