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ジャスティン・ウォーカー  作者: けんじぃ
第1章 ジャスティン・ウォーカーと予言の書
4/32

覚醒

「ジャスティン・ウォーカー」

黒髪で短髪の男性が僕の名前を呼んだ。顔はよく見えない。大勢の子ども達と一緒に、僕とイーサンはホールに並べられた椅子に座っていた。僕はイーサンの隣で席から立ち上がった。

「はい」

「ありえない事だが、君には全く能力がない事が分かった。残念ながら、入学を許可できない」

 隣にいるイーサンを見ると下を向いて肩を震わせている。

「そんな、嘘です。もう一度調べてください。入学不可なんて、お願いです。もう一度検査して下さい」

「それはできないのだ」

 

 ドンドン。ドアをノックする音が聞こえてきた。

「早く起きろよ。今日はサッカーするんだからな」

「分かってるよ」

 嫌な夢。入学案内が着てから、いつもこの夢だ。今日もサッカーの約束だっけ。小学校を卒業して休みに入って、暇があればサッカーばかりだ。明日は僕の誕生日。その次の日は能力判定なのに、まだ能力に目覚めない。あの夢が現実になったらどうしよう。

 鏡を見ながら、ジャージに着替えた。

「にきびがひどいな。早く治らないかな」

 額のにきびを触っていると、額にうっすらとアザが見えた。

「なんだこの変な模様のアザは?昨日までなかったのに」

 しかし間もなくその模様は跡形もなく消えた。

「なんだただの寝跡かな」

「ジャスティンまだか?」

 イーサンがリビングから叫んでいる。

「はいはい。今行くよ」

 急いで着替えて、リビングに降りていった。

「おはようございます」

「おはようジャスティン。さぁ席についてね」

 叔母さんは朝食を並べている。叔父さんはコーヒーを飲みながらニュースを見ている。イーサンは早く食べたそうにそわそわしている。横目で早く座れと言いたげだ。

「おはようございます。叔父さん」

「おはよう。今日もサッカーか?」

「はいそうです」

「遊ぶのも程々にな。小学校で習ったことは、能力とは関係ないが将来に役立つ。復習も忘れないようにな。イーサンもだぞ」

「もちろんです。お父さん」

「よろしい。では、いただきます」

「いただきます」

 いつも通りの、静かな食事。できるだけ、急いで食べているように見えないように食べた。イーサンもそんなふうに見える。

「ごちそう様でした。おいしかったです。じゃ行ってきます」

「いってらっしゃい。寒いから気をつけなさい」

「はい。お母さん。十二時には戻ります。行ってきます」

 二人揃って家を出た。出た瞬間、二人とも走り出した。この前、公園に行った時は、広場に先客がいて、使えなかった。公園以外のいい場所を探すのに時間がかかった。僕が寝坊したからだ。今日はきちんと起きれたし、大丈夫なはずだ。

 マディソン・スクエアパークにやっと着いた。誰も来てないように見えたが、見当違いだった。二人で広場に行くと、またしても先客がいた。この前と同じ二人だ。

 ゲイリー・トーマスとルーカス・スチュアート。二人共僕達の一つ年上だ。ゲイリー・トーマスは、ずんぐりとした体形で、お腹は服からはみ出ている。金髪で、首がほとんどなく、ぴったりな言葉は豚だ。サッカーをどうやってしているのか永遠の謎だ。ルーカス・スチュアートは、背が高く、がっちりとした体形だ。顔はそばかすだらけだが、冬でも日焼けしていてよく見ないと分からない。

 この二人と僕達は、小学校の頃から犬猿の仲だ。二人は、広場を占領して、一対一をしていた。

「おいゲイリー。僕達この広場使いたいんだけど。少し場所分けてくれないかな」

 イーサンが勇敢にも、話しかけた。二人は、一対一を止めてボールを右腕に抱えて、近づいてくる。

「残念だったな。見ての通り、僕達が先に使っている。他を探しな」

「こんなに広いじゃないか。たった二人全部は使わないだろ?」

「いや使うな。お前達はチビで下手くそだから狭い範囲で十分だろうが、僕達の練習にはこのぐらい必要なんだ。」

「よく言うよ。そのでっかいお肉抱えて走るので精一杯のくせに」

「なんだと?もう一度言ってみろ」

「いいさ何度でも言ってやる。そのお肉を抱えて・・・」

 イーサンの口が閉じた。ゲイリーは、右手を口を閉じさせるように動かしていた。そして手を放すと

「ぷふぁ・・・なんだ?」

「見たか。人体操作だ。今は自分の操作がメインで、他人にはこの程度だが、もう少し鍛えればお前を好きなように操れるぞ」

「そんな事できるもんか。僕達はこの腕にはめているリミッターで監視されているじゃないか」

 僕は二人の会話に割り込んだ。

「違うな。確かにこのリミッターで監視されているのは確かだが、罰を受けるのは法を犯すほどの事をした場合だけだ」

「そうなの。イーサン?」

 僕はイーサンの方を向いた。

「確かにその点は正しい。でも、おバカさんは知らないようだが、能力にも相性がある。他人への直接のサイキックは、サイキックの能力者同士の場合、能力値の差が余程ないと鈍くなる。効果も使用時間もね。でもその点、俺の物体操作はそんな事に左右されないけどね」

 イーサンはそう言うと、ゲイリーの抱えていたサッカーボールに手を向け、ゲイリーのあごにボールを直撃させた。ゲイリーは、倒れそうになったが、倒れる直前に制止し元の態勢に戻った。

「いってぇな。思いしらせてやる」

 イーサンとゲイリーが戦態勢に入った時、間にルーカスが割り込んできた。二人の胸に手を当てている。二人とも全く前に進めないようだ。二人とも一歩後退した。

「止めるな。ルーカス」

「まぁ落ち着けゲイリー。どうだろう、今から二対二をして勝った方がこの広場を使えるってのは。」

「ふん。それなら、まぁいいよ」

 イーサンはまだ怒りながらも、同意した。

「なぁゲイリー。いいだろ」

 ルーカスはゲイリーにウィンクをしながら言った。イーサンは気づいてないけど、僕は確かに見た。

「仕方ない。いいだろう」

 ゲイリーも、にやけながら同意した。

「じゃあ先に二点を先取した方の勝ちだ。コートは、君達用にハーフコートだ」

「いいよ。オールコートで」

 イーサンは挑戦的だ。

「分かった。では準備して始めようか」

 ゲイリー達と離れて僕はイーサンに話しかけた。

「奴ら。何か企んでる」

「望むところだ。大丈夫。奴らの練習の様子見ただろ?大したことないって」

「始めるぞ」

 僕達は、センターに立って準備した。先行は奴らだ。二対二だから、マンツーマンでの勝負だ。キーパーはなし。

 スタートと同時に、ゲイリーがルーカスにパス。僕はルーカスに、イーサンはゲイリーについた。

 電光石火。二人に近づけたのも一瞬だった。ルーカスは、信じれない速さで僕を軽く突き放した。体の重さを感じさせないほどの速さだった。一人で十分だったろうに、わざとらしくゲイリーにパス。ゲイリーは、そのパスに巨体とは思えない程の早いターンで応えた。イーサンも予想外だったようだ。追いつく暇もなく・・・

「俺達の先制だな。あと一点だ」

 二人はハイタッチをしている。

「汚いぞ。能力を使うなんて。サッカーはスポーツだ」

 イーサンは顔が真っ赤だ。

「俺がいつ能力禁止だと言った?」

 ルーカスは、イーサンに自慢げに言った。

「いいさそういう事なら。見てろ。早く始めるぞ」

 僕が、イーサンにボールをパス。イーサンは、相手ゴールに運ぼうとした。ゲイリーがイーサンにつく。どうやら足の速さは人並みだ。機敏さは異常だが。普通あんな動きはできない。ゲイリーは奇妙な動きで、イーサンからボールを奪った。

 しかし、次の瞬間。ボールは、ゲイリーの足元から跳ね上がり、ゲイリーの顔に直撃。奇妙に跳ねながら、ゴールへ向かう。ルーカスとゲイリーが、必死に追いかける。ルーカスはボールには追いつくが、予測不可能なボールを捕らえられない。そして、・・・

「くそっ」

「どうだ。忘れてらっしゃいますが、サッカーは、ボールをゴールに運ぶスポーツだ。物質操作ができる俺に能力を使わせるからだ」

 ルーカスは、ゲイリーに何やら話しかけた。それを聞いてゲイリーは、意地悪い顔でこっちを向いた。

「早く始めようぜ」

「気をつけないとイーサン。また何か企んでるぞ」

「平気だってジャスティン。奴らが、何を企んでいても、俺はボールを自由にできるんだからな」

「そうだけど」

「さぁ行くぞ」

 ゲイリーがルーカスにパス。でも、ボールは真っ直ぐパスされず、奴らのゴールへ飛び跳ねながら向かう。またしても、ルーカスが凄い速さで動いた。でも向かう先は・・・

 ドーン。イーサンは、ルーカスに体当たりされ、地面に倒れた。

「いってぇ」

 イーサンの膝から血が出ていた。ゲイリーが操作の解けたボールをキープして、こっちを楽しそうに見ている。

「大丈夫か?手加減はしたんだがな」

「ふざけるな。今のは完璧に反則じゃないか」

 僕は、ルーカスに喰ってかかった。

「反則も有りだ。ちゃんと最初に確認すべきだったな。それにお前が助ければよかったじゃないか」

 僕の顔は真っ赤になった。

「そういえば、お前にはまだ能力がないんだったな」

「黙らないとお前に車をぶつけるぞ」

 イーサンが、膝をかばいながら起きあがった。

「ふん。できもしないだろ。ジャスティン、お前確かもうすぐ十一歳だったな。能力は、三歳から十一歳までに決まる。まだ能力に目覚めてないのか。お前みたいな奴、始めてみるぜ」

 次の瞬間。ぴったりな言葉はこれだ。キレてしまった。僕は、頭に血が上るのを感じた。顔は多分真っ赤だ。感情を制御できない間隔。不可能でも、とにかくルーカスをボコボコにしてやろう。

 でも、僕の身体が動く前に、不思議な事が起こった。僕の周りの風が、意志をもったかのように僕の周りを動き始めた。風をとても身近に感じた。額が熱い。すると女性のような声が頭に響いてきた。

「ようやく声が届いた。私が力を貸してあげる。」

そしてその風が、一気に、ルーカスとゲイリーの方へ放たれた。突然の出来事に二人は成す術もなく、倒れた。そして、ボールは風に運ばれ、奴らのゴールへ。

 この出来事に誰が一番驚いたか。もちろん僕だ。

「ふざけやがって」

 二人が僕に向かってくる。でも、風が二人の邪魔をして全く動けない。風が止むと二人は息を切らしていた。

「覚えてろ。この借りは学校で必ず返すからな」

 ゲイリーとルーカスは、急いで広場を去って行った。

 キレた事など忘れて、気が付くと身体はクタクタで、僕は地面に倒れた。イーサンが、僕に近づいてきた。

「ジャスティン、やったじゃないか。今のどうやったんだ?」

「自分でも分かんない」

「ジャスティン、今のは確実にサイキックだ。覚醒したんだよ。しかも、お前は風を操れる。すごく珍しいことだぞ。やったな。」

 イーサンは、自分の事のように嬉しそうだ。そんなイーサンを見て、僕も思わずにやけてしまった。

「まぁ思ったより大したことなかったけどね」


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