淡いピンク色の作家・後編
後編となります。
—臥煙宗、近年大ブレイクした小説家。年齢は不詳だが、外見からしてまだ十代程と思われる。淡いピンク色をした可愛らしい髪がふわりと揺れ、猫のように大きな目が特徴的な作家。近年じゃあまり見かけなくなった万年筆や懐中時計、着物といった古風な物が好きと来るから、ファンからは「古風少女作家」などと呼ばれている。
プロフィールといこう。
臥煙宗。
年齢不明。高校生くらい?
好きなもの、万年筆、懐中時計、着物、苺タルト、可愛いもの......etc
嫌いなもの、締め切り、腱鞘炎、猫、カラス、鼻当てがないメガネ......etc
後は先の記述通りの事柄。
臥煙が作家として活動し始めたのは、今から二年前。つまりは2018年の頃からであった。作風にこれといったひねり等は少ないが物語の伏線や展開に引き込まれるといったもののようで、ブレイクを果たした。当時から高校生とかと言う噂はあったが、今もなお本当の年齢やそう言うのは不明。
苺タルトが大好物、特にさっさん....佐々木信広と言う彼女の専属担当者が作る苺タルトが大好物。無論、市販品やケーキ屋等で売っているタルトも食べるが、さっさんのには渡欧及ばない、とのこと。
「ふぅ、暑い。」
太陽が燦々と輝く昼間、臥煙ら一行は本屋近くの洒落たカフェに入店し、涼んでいた。
「僕はブラックを、先生は?」
高級そうな外装をしていたメニュー表を見て、佐々木は即座に決めた。が、臥煙は中々決まらない。
「カフェラテもいいだろうけど、こっちのショコララテも気になる.....。苺ラテも捨てがたい......むむむ.....。」
じっくりと、表に穴が開くほどに見続ける。その光景に、注文を取っていた店員も思わず苦笑する他ないかった。
「...........じゃあ、カフェショコラで。」
長い沈黙の後、臥煙は答えを出した。カフェショコラというのは、名前で大体想像がつくであろうが通常のカフェラテに濃厚ショコラを加えた一品。ビターなチョコとほんわか甘いラテが合うらしい。
その後は軽食にサンドイッチやデザートのケーキを注文した。
「いやぁ、それにしても.....。」
不意に、臥煙が呟いた。高級そうな装飾が施されたテーブルに片肘をつき、外を眺める。右手を顎置きとし、外をボケーっと見る。
「今日も暑いねぇ。」
外では、ミンミンとセミが忙しなく鳴き右往左往する人々は皆ハンカチや日傘片手に動いていた。
「ですねぇ。」
佐々木もYシャツの第一ボタンを開け手で仰ぐ。本屋は冷房が機能していたから快適に過ごせたが一度外に出れば灼熱地獄。冷房という科学の誘惑に取り憑かれていた二人からしたら堪え難いことであった。一刻も早く涼もうということになりどこかないかと探していたら、このちょっと高級そうなカフェに行き着いた。
「北海道ならもう少し涼しいんだけど.....。」
はぁ、と諦めたようにため息を吐く。臥煙宗は北海道出身。ちなみに、佐々木は東京出身。この地獄の暑さには慣れているがそれでもきついと思うときはある。住民でもこれなのだから道民である臥煙は一体どれだけ......。
「夏はいいかもですが、冬最悪じゃないですか。あそこ。」
「それには同意するよ。」
即答で臥煙は返す。その時、店員が注文した飲み物を持ってきた。笑顔で商品を置き、礼儀正しく一礼してどこかへ行く。様になっている。
「......美味しい。」
臥煙は、飲み物を飲んだ瞬間目を丸くし感想が口から漏れた。ほろにがなビターの中に甘いラテがありそれが織り混ざって極上の一品となる。
「先生、口にチョコ付いてますよ。」
と佐々木は自然な流れでナプキンを一枚持ち、臥煙の口元に付いたチョコを拭う。
「ちょ、さっさん....。」
臥煙は少し抵抗したが、大人しく口を拭かれることにした。
「うんうん、綺麗になった。」
佐々木は満足そうに微笑む。あ、ありがとう......と臥煙は恥ずかしくなりつつ一文礼を言った。
なんと微笑ましい光景なのだろうか。
臥煙先生、可愛くなかった?ねぇねぇ、可愛くなかった?可愛いよねぇ〜最高。
明日から一投稿になりそうですはい。