ガラスの完成
さて、ガラスを作るとするか。
確かガラスはこの材料を高温で溶かし、固めるんだったよな。
鍛冶の経験は昨日したし、そこは出来るだろう。
「・・・熱いな」
ガラスを溶かし、それを固めるのは本当に熱い。
刀と包丁を作っているときもそうだが、もう少し楽に作りたいな。
こう、材料が揃って、その状態で手をかざしたらはいできあがり、みたいな感じで。
・・・もしかしたら出来るかもしれない、試してみよう。
「よし」
俺は試しに手をかざしてみた、しかし、まぁ、当然何も変化は無かった。
うん、分かってた、だってそんな感じで出来るんだったら女神さんがこの機材を持ってきた理由はないし。
「兄ちゃん、何やってんの?」
「おわ! い、いつからそこに!」
後ろから声がして、そこを振り向いてみると、安希がいた。
恥ずかしいところを見られてしまった、いや、もしかしたら見てないかもしれない。
「よし、って呟いたときに、なんでそれに手をかざしてんの?」
うん、もろに見られてた、何だか恥ずかしい。
「あ、いや、もしかしたらこれでガラスが出来るかなとか思って」
「そんなわけ無いじゃん」
「分かってる、と言うかついさっき確認した、うん、そんなにうまい話は無いよな」
「そうそう、まぁ、頑張ってね、ランタンは私も欲しいんだからさ」
「あぁ、で、なんで見てるんだ?」
「兄ちゃんが心配でね、はい、お水、汗がすごいよ」
安希は俺に水を差し出してくれた。
「あぁ、ありがとうな」
「じゃあ、少ししたらまた持ってくるから、兄ちゃんは自分の体の変化に疎そうだし」
「あはは・・・そうだな、それがありがたい」
そう言い、安希は扉を開けっ放しで何処かに行った。
まぁ、この方が良いよな、俺も涼しくなるし、向こうはこの部屋の熱気で暖かくなるし。
でも、臭そうだよな、開けっ放しだと、溶かしてるわけだからな。
「さて、頑張るかな」
それから、それなりの時間がかかり、ようやくガラスが完成した。
ランタン用のガラスも完成させることも出来た、穴を開けるのが結構しんどかったな。
でも、穴を開けないとランタンの火は消えるし、仕方ないだろう。
「さて、完成だ」
「結構作ったね、と言うか、そのランタンはどう使うの?」
「あぁ、このランタンは裏の方に開閉口がある、ここでロウソクを変えたりするんだ」
「ふーん、と言うかランタンって初めて見たよ」
「もしかして、知らないのに楽しみにしてたのか?」
「うん、明るくなるって聞いたからさ」
安希はランタンを知らなかったのか、あまりそういうのに詳しくないとは思ってたが・・・
まさかここまでだったなんてな、でも、まぁ、良いか。
「これは全員分用意してある、あと3つほど余分にな」
「なんで3つ余分に作ったの?」
「これから住民も増えてくるだろう? だからだよ」
「あぁ、そうだったね」
「じゃあ、安希、これを佐奈に渡してくれ、俺は華夏にこれを渡すついでにあっちの家に窓を張るから」
「はいはい、任せてよ」
そして、俺は華夏の家に入り、窓を取り付けた、窓用の穴を開けていて良かった。
完成したガラスも理想的なサイズだし、取り付け工事は結構簡単にすんだ。
「よし、これで寒さは凌げるだろう」
「ありがとう、寒かったんだ」
「そうだろうな」
「それと、この窓と言うのは開け閉め自由なのか?」
「あぁ、そういう風に作ったからな、それにさっき試したときも上手くいったし」
「すごいな」
そして、俺達の家にも同じ様に窓を貼り付けた、後は網戸でも完成させれば完璧だが
しばらくの間はそれは良いだろう、夏までまだまだ先だからな。
「よし、これでいいか」
「外が見えるのに風を感じません、すごいですね」
「ガラスだからな、風を通したら意味が無いだろう」
「ガラスって何ですか?」
「そ、そうだな、透明な壁とでも思っててくれ」
「へぇ、透明な壁ですか、すごいですね!」
そして、その日の夜のことだった、普段からは感じない、嫌な気配を感じた。
でも、勘違いだろう、そう思いながら寝ようとしたときだった。
「兄ちゃん! 大変だよ!」
「何だ? そんなに騒いで」
「月! 月がすごいことになってる!?」
「ん?」
安希に言われ、俺は月を見てみた、すると、その月は青くなっている。
「何だあれ!? 赤ならまだしも青って!」
「何だか嫌な予感がするよ、佐奈を連れて華夏の家に行こう!」
「あぁ、そうだな、こういうときは固まるのが無難か」
そして、俺達は佐奈の部屋の中に入った。
「佐奈!」
「どうしたんですか?」
「あぁ、何だか嫌な予感がする、華夏の家に行くぞ!」
そう言い、俺は佐奈を引っ張り、華夏の家に走った。
「え!? どうしたんですか!? 私は今から寝ようと思って」
「華夏の家で寝て! さぁ!」
「え!? え~!?」
そして、俺達は佐奈を引っ張り、華夏の家に走った。
「ここならまだ安心かな、あっちよりも」
多分、安希は木造の家よりも石造の華夏の家の方がまだ安心出来る、そう感じてるんだろう。
「何だ? 騒がしいな、こんな時間に来るなんてどうしたんだ?」
「月が青いんだ、こんなこと、今まで無かった」
「月が青い?」
そして、華夏は月を確認した、すると、俺達と同じ様に驚愕している。
「確かに青いね、それに嫌な予感もする、なるほど、だからこっちに」
「あぁ、木造よりは石造の方が頑丈だろうしな」
「それもそうだな、じゃあ、最大限警戒しておこう」
「何も無かったらどうするんですか?」
「それはそれで良いだろう、でも、何かあってからじゃ遅いからな」
「確かにそうですけど」
そして、俺達が華夏の家に避難して、少し経つと、女神さんの声が聞えてきた。
{あぁ、もう避難してますね、良かった}
{何だ? 何処からだ?}
{あなたの頭の中に直接話しかけてます、一応女神ですから出来ますよ}
{ふーん、そうなんだ}
{良いですか? この声が聞えているのはあなた方2人だけです、あの2人には聞えてません}
まぁ、脳に直接語りかけてるんなら当然だろうな。
でも、なんで佐奈と華夏には聞えないようにしているんだろうか?
まぁ、それは分からないが、多分重要な事なんだろう。
{良いですか? この月はブルームーンと言います、この世界特有の現象です}
{そうなんだ、それで、どんなことが起こるの?}
{この月が出ると、魔物が活発に行動をしてしまいます、例え家の中だろうと容赦なく
攻撃を仕掛けてくるでしょう、ですので、何とかしてこの夜を生き残ってください}
{手伝ってくれないのか?}
{はい、それは無理ですね}
あぁ、俺達の力だけで何とかしないといけないのか、しかし、一応今回の判断は良かったな。
1カ所に纏まっていれば戦いやすいし、守りやすい。
もっと街の規模がデカくなった場合は多少はばらけた方が良いが
今の状況では1カ所に纏まるのが良いだろう。
まぁ、今はこのブルームーンの夜を生き残ることだけを考えよう。




