鉄鉱石の加工
洞窟から沢山の石炭を回収して、家に帰ると、当然、安希に怒鳴られたりした。
しかし、殴ってくる、というのは無かった、そこは良かったな。
そして、俺はその石炭を使い、加工をする事にした。
「あぁ、散々な目に遭った、でも、まぁ、石炭もあるし、鉄鉱石もある」
燃料は十分だ、俺は鉄鉱石から鉄の部分をなんとか掘り出した。
手法や方法は分からなかったため、とりあえず、自分の直感でやったら出来た。
このスキルは本当に便利だ、知識が無くても出来るんだからな。
「ふぅ、さて、次はこの鉄を固めないとな」
鉄を固める手法、それもよく分からない、でも、それっぽい機材はある。
女神さんが俺に渡してくれた機材達だ。
とりあえず、俺は直感でそれっぽい機材を選び、試すことにした。
そして、少しして、その機材を見てみると、鉄がしっかりと固まっている。
インゴットって奴だろう、こう言う形は、すごいな、この機材。
「よし、何だか知らないが、何とか出来た」
「兄ちゃん、晩ご飯で来たよ」
「あぁ、今行く」
俺は鉄のインゴットを近くの机の上に置き、出来たらしい飯を食いに行った。
「うん、これは何だ?」
「何って、身長が伸びやすいって言う、骨を沢山使ったんだよ」
「安希、止めておけ、それはヤバいから」
安希は魚の皿には魚の骨だけが乗っかっていた。
こんなの食えるわけが無い、いや、骨は食えるが、骨だけって・・・
「止めないで、兄ちゃん、私は身長を大きくしたいの、せめて140cm位にはなりたいの」
「たかが3㎝じゃ無いか、止めておけ、酷い目に遭うぞ」
「兄ちゃんにとってはたかがでも! 私にとっては大きいの! いただきます!」
そう言うと、安希は魚の骨を口に入れた。
少しの間は食べていたが、その後、口の動きが止まった。
「どうした?」
「む・・・むぐぐぅ・・・」
そして、安希は席を立ち、そこかに走って行った。
うん、多分口の中の物を出しに行ったんだろうな。
ティッシュとかは無いから外に出しに行ったって所だろう。
それから少しして、落胆した表情の安希が帰ってきた。
「どうだった?」
「駄目だった・・・歯茎に入ってすごく痛かった」
「あるよな、魚の骨って、歯茎に入ることが」
「うん・・・これじゃあ、身長が高くならない」
もう手遅れの何じゃ無いか? と言おうと思ったが、殴られるのが目に見えている。
まぁ、とりあえず、安希の苦労が報われることは無いだろうな、うん。
「兄ちゃんは背があるのに、なんで私はこんなに小さいんだろう」
「安希さんはそのままの方が可愛いですよ」
「むぅ、佐奈は私の目標よりあるんでしょ?」
「確か143cmでしたね」
「うぅ・・・やっぱりだ・・・」
安希とは6cmも違うのか、まぁ、ぱっと見で佐奈の方が大きいのは分かるがな。
それでも安希は怒らないんだな。
「なぁ、安希はどれ位の身長の奴が怒りの対象なんだ?」
「145cm越えてたら・・・羨ましいよ・・・」
「じゃあ、私はまだ大丈夫なんですね」
「そうだね、でも143cmも羨ましいや・・・」
そんな会話をしながら、俺達は飯を食った。
魚がかなりあったが、全部骨が無く、すごく食べやすかったな。
安希の奴、いちいち全員の魚から骨を抜いて食おうとしたのか。
まぁ、その結果として、俺達は食べやすい魚を食えるんだがな。
「ふぅ、ごちそうさま」
「ごちそうさま」
「よし、じゃあ、俺は鉄鉱石の加工をしてくるから」
「うん、分かったよ」
そして、俺は作業部屋に戻った。
さて、鉄のインゴットも出来た、後はとりあえず、これを増やすか。
俺はひたすらにインゴットを加工した、だが、精々5つ位しか出来なかったな。
そこまで鉄鉱石を取れたわけじゃ無いし、仕方ないがな。
「さてと、次はこれを加工しないとな」
今度は加工だ、と言うか、なんで俺は独り言を・・・まぁ、昔からの癖だし、仕方ないが。
しかしだ、何を作るか・・・俺がそんな事を考えていると、扉が開いた。
「兄ちゃん、今良い?」
「安希? どうしたんだ?」
「実はお願いしたいことがあるんだよ」
「お願い? 何だ?」
俺は安希のお願いを聞くことにした。
「実はね、包丁を作って欲しいんだ、出来れば刀とかも」
「そうだな、包丁は欲しいし、刀も使えるだろう、よし、分かった、作ってみる」
「本当!? ありがとう! 石の包丁は斬りにくくてさ」
「あぁ、分かった」
さて、包丁と刀か、刀は鉄のインゴットを3つくらいだな、まずは固めないと。
とりあえず、この機材で試してみるか、俺はインゴットを3つ機材の中に入れた。
さて、その間に包丁とナイフを作るかな、これ位のサイズならインゴットを1本で出来るはずだ。
加工の仕方は、確かこのインゴットを平たくして、その後、熱で柔らかくする。
そして、その間に何度か形を整え、水で急速に冷やす。
俺はその手順で何度か繰り返し、包丁を作った。
「ふぅ、出来た、結構上手くいったな、にしても、ここは熱い、まぁ、仕方ないが」
「兄ちゃん、お風呂を沸かしたよ!」
「あぁ、分かった、後、安希! 包丁出来たぞ!」
「本当!?」
外からドタドタという足音が聞えてきた。
そして、扉が開いた。
「包丁は?」
「あぁ、これだ」
俺は完成した包丁を指さした。
「へぇ、これが兄ちゃんが作った包丁か~、上手いね」
「ありがとうな、後、刀の方はまだ待っててくれ、鞘も作りたいし」
「分かったよ」
安希は包丁を持って、部屋から出て行った。
行き先はどうやら台所のようだ。
安希は保存していた魚を取りだした。
「試し切りか?」
「うん、どれだけ切れるか知りたいし」
そして、安希は魚を切った、魚はすんなりと切れた。
うん、我ながら良い出来だ、これだけ簡単に切れるんだからな。
「おぉ、これは楽だね」
「あぁ、そうだな、佐奈にもちゃんと言えよ」
「分かってるよ」
そして、俺は風呂に入ろうとした、そこには紗菜の姿があった。
「ふぇ? あ、彰さん、お風呂ですか?」
「あ、あぁ、そのつもりだが・・・後で入るよ」
「はぁ、そうですか」
まさか佐奈が先に入ろうとしていたとはな、正直びくっとした。
あはは・・・安希の裸くらいしか見たことなかったんだがな・・・
はぁ、ま、まぁ、良い、ナイフの加工をしようかな。




