1章の1 -幻想郷縁起の謎の一つ-
本作品に記載されている『幻想郷縁起』の内容は、
本家様の内容とは一切関係がございません。
本作品オリジナルの内容となっておりますので、ご理解の上閲覧くださいませ。
『幻想郷縁起』
第零巻のとある一節
ある所に、自然の体現である妖精と、人間が共存しているところがあったそうな。
そこの人間は、妖精の力を借りて、それなりに平和に過ごしていたと言います。
妖精の力は非常に素晴らしいものでした。
それにより、人間は
火を、
水を、
知恵を、
道具を、
それこそ、生きるに充分な物を存分に与えられたのです。
人間達は、その力に感謝しながら、平和に過ごしていました。
この場所では、妖精と言う存在が一種の土着神のようなもので、
信仰の対象でもあるのですが、人間と共存関係にもあったのです。
人間は自然を護ることで妖精を敬い、その御返しとして妖精が力を与える。
そんな、比較的良好な関係が結ばれていたのです。
そう、少なくとも今のように、"神"等と言う存在に頭をたれながら暮らす時より、
私自身は、住みよく感じていたのです。
いつからでしょうか。
宗教戦争、と言う名の戦争で、"神"と言う名の輩の手先が、妖精を殺し始めたのは。
最初はこの場所の人間達は、共存している妖精の危機に、立ち上がり抗戦していました。
しかし、気が付けば立ち場が逆転していたのです。
神は人間を操る力でもあったのでしょうね。私にはよく判りませんが。
妖精は仲間であったはずの人間達に、次々と殺されていったのです。
最終的には、妖精はほぼ全て殺され、その力だけがその場に残っていました。
勿論人間はその力を利用しようとしました。
これまで、ずっと使ってきた力なのです。失うわけにはいきませんから。
しかし、その力は人間には強すぎました。
触れた物を狂わせ、やがて妖怪として生まれ変わったり、命を落としたりする者まで現れました。
これは歴史上大きな転換点ではあります。
……ですが、その話はまた別の機会にしておきましょう。
今の話は妖怪の生まれの話では無く、
今ここにある"幻想郷"の始まりの、始まりの御話なのです。
それ以後、人間達は、新たに生まれてくる妖精達の力を、
より強い存在、神や妖怪に信仰、畏怖と言う名の元に献上を行うことで、その力を享受してきました。
まぁ、自らは扱えませんし、当然ですね。
……しかし、妖精は無限に居るわけではないのです。
やがて、大きな力を持つ妖精が、その地から居なくなるのです。
すると、妖怪は人を食うように、神は人にこれまでの礼として手助けを行うようになりました。
今の立場の関係は、このようにして生まれて行ったのです。
きっと、これからも続くことでしょう。
……ところが
その妖精たちの中で、1体だけ。
1体だけ、人間たちが、神たちが、ついに見つけられなかった妖精がいたそうです。
ですが、妖精とは人知れず消えることも多々あるため、
人間達も、妖怪達も、神達も、
『もうその妖精は消えてしまったのだ』
そう思って、その見つからなかった"火の妖精"を探すことは、以後なかったそうです。
『幻想郷縁起』
第九巻のとある一節
稗田阿礼が最初に記した、"消えた火の妖精"の話(→第零巻○×項)から早1200余年。
その間も人間はこれまで通り"火"を扱い、
今の今まで決して"火"が無くなった時代など存在しません。
"火"の神様も存在するこのご時世ですので、
"火の妖精"は本当に消えやがったのかもしれないですね。
妖怪が人間を食うようになったけど、弾幕ごっこで負けたら言うことを聞くようになったり、
昔と比べ力が弱くなった妖精が、自由奔放になったり、
一部の神が無理やり引っ越してきやがりましたり、
時代が変わった今でも、彼女は姿を現しませんね。
幻想郷の歴史上もっとも古い事であると言うのに、
この"消えた火の妖精"の件は、いまだに解明しない謎の一つです。
炎は、昔と同じように今も、燃え盛っているというのに……
この妖精だけは、まるで消えうせた炎のように、音沙汰がつかめないのです。
誰からも、どこからも。
痕跡すら、見つからないのです。
しかし……少なくとも、私は。
この地がこの地である限り、
生命が輪廻を繰り返す限り、
"火の妖精"は、どこかに居るのではないかと感じるのです。
なぜなら、阿礼が言う通り、
彼女達はある種の土着神なのであるのですから。
しかし、私はこれを記した時、
一つだけ気付いていないことがありました。
なぜなら、今いる妖精からは考えつかないことであるからです。
しかし、それは……
人間からしたら、当たり前のこと。
もしもの話を、させてください。
あなたの目の前に、仲間を皆殺しにしたやつらが群がっている。
あなたは、昔そいつらに裏切られ、何もかもを失ったのだ。
あなたは、そいつらに対して、凄まじい恨みを持っている。
どこぞの橋姫もびっくりな程の恨みを持っているとしましょう。
そして……今のあなたは、それを皆殺しにする力を持っている。
……では、『もしもあなたがその妖精だったら、どうしますか?』
……これより後は、体験した史実をもって、記そうと思います。
東方妖精録 ~The Lost Fairy~