「魔術師」
前回の02を二分しただけです、中身変わってません。単なるカサ増しですはい。4話、近日出します。
一章03 魔術師
かれこれ一時間後
―そこは、都内よりかなり離れた郊外。周りが平地に囲まれた土地に一軒、外見は工場を思わせる建物に数十人、人がいた。
「こちら零、目標ポイントΔに到着。」
少し低いアルトボイスが、物陰から聞こえてくる。
『了解、こちらα。目標ポイントγ到着。』
『了解―』
無線を介し各隊が報告していた。
「全隊目標ポイントに着いたわね?本部指示と現場零課の葛城一佐の指示に従って。じゃあ―」
防衛省のとある1室にて、ある作戦の指揮を行っていた。薄暗い中、煌々と各モニターと中央にあるモニターが光を放っていた。
職員が右往左往しつつ仕事をこなし、オペレーターがヘッドセットを介し何か指示を飛ばしている。
そんな中、部屋中心に1人女性が佇んでいた。その視線は真っ直ぐ中央モニターに向けられ腕組みをし仁王立ちでいた。
『桜井―』
不意に、部屋に取り付けられてたスピーカーが鳴り声が聞こえた。少し低いアルトボイスであった。つまりは―
「楓ちゃん?どうしたの?」
『こちらは全隊配置クリア、出撃命令を出せ』
中央のモニターから現場に飛ばしたドローンを介し現状をリアルタイムで把握でき、今は楓ら各隊が再拡散した後に物陰に隠れつつ攻撃の機会を伺っていた。
「了解、零より警報庁の殲滅戦を開始して。後は現場の楓ちゃんが指揮をとって。」
『了解。』
葛城楓は、いつもの長い髪を束ね後頭部にかんざしで乱暴に止めて短くしていた。
「よし、我々零より敵基地に侵入する。αはその援護、他隊は現状待機。」
純白にも似たコートを羽織り、葛城含めた零が動き出した。物陰から建物の入り口近くまで歩み寄り武器を構える。刀と言うか、長方形の剣だった。葛城は隊員にサインを出し、突入準備を整えた。
無線で他隊にも突入タイミングを合わせその時を待つ。
—その時だった。不意に建物上部から爆音と煙が見えた。同時、爆煙内から地上に誰かが葛城らがいる付近に降りた。
「—っつ!?」
本能的危機を感じたのか、それをいち早く察した葛城は咄嗟に建物の壁をバネとし構えていた剣を出し相手に斬りかかる。
「っらあ!」
瞬足で繰り出された攻撃、壁と敵の手前の地面、敵の斜め後方の地面を瞬間的に蹴りあげ、弾丸の速さで敵の背後に回り込んだ。普通なら避ける否気づく暇なく直撃するものだ。
だが—
相手はそれを紙一重で止めた。黒のコートに隠れてた右腕を使い剣と交差し腕が軋む中、葛城が放った瞬足の攻撃を止めていた。腕に甲冑に似た鎧を身につけていたから、そのまま受けとめられていた。多少傷はついているが。
「貴様...。『塔』のリチャードか!」
葛城は目を丸くした。葛城の攻撃を止めた相手、リチャードと言う男は葛城をみてニヤリとほくそ笑む。金髪で隆々しい外人っぽい印象が思い浮かべられた。
「久しぶりだな、『死神』...否、葛城。」
渋い顔つきでリチャードは言う。一瞬誰かと間違えたのか片眉をあげた。
「貴様がこんな所にいるとは、一体どういうことだ?上層部のくせに。」
葛城は片目を閉じ、依然として止められている剣に力を込めつつ言う。
「たまたま作業をしてたらお前らがきたんだよ—っと!」
リチャードが腕を振るい剣を弾く。葛城も瞬時に間合いを取り剣を構え直す。それと同時、周囲の隊員がリチャードを取り囲み銃口を向けていた。時間稼ぎがうまく働いたらしい。
「おっと、動くなよ?『塔』お前は既に包囲されている。抵抗はするな。」
葛城はコートの懐からもう一本、折りたたみ式の剣を取り出し展開させた。それは日本刀のように剣先が伸び、刀身が長くなった。
「君らお得意の二刀流、か。面白い。」
すると、リチャードは両腕を下にやり、コートから何かを取り出した。それは二本の筒であった。両手に持ち勢いよく振りかざすと、葛城の剣同様展開された。
「『塔』、お前も二刀流派だったけか?似合わないもんだな。」
嘲笑並の物言いで葛城は言う。馬鹿にしている感が満載であった。
「ふふ、そうか?俺自身は結構いいんだがな—っ!」
刹那、両者の姿が消えると同時に四本の剣が火花を上げ交わった。交わった衝撃波が周囲に拡散した。両者、いつの間にか間合いの中央で剣交差させ睨み合っていた。
「へぇ、流石。」
リチャードはニヤリと不敵に笑い剣を弾き距離を取り再度向かった瞬間剣が交わる。火花、衝撃音、火花、衝撃音。複数回音が聞こえた。両者、残像が残る速度で移動し斬りあっていた。音と衝突タイミングが合わないのは気のせいだろうか。
「嘘だろ...。」
取り囲んで見ていた隊員の一人が呟いた。
「もしかして、お前初めてか?」
横で感心しつつ見ていた、α隊の隊長、レイベがその隊員に聞く。隊員は呆気に取られつつ頷いた。レイベは、ニヤリとほくそ笑み、自慢するかのような口調で語った。
「こんな逸話、聞いたことないか?―『絶対無欠の死神』」
その言葉に、隊員の目が丸くなった。
「葛城一佐の事だよ。あの人の力は人間を遥か上回る。おまけに―」
現在もなお高速で剣を打ち合う二人を見て、なお続けていう。
「いい加減、《斬られてくんないかな》!?」
高速移動最中、不意に葛城がルーン語で呪文を唱えた時周囲から炎が出現してきた。
「魔術!?」
想定外の事に、レイベの語を聞いていた隊員だけでなく周囲の隊員もざわついた。
「君らも魔術の存在くらいは知っているだろ?葛城一佐は―あの人は、『魔術師』だ。」
世界最高峰レベルのな。
「おいおい!?近距離でその魔術使うなよ!?」
近距離で舐めるような熱と共に出現した炎に危惧を察知しリチャードは炎を見ただけでそれが何なのか判断し剣を弾き速攻で距離をとった。
黒魔『ファイア・エイト』
自身の手足の如く出現した炎を扱える軍用魔術。通称A級軍用魔術。本来は高熱の為自身より遠くで発動し動かすものだが、先の即興改変時に自身に向けられる炎の強さを減らしたから受ける影響は少ない。
「逃すか!」
葛城は出現している炎を手足のように操りリチャードに向け放つ。放つ。龍の如く炎は踊り、リチャードに向かう。
「チィ!?―俺は魔術、《得意じゃないんだがな》。」
単節詠唱の即興改変で起動した黒魔『アイス・ピック』
弾丸のような小さく鋭い氷の柱と丸太のような大きい柱を幾度も出現させ相手に当てる遠距離用の魔術。同じくA級。これは近距離遠距離両立用で便利な代物ではある。
リチャードもルーン語を唱え氷の柱を出現させた。葛城の炎を丸太氷柱で防ぎつつ弾丸氷柱を葛城に向け放つ。名の通り弾丸並みの速さで来るものだから剣で防ぎつつ回避するしかない。魔術じゃ速度に間に合わない。
「—っつ!」
身を低くし無理やり回避し続ける。地面を蹴り地面スレスレで移動する。時々頬やコートにかすり切れる。
「一佐、一旦引いて!」
援護のα班、班長のレイベが葛城に叫ぶ。その手にはアサルトライフルが持たれ、銃口はリチャードに向かれていた。
「おいおい、冗談だろ!?」
銃口に気づいたリチャードの注意が途切れた。弾丸の連射がやみ、葛城が即座に引いた。
「―っつ!」
トリガーを引き連射する。弾丸は一直線にリチャードへ向かった。
リチャードは驚愕に目を剥きつつ迫る弾丸の嵐を防ぐ為背後に構えてあった丸太氷柱を前にやる。
―刹那、鉛玉と氷が正面から衝突した。ガラスが砕けるような音が響き、氷が粉々になり鉛玉が地面に落ちる、軌道をずらされ地面に刺さる。
「―っぐ!?」
大半は回避したが少し、数発だけリチャード本人に当たった。左太腿と右脇腹。黒のコートの上からでは分からないが、地面に滴る血痕を見て確信した。
―直撃した、と。
「貴様ら...。」
呻いた声でリチャードは歯を食いしばりつつ言う。脂汗が流れているのか、苦痛に悶える表情が伺えた。
「動くな、『塔』。今度は斬る。」
葛城がリチャードの完全包囲区内に入り、左手で構えている。右は指鳴らしの準備をしていた。何用だ?
「―っち!『舐めるなよ』!」
ルーン語を唱えた直後、周囲に魔法陣が展開され刹那、それが煌々と光り輝いた。
「っ!?」
―閃光弾!?
黒魔『フラッシュ・ブレット』
魔法陣自体が閃光弾の役目を果たす臨時用の回避魔術。普通の閃光弾同様だからどちらでやろうが大して変わらないが不意をつくなら魔術が便利ではある。
想定外の事に対処しきれず、葛城含めた隊員全員の目が瞬間的に使えなくなった。
「また会おう、葛城。」
リチャードが声高らかに叫ぶ。その姿は未だ確認出来ないが、魔術的感覚でどうにかその位置と距離を把握する。直前に張っておいた結界が役に立ったか。
「『逃がすか』!」
葛城が即興改変で魔術を展開させた。構えてた右手を鳴らし、目を剣を持った左腕で覆いつつ右手を前方にやり人差し指を前にする。指先から小さな魔法陣が出現し急速回転後連射された。紫電の雷弾。閃光が数閃―それの連続起動
黒魔『スプリング』
濃縮された電撃を弾丸に似た形で射出されるA級軍用魔術。即興改変や状況により威力が跳ね上がったりする。通常時でもある程度の厚みがある壁なら貫通する。
連続起動は文字通り、同じ魔術の連続展開。主に攻撃魔術に応用される事が多く起動も早い。
葛城は閃光弾の影響で目は見えないが、感覚のみで魔術を放つ。連続起動で放たれた雷弾は閃光と化しリチャードの周囲に着弾する。
「うおっ、『スプリング』かよ!?危ねぇな。」
着弾直後リチャードが驚き飛び上がりつつ叫ぶ。
「外さん!連続起動」
ぼやけつつも目が見えるようになってきた葛城が右手のひらをリチャードに向け、そこから連続で『スプリング』を起動させ、撃つ。今度は手のひら程の魔法陣が出現し連続で放たれる。
「うぉぉい!?」
リチャードはひらひらりと紙一重でそれを交わしつつ逃げるように呪文を起動させた。
「『神秘に秘める力よ・今解放されよ』—!」
短縮系二節で詠唱された呪文が起動した。途端、リチャードの体が見えなくなった。
否。見えなくなったのではない、高速移動したのだ。霞むように、閃光の一線のように、リチャードは走る、高速に走る。
黒魔『ライト・ハイ』
自身の身体能力を瞬間的に急向上にさせる魔術。発動後は動きが極端に遅くなったり術者に多大な負荷がかかる。それもそのはず、自身が限界と線を引く身体能力の枷を外しそれを上回る能力を無理矢理に出すからだ。体に大きな負担となりそれが後々に影響を及ぼす。ちなみに、先は短縮だったが本来の詠唱は『我・その内に秘める力・今解放すべし』という三節詠唱。だが長いから基本二節短縮にされている。
「当たらない!?」
未だ視界がはっきりしない葛城が連続起動で『スプリング』を放ちまくる。が一向に当たる気配がない。高速すぎて狙いが定まらないせいだ。
「『まだだ』!」
その改変一節で複数の魔術が同時に起動した。違う要素の魔術。
黒魔『ファイア・カノン』
黒魔『ラビット・プラズマ』
黒魔『ウォーター・ウォール』
黒魔『イグニション・レイア』
どれもS級魔術。高度な魔術を四つ同時起動。極太の炎が、波打つ電撃が、水の壁が、星をも消す質量の魔術が。同時にリチャードに向け射出された。
「ウッソだろお前!?」
完全に予想外の絶大な攻撃に驚愕の声が叫びとなり出た。
コンマで到達した魔術は瞬間―轟、と一帯を轟かせ、爆煙が吹き荒れる。閃光弾の効力も爆風と共に切れコートがはためく。
「くっ...!?」
あまりの強風に、周囲の物は全て吹き飛ばされ、隊員の一部も吹き飛ぶ。レイベや葛城は、緊急用にと地面に深々と刺したアンカーによりどうにかその場を維持することが出来ている。が、そう長くはもたない。剣も刺して使い体制をどうにかもたせる。
―爆風が止んだ時、土煙が舞っているが周囲を見たら地獄絵図であった。直撃したと思われる爆心は大地に亀裂が入り、深く深く刻み込まれ、抉られていた。
が、リチャード―『塔』の姿が見当たらない。その時、葛城は確信した。
—逃げられた。と
土煙が晴れ視界が戻った葛城は無言で歯がゆい表情をした。
「すまない、桜井。」
無線で桜井に敵を逃した事を伝えた。
『構わないわ。それより、皆無事?大丈夫?』
「あぁ、怪我人等はいない。『塔』の代わりに一部の警報庁職員を逮捕した。これから帰投する。」
『了解。帰りも気をつけて。』
優しげな桜井の一言を聞き、葛城は無線の通信を終了させた。葛城は風が吹きつつ、乱れる髪を抑え遠くを見た。風景を楽しんでいるのではない。その目には、親の仇のように鋭く、睨まれていた。
変わってないので、すいませんね。