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リスタートとリプレイ

龍崎奏編

序章 前日談

時にして2020年、7月中旬。防衛省治安保安課、1課主任である龍崎奏は深夜にも作業をしていた。

「終わらない…。」

パソコンや書類と格闘すること数時間。依然積み上がった書類の柱は減ることなくつまりは仕事も減ることはない。

「結構溜まってるな。」

唐突に声が聞こえた。少し低いアルトボイスが。この主任室にいるのは、分かりきっている。龍崎は書類に向けてた目を前方へ向け前にいた人物を一瞥した。

——その人物の髪は長く、後ろで束ねていた。手入れの行き届いてる髪で櫛がさらりと通りそうな黒髪長髪。顔の輪郭はアンティークドールの様な華麗さがあり肢体は、微かな膨らみが見え腰回り、脚にかけての脚線美が目立つ。総合すればまさしく美人。この場合は美女か。

「大丈夫か?龍崎」

その少女は机の前方にあったソファーに座り優雅に休んでいた。

「心配してるんなら手伝え。」

忙しさのせいでやけになってたのか、少し強めの口調で龍崎はその人物に言い放つ。だが、少女は飄々とした風体で応じた。

「生憎、他署の仕事を手伝うわけにいかないの。お前も知っているだろう?」

右人差し指を口に当て左目を閉じ、右で応じた少女。行動の一つ一つが可愛い。

「…。なら、帰れ!」

龍崎は一喝して、その少女を怒った。邪魔するなら帰れ、とも付け足す。

「そんな寂しいこと言わないでよ、龍崎。ま、このままじゃほんとに終わりそうにないから手伝わなくないけども?」

ひょっこりと机の前にやってきて書類を覗き込む。前方に落ちてきた横の髪を耳にかけ、長い後ろ髪のゴムを解きつつ少女は物優しげな目を向け言った。

「…頼む。」

龍崎はその光景に呆然とした後、間を置き素直に少女に頼んだ。少女はこの上なく可愛い笑みを浮かべ一言。

「わかった。明日学校なんだから程よいところで切り上げろよ?」

と警告し少女は机に乗ってた書類の半分を奪いソファー前にあった机に乗せ手慣れた感じで書類を捌いていった。

それは、日付変更を跨いだ、24時の事だった。主任室に二人、黙々と作業をしていた。

「―終わったか?」

いつだろうか、はっきりと分からないのは頭が働かない為だろうか。卓上には積み上がった完成と未完成書類。コーヒーの空き缶数本、翼をさずけるドリンク数本、飲み散らかされてあった。それに濃厚な睡魔が襲ってくる。そんな過酷な中、先の少女は問いを投げてきた。顔を上げ少女の方を見た。

「まだだ。中々終わらん...。」

途方に暮れたように龍崎は背伸びをし休憩した。休憩ついでにコーヒーを買ってこようとして少女―葛城楓から注意を受けた。

「おい、さっきも買ったじゃないか。忘れたのか?」

その言葉にハッとした。そうだった、さっきからコーヒーやら翼ドリンク買いに自販機を往復しまくっていたのだ。

「あぁ...そうだった。」

本当に忘れてたのか、龍崎の顔が驚愕で固まる。それを見た葛城ははぁ、と呆れ半分でため息を吐いた。

「龍崎、もう休め。それ以上書類処理するな。」

大事を見てか、葛城は仕方ない感豊富に龍崎にそう告げた。

「いいのかよ...?」

想定外の事に龍崎は目を白黒しつつ返す。

「ここで体を壊されても困るからな。休め。」

葛城は素っ気なく言うが言葉の端々に気遣うような口調で語りかける。

「じゃあ、一佐のお言葉に甘えて。今日は帰るわ。」

「そうしてくれ。そんな顔色悪そうにいちゃこっちまで具合悪くなるわ。」

葛城は手をブンブン振り、虫でも払うかのような行動をした。どうやらそんなにここにいられちゃ困るらしい。

「でも、お前はいいのかよ?」

帰る支度をしてる最中、龍崎からそんな問が来た。葛城は相変わらずソファーで残り書類を片付けながら聞いていた。

「私はほら...大丈夫だろ。どうせ毎日本庁だし。」

缶コーヒーを傾け中身を煽り言った。

「そうか...。じゃあな。」

葛城に背を向け、龍崎は出口へと歩み出した。

その時、おう、と背後から少し低いアルトボイスが耳に入ってきた。

龍崎は振り向かないまま片手を上げ、手を振った。

―だが、帰るのが遅すぎたのか時刻は既に早朝四時。所によっては小鳥が囀っていた。

「..............。」

たっぷりとした沈黙の後

「はぁぁぁぁぁぁ!?」

龍崎奏は驚愕という感情を精一杯喉を通し伝えた。その叫び声に優雅に鳴いていた小鳥が一斉に飛び去ったのは言うまでもない。

「―なんだ、もう朝か。」

葛城楓は、本庁エントランスで起こってることなどつゆ知らず部屋から見える東京の風景と朝日に目を細めていた。

解かれていた髪を縛り直し、ソファーへ行きついた途端座る前に高速で倒れた。うつ伏せのまま横になり意識を途絶えさせた。

これが後に密室殺人事件(?)騒動に繋がるものだった。


というかこうして寝顔を見たら、アンティークドールそのものだった。可愛い。最高。うぇーい

「うっさい黙れ。」

目を閉じたまま、葛城は言う。可愛らしい寝顔で若干呂律が怪しいが、確かにその言葉には怒りが感じられた。

.......、すいません。おやすみなさい。


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