退屈な見張り
安希が眠り始めて1時間か、何も起きないと、何か眠たくなってくるな。
でも、一応火の番というやることがあるから、眠気はあまり無いんだけどな。
「ふぅ、暇だな・・・」
「じゃあ、私がお話し相手になってあげますよ」
俺が暇をもてあましていると、いつの間にか本から出てきた女神さんが目の前にいた。
一体、いつの間に本から出てきたのか・・・
「いつの間にそこに居たんだ?」
「ついさっきですよ」
「ふーん、女神って、あまり出てきたら駄目なんじゃ無いのか?」
「力を使わなければ大丈夫ですよ、そもそも、この世界は私の世界ですし」
そう言えば、そうだったな、この世界の元神様の娘さんだから、今はこいつがこの世界の神か。
何か、いっつもひょいひょいっと出てくるから、あまりそんな風には見えないけどな。
「じゃあ、街とか自力で作れば良いのに」
これは、俺の愚痴だった、正直最初は2人しか居ない状況で街を作れとかしんどすぎるからな。
今は佐奈とか華夏とか居るけど、最初はたった2人だったからな。
「最初に言いましたけど、人間の歴史は人間で作らないと駄目ですし」
「その歴史を作るのは俺達異世界人、それに、神さんはその歴史を簡単に滅ぼすわけだ」
元々、人類が滅んだ理由って、こいつの父親が暴走して消滅させたんだよな、歴史ごと。
でも、歴史ごと消滅させたんなら、なんで遺跡があるんだ? それは消せなかったからか?
何か、神様の世界ってのは面倒くさいな。
「あ、あれは、その、お父様が暴走していたからですよ、もうしませんって」
「大体、なんで俺達を呼んだ? あんたなら1件家建てて、そっから人を増やせれば良いのに」
「いや、だって私は女神ですよ? 女の子しか出せませんよ? それじゃあ、増えないでしょ?
だから、男性が必要だったんですよ、それであなたを呼んだわけですが」
「安希は何で呼んだんだ?」
「男性の方を1人だけ呼ぶのは出来ないので、安希さんを呼んであなたを巻込みました」
「・・・安希は完全に巻き添えか・・・あと、俺はこっちで子どもを作るつもりは無い」
大体、一夫多妻とか俺の趣味じゃ無いし。
どうせなら、1人の女を愛したいし・・・あ、何か恥ずかしいかも知れない。
「くぅ、何でですかぁ! 一夫多妻は男の夢って聞いたのにぃ!」
「誰から聞いたんだ?」
「お父様です、そう言った後に偶然近くに居たお母様にけちょんけちょんにされてましたが」
・・・何か・・・本当に馬鹿っぽい父親だったんだな・・・だから、こいつはあんな感じなのか。
やっぱり、神様だろうと人間だろうと、子は親に似るんだな。
「はぁ、なんだよそれ」
「あ、でも、私はどうせなら自分だけを愛して欲しいですよ? だって、二股って嫌ですし」
「その嫌だと思うことを俺にやらせようとするな」
「いや、ほら、状況が違いますし、この世界に男性はあなた1人だけ、それで一夫多妻をしなかったら
女の子同士で争奪戦が始まってしまう可能性だってありますからね!」
「無い無い、そもそも、俺のために争う奴なんざ居ないっての」
「・・・? 何でですか?」
女神はキョトンとした表情で俺を見て、そう言った。
あれ? 俺、何か変な事言ったっけ?
「え? 何その表情、俺、変な事言ったっけ?」
「何でも作れる能力、高い戦闘能力、判断力、面倒見、指示能力、行動力・・・普通に狙われますよ?」
「いや、俺そんなに能力高くないだろ?」
「自覚、無いんですね・・・そこは弱点ですね、たまに馬鹿っと」
「おい、何か居てやがる! 馬鹿とか言うな!」
「事実ですよ? 自覚症状無いですし、大丈夫です、全部客観的に見た評価ですから!」
「何が大丈夫だ! 何が!」
「そんなすぐに起こらないでも良いじゃないですか、まぁ、面白いから良いですけど!」
駄目だ、この女神・・・全く俺の話を聞こうとしない・・・
くそ、何が馬鹿だ・・・お前の方が馬鹿じゃ無いか・・・
「あぁ! 馬鹿とは失礼な! 私女神ですよ!」
「あ、聞えるんだな」
「そうですよ! 心の中で悪口言って! もう良いです、彰さんなんて、暇をもてあそべば良いんですよ」
女神さんは最後にそう言うと姿を消した、多分、また本の中に戻っていったな。
でも、まぁ、実際に暇なんだよな・・・・・・はぁ、火の番するか。
時間がたつのって、どうして暇だとこんなに長く感じるんだよ・・・
あ、空を見上げてみたら、突きが綺麗だ、やっぱり月の光は白が良いな。
青色の月なんて、正直もう2度とみたくない・・・でも、その内また月が青くなるんだろうな。
やれやれ、でも、それが今日じゃ無くって、本当によかった。
こんな状態でブルームーンの夜とか洒落にならない、絶対死ぬって。
それから数時間ほど経過した、本来はもうすでに交代の時間なんだが
安希の幸せそうな寝顔を見ていると、起こすに起こせないな・・・
仕方ない、このまま朝まで見張りをするかな・・・明日、俺、動けるかな・・・
結局、一睡もしないままで夜が明けたが、不思議とあまり眠気は無かった。
むしろ、何かテンションが上がるな、朝日って、眠気覚ましにもなるのか。
「ん・・・眩しい・・・あれ? もう朝?」
「あぁ、安希、起きたかよ」
「兄ちゃん、私を起こさなかったの?」
「あぁ、幸せそうな寝顔だったんでな」
「うぅ・・・ごめん、兄ちゃん、今からでも寝る?」
安希は俺が寝ていないと言う事に気付くと心配そうな表情で俺にそう言ってきた。
やっぱり、結構優しいんだな、我が妹ながら誇らしい。
「いや、気持ちは嬉しいが、俺は大丈夫だ、あまり眠気も無いし」
「兄ちゃん・・・無理しないでね?」
「大丈夫だって、さて、さっさとハンモック片付けるぞ、お前は料理頼む」
「うん、分かった」
そして、俺はハンモックを片付け、安希は料理を作った。
さてと、飯食ったら遺跡捜索か、さてはて、見付かるのだろうかね。




