なんで俺らなんだよ
赤城に例大祭行かないかと誘われた龍崎奏。さて、どう返すか。
ってことは置いといて。最近毎日投稿してるからそろそろ執筆が追いつかなくなりそう。
大目に見てくださいm(_ _)m
一章 03 なんで俺らなんだよ
「...龍崎?」
我を忘れたかのようにボーッとしている男―龍崎奏に、葛城楓は呆れ半分で声をかけていた。
「...おーい。聞こえてるか?大丈夫か?」
何度か顔の前で手を振ったり拳銃の銃口当てたりしてるが無反応。うーむ、どうしたのか。
防衛省本庁に来た時から上の空だったがここまでとは。
「あら、龍崎君大丈夫?」
ひょっこりと部屋のドアの外から顔を出した女が1名。桜井咲夜であった。
「本庁来てからずっとこうなんだ。こいつ」
桜井の方に振り返りジト目で言った。やはり髪が長いせいか、女に見える。
「...何かあったのかしら。」
きょとんとした顔で桜井は言い、龍崎に近づく。
「......。大丈夫?」
龍崎の眼前で手を振ったり話しかけるが、先と同様無反応。
「.....ちょっと強硬手段に出てもいい?」
何度か試したが無反応をキメてる龍崎に痺れを切らしたのか桜井が急に冷たい声と目で言った。
「あ、あぁ。」
なんだかわからないが危機感を覚えた葛城は冷や汗と共に言うしかなかった。
桜井は不意にトントン、とステップを踏み始めた。足を前後上下にぴょんぴょん跳ねさせスーッと息を整える。
「―てりゃ!!」
刹那、瞬足での回し蹴りが決まった。拳法の構えから唐突に右足を扇を描くように回し、龍崎の左肩から首に決定打が入った。その際、スカートがふわりと揺れたが見なかったことにしよう。うん。
「ぎゃああ!?」
黄昏の世界、黄金に輝くその世界から強制的に帰還させられた。
延髄付近に激痛が走り、ふと我に返った。
ここは...。葛城の部屋か。と、周囲をキョロキョロする。そして、眼前に二名程佇んでいた。
「やーっと戻ったか。」
少し低いアルトボイスが頭上から聞こえる。聞きなれた声、葛城か。
「だ、大丈夫...?やっといてなんだけど。」
大人びた清楚な声、桜井さんか。ん?やっといてなんだけどって、何を?
「俺は...。」
「何をずっと黄昏ていた?会議あるから呼んだのに来てからずっとこうだった。何かあったのか?」
葛城はため息を吐く勢いで言った。一見すれば冷たく対応されてると思うのかもしれないが長年付き合いがあると、あぁ、照れ隠しか。とも思える言い回しをしていた。草生えそう。
「あ、あぁ...ちょっとな。」
なんで黄昏てたのか微妙に分からないが、とりあえず神妙に頷いてはおいた。
「ところで―」
ずっと首が痛いんすけど。と言った時、桜井の顔が引き攣り、「ひっ...。」と軽い悲鳴が上げられた。何故。
「ご、ごめんね...龍崎君。ちょっと...起こすのに...強硬手段を―」
とてつものく慎重に言葉を選びつつ桜井は一言一言話す。その顔は、滝のような冷や汗、後ろめたそうに真っ青な顔色になっていた。
「要するに、桜井お得意の回し蹴りをゼロ距離から喰らったんだ、お前は。」
「楓ちゃん!?」
それ言っちゃダメなのにぃ!と桜井が可愛げな抗議を言葉で言いつつその行動は正反対であった。
桜井は思い切り葛城に拳法を喰らわせようとしていた。回し蹴りやら裏拳等々。狂気じみた拳法が飛んできてるが、葛城はため息を吐きながらのらりくらりとかわす。かわす。桜井の拳法が遅いのではない。通常と言うか、普通の打撃レベルの速さ。が、それをかわす葛城ほ方が数倍早い。のらりくらりと交わすように見えて、絶妙な位置で拳法を紙一重級のタイミングで交わす。頬に拳で切ったそよ風が当たる。
「...桜井、遅い。」
不意に葛城が残像も残らず桜井、龍崎の視界から消えた。
「―!?」
刹那、消えたと思われた葛城は気付かぬ間に桜井の背後を取り右手を彼女の喉元に置いていた。
...相変わらず規格外な動き。
龍崎は何故だか慣れ親しんだ風景を見るかのような目をしながらその無謀な光景を見ていた。
しばらくして、桜井の体力切れで葛城の勝ち。桜井はぜぃぜぃと息を切らし片膝付いているが、葛城は息一つ乱さず片膝ついて息切らした桜井を上から「なんだこんなもんか。」と言う目で見ていた。完全に余裕の表情であった。
「さて、龍崎も戻った事だし、本題に入るぞ。」
早くしろ桜井、とまだ息を切らした不安定な桜井をソファーに座らせパソコンを操作させた。鬼畜かお前は。
「とりあえず、今年もまたやる事になった。」
葛城は唐突に、嫌々そうに話し始めた。一人掛けソファーに腰を深く落とし、座った。
「来週から、今年も例大祭が開催される予定よ。」
と桜井はパソコン画面をこちらに向けた。そこには、「例大祭」と太ぶとと筆で書かれた生き生きとした文字が目に入るホームページであった。そのお祭りの公式サイトらしい。
「日本最大の祭りだからねぇ、その分危険も多い。ま、毎年やってるし言わなくてもわかるよな?」
葛城は眉をひそめ困ったかのように言う。まぁ、実際困り事ではある。面倒なのだ。
つまりほ、その例大祭の警備を我々治安保安課が一任され行う、という事なんだが恐らく疑問が湧いたであろう。
何故「治安保安課」なのか、と。別に警備位なら警察でもいいだろうと思ったであろう。無論、警察も一部出動している。ただ、あまり使えない。いや、使えないというか...使えない。
第一に、拳銃発砲に許可(勿論治安保安課も一応許可制ではあるが。)が下りるのに何時間かかることか。保安課は元より対テロ組織であるからほぼ状況に応じ下りるというかであるから万が一の使い様は楽である。
それだからか、警察よりも治安保安課の方が警備等にも使えるとかという奇妙な評価となっている。無論、世間一般からしたら「警察」として名が通っているのだろうが。中身は別モンだ。
......、なんで本来は裏側の存在の我々が使われてるんだろう。
「ま、いつもの事だから、これも言わなくてもいいだろうが。任務でも友人や恋人との祭りに行くだのの約束ならそっちを優先してくれ。警備は警備でも潜入みたいなもんだから。」
気楽にやりゃいいのよ、と葛城は飄々と言う。
次回は、男にとってはサービス回かもね。じゃ、また明日(か今夜)