徹夜の代償
食事も軽く済ませて、俺達は再び遺跡探索を開始した。
しかし、周囲は森だらけ、そんな簡単に見つかりはしないだろうな。
「広大だね・・・」
「まぁ、そうだろうな、かなり深い森だしな」
「くぅ・・・せめて平原に出れたらなぁ・・・」
「ハンモックが掛けられないし、出来れば森が良いな」
なんせ、眠る為の道具なんてハンモックしか持ってきてないし。
後は重いからな、テントを作っても、収納スペースが無いし。
「ハンモックしか無いの?」
「ハンモックしか無いな、後は荷物がかさばるからな」
「まぁ、そうだよね・・・遺跡の道具を集めて持ち帰るときとかに荷物が多いとね・・・」
「そういうことだ、さ、ちゃっちゃと進もう」
「そうだね、遺跡、見つかれば良いなぁ・・・」
俺達はその後も地図を書きながら先に進んでいった。
にしても、この紙もそろそろ地図を書く紙を変えるか。
もう、これで3枚目だな、やっぱり地図ってのは紙を消費するもんだな。
あまり無いのに・・・まぁ、地図が無いと迷うし、多少の消費は目を瞑るしか無いか。
「兄ちゃん、やっぱり遅いよ」
「仕方ないだろ、地図を書きながら進んでるんだ、許せよ・・・」
「まぁ、そうだけど、何だか1日目よりも動きが遅いんじゃ無いの?」
「・・・そりゃあ、寝てないし」
「そう言えばそうだったね」
何だか分からないが、無駄に上がっていたテンションも今は沈んで眠いんだよな・・・
あのテンションが1日中続けば良いのに・・・あぁ、そうなったら眠れないな。
それから更に数時間が経過した、ま、まぶたが凄く重たいと感じてしまう・・・
「・・・」
「兄ちゃん?」
「・・・・・・」
「お兄ちゃん?」
「・・・・・・・・・」
「兄ちゃんってばぁ!」
「おわぁ!」
大きな声が聞えて、俺は大きく後ろに飛び下がった。
び、ビックリしたぁ、心臓止まるかと思った。
「はぁ、な、なんだ? 大声出して」
「兄ちゃんが動かないから・・・あと、地図が変な感じだよ?」
「え? お、おわぁ!」
俺はミスして地図に変な線を入れてしまっていた、何かスゲー波打ってる。
それに、少しずつだけど、地図のミスも酷くなってる・・・よ、読めるか?
「ヤバい、読めるか? これ・・・」
「そうだね、何となく・・・読めるかも知れないね」
「は、はぁ、そうか、それは良かった・・・読めなかったらどうなってたか・・・」
「そうだね、迷うのが確定になってたよ・・・兄ちゃん? もう寝たら?」
「寝たらって、まだ日も高いのに・・・時間が勿体ない気が」
「地図がこれ以上酷くなったら大変だよ?」
「・・・あ、あぁ、そうだな」
うーん、少し焦りすぎてたか、まさか安希に諭されるとは・・・
まぁ、無理も良くないし、少し休んでおこう。
「じゃあ、ハンモック掛けて寝るか」
「うん、それが良いよ」
俺はハンモックを近くの木に掛けて、寝ることにした。
何か、ハンモックってゆらゆらしてて気持ちいいな。
「じゃあ、俺は少しだけ仮眠を取るから、それまで見張りを頼むぞ」
「任せてよ」
俺は見張りを安希に任せて、ゆっくりと寝ることにした。
何というか、ハンモックの揺れて、少し安心してしまう。
これは、寝るときに良いだろう・・・でも、ちょっと寒いかな。
・・・・・・だけど、眠たくなってきた・・・・・・
「でりゃぁ!」
意識が無くなって、ほんの一瞬だった、近くから安希の叫び声と、大きな音が聞えてきた。
「な、何だ!?」
「あ、に、兄ちゃん! 起きちゃった!? うわぁ!」
俺が目を覚ますと、安希が筋肉がおかしいくらいに付いている人型の何かと戦っていた。
「な、何じゃそいつ!?」
「知らないよ! 兄ちゃんが寝ちゃって、ほんの少ししたら出てきたの! うわぁ!」
そいつの攻撃は、一撃で大木を粉砕するほどの破壊力だった。
あ、あれはヤバい! 安希がもしあんなの食らったら、即死じゃ無いのか?
「安希! 今援護する!」
俺は急いでハンモックから降りて、自分の弓矢を回収して、撃った。
「ぐ」
俺が撃った矢は、その魔物の膝の間接辺りに当たり、その魔物は後ろに倒れた。
「てりゃぁ!」
そのすきを突いて、安希が魔物に向って攻撃を当てた。
これで、この魔物は倒せた・・・そう思ったが、その魔物は安希の攻撃を受けても少し血が出ただけだ!
「か、硬い!」
「安希の攻撃をもろに受けて・・・ぶ、無事なのか!?」
「がぐ!」
魔物はその直後、安希に向って素早く攻撃を仕掛けた。
「安希!」
「う!」
安希はその攻撃を紙一重で回避して、なんとか助かったが・・・
この魔物、今まで会ってきた中で、い、1番ヤバいんじゃ・・・
「な、何かこの魔物、ヤバいよ!」
「安希の攻撃を防ぐぐらいだ・・・でも、なんで俺の矢はこいつに効いたんだ?」
「そう言えば・・・何でだろう」
「貫通に弱いのか? それとも間接に当てたからか?」
「分からないけど、間接の方に賭けてみよう」
「お、おい、無茶だろ!」
「大丈夫! 逃げるのは恥ずかしいから!」
そう言うと、安希はその魔物の方に走っていった。
はぁ、仕方ない、一応援護しておくか・・・この場所から狙えるのは・・・首だな。
「うりゃぁ!」
「がぐ!」
「援護する!」
俺はその魔物が腕を上げる直前に、首に向けて矢を射た。
すると、その矢はその魔物を貫き、魔物の腕の動きが止まった。
「じゃあ、私は!」
「が!」
安希は一気に接近して、剣を振るのでは無く、俺が射た矢を思いっきり押し込んだ。
「ぎがいがぁぎあ!」
そして、その魔物は激しい絶叫を残して、倒れた。
「ふぅ、何とかなったよ・・・」
「何か、恐ろしい絶叫だったな」
「そ、そうだね」
「それにしても、こいつは何処から来たんだ?」
「確かこっち側だったと思うよ」
安希は俺が寝ていた場所の反対側を指差した。
「あぁ、こっちなのか」
「うん、かなり深いよね」
そこは安希のいうとおり、かなり深い森になっている。
と言うか、そこだけ木の量が明らかに多い。
そこにだけ大量の木が生えたみたいな感じだな、いった、どうして?
「きっとこの先には何かあるんだ! そうに決まってる!」
「お、おい、あんなよく分からない場所に近寄って、魔物にでも襲われたら」
「大丈夫! きっと何かあるんだよ!」
安希はもう、俺の言う事なんて聞きそうにないな。
はぁ、こうなったら、一緒に行くしか無いな・・・
仕方がない、しっかりと準備をして行くか。
俺は安希にせめて準備をしっかりとして行くぞと伝え、一緒に準備を始めた。




