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恋と闇

外伝も同時進行で執筆し始めた臥煙です。とりあえず今日は無理なんで次回、10回目からを予定。

「葛城、お前も誰かと行くのか?」

「あぁ?」

突如、飄々としていた葛城の表情が変わった。怒っていうのか、片目だけでこちらを見ているがそれがとんでもなく威圧感がある。要するに怖い。

というか—

「行く相手いないのね。」

桜井が慈悲に溢れた、哀れな目を葛城に向けていた。

「そんな目で見るなよ、桜井。泣きたくなるだろ?」

結構心に刺さる目で見られてたせいで、葛城は苦い顔をしていた。というか、泣きそうになっていた。なんか可愛い。ぷくーっと頬を膨らませ拗ねる子供のようなあどけなさ。最高。

「あら、可愛い顔できるじゃない。子供みたいで可愛いわね。」

ムッとしている葛城の顔を見た桜井の感想がまさかの龍崎とおんなじものであった。不意に桜井が立ち上がり、我が子を愛でるかのように、愛用のぬいぐるみを抱きしめるかのように彼女は葛城を抱いた。抱きしめた。ギュウウっと、抱きしめた。

「ちょ—桜井!?苦しい—うおっ!?」

桜井自慢の胸部双丘が、服の上からでもわかる柔らかなマシュマロが座っていた葛城顔面にクリティカルヒットしていた。赤面状態になった葛城はその胸内で慌てふためき。目を白黒に、耳まで真っ赤になって動揺していた。

端から見たら、姉妹か女友達がじゃれあっているように見える。

だが—葛城は女ではない。男である。

髪が長く、顔も女らしいアンティークドールであるから女に見えるだけであって、本当は男なのである。男の象徴である象も付いている。しっかり、付いている。そこは顔に似合わず可愛くない。

「あぁ、可愛いなぁ。もう」

うりうりぃ、と桜井は悪戯のように、わざと胸を押し当てる。その度に葛城は悲鳴をあげている。

「ギャアァァァ—さ、桜井!?ちょ—」

モニュ、モニュ、と柔らかいものが当たる当たる。普通の男子なら金払ってでも受けたいプレミアムサービスだろう。

それが無料、....なんの話だ。

「—はぁはぁ...。」

しばらくして、桜井の悪戯な抱きしめから解放された葛城は、赤面状態の息切れしまくった状態で頭から煙を上げていた。

「あぁ、可愛かったな、楓ちゃん。最高」

顔がテカテカ、というか若返ってそうな感じになった桜井はウヘヘ、と奇妙な笑みを浮かべ感想を伝えた。当の本人は嬉しくなかったのか、恥ずかしかったのか知らないが「何が最高だおい!?」と可愛らしい赤面で反論していた。

「—話は変わるけど...。」

「本当に変わるんだな。」

桜井が本題の続きに入ったと同時、葛城が先の仕返しか、話の腰を折る。

「......。龍崎君、誰かと行くの?」

しばしの沈黙後、桜井は龍崎に話を振った。振られた龍崎は、ほぇ!?と素っ頓狂な声を上げていた。

「え、えぇ....。行く予定ですが。」

今日の朝、赤城との会話を思い出し、言う。

「もしかして、彼女?」

行くと返答をした瞬間、桜井の顔がニヤリと不敵な笑みを浮かべ問いを全力投球でぶん投げた。

「—ぶっ!?」

龍崎は飲んでいたコーヒーを盛大に吹き出した。げほげほ、と咳き込む。

「その反応...。あら、そう。龍崎君に春がきたのねぇ。桜井さんは嬉しいわ〜。」

声高らかに全開での笑みを浮かべ言う。心底楽しそうに言った。

「ち、違う!」

羞恥からか、龍崎の顔が赤くなった。

「おやー?なんでそんなムキになって否定してるんだ?龍崎。」

あからさまに挑発している葛城がゲス可愛い顔で龍崎に容赦無く言う。それもそのはず。

—葛城には彼女がいない。かと言って彼氏がいるわけでもない。ずっといない。らしい。

「葛城、お前いないからって...あたるな—」

「—おい、今すぐその口閉じろ。」

刹那、葛城の目が狂気に変わる。瞬間的に葛城のテンションが絶対零度並みに下がり、口調もちょっと低いアルトボイスから完全に低いアルトボイスに変わった。と言うかアルトボイスからは抜け出せないのかこのオトコの娘は。

「—悪かった。」

暗くなった目と低くなった声の意味が察せられ、龍崎は真摯に謝った。

「すまん、傷をえぐった。」

どうしようもなくなった龍崎はとにかく謝った。気まずそうに、悔いているかのように。

「......。構わん。もう......。」

頬に、一筋。流れた。

—涙であった。葛城は、泣いていた、声もなく、無言で肩を震わせていた。

「っつ......。」

その光景を、ただ見ていることしかできなかった。何もできない。桜井も、目を伏せ黙っていた。


「まだ、あの事件のこと忘れられないのね。」

会議散会後、桜井は本部に戻る通路を歩いていた。中央エレベーターを地下まで降り、何本かエレベーターや通路を乗り継ぎ、ここに至る。通路は上と違い、金属製のもので近未来感があった。カンッ、カンッと靴音が響く。

「楓ちゃん......。」

桜井は、不意に暗くなった。

今でも思う。私のせいなのだ、と。味の悪い後悔は、いつまで経っても残り、心を蝕んでいく。当人なら、どれだけの事か。計り知れない。

次回、楓の過去の一片に触れられます。予定です

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