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同僚の落武者さん

作者: 輝夜Hikaru
掲載日:2026/05/14

さらっとふわっとストレスフリー!


 本日は晴天なり!現在の時刻は午前5時。

 



 就活中はダメダメだった俺だけど、なんとか地元のスーパーに採用が決まった。

 そして、今日は記念すべき入社初日だ。


 しっかし、朝が早いなぁ。

 俺は強い眠気と戦いつつも、この先の未来に心ときめかせていた……の、だが……。



「……ん?もう誰かいる。はやいな。鍵開けの人か?それとも……いや、まさかな」



 入社が決まって挨拶に行ったとき、ありがたいことに仲良くしてくれる先輩に出会えた。

 その先輩と昨日電話で話していたんだけど……。





 「おまえ、初日朝からだろ?気をつけろよ。ここだけの話、うちの職場は出るんだよ」


 「でる……ですか?」


 「そうそう。でるの(ニヤリ)。働き者の」





 落武者さんがなーー







 なんて怖がらせるこというからちょっと過敏になってるのかもしれないと思って、頬を軽く叩いてから扉の前にたった。その時だった。




 ガチャガチャーー




 不思議な音がしたと思ったら、突然目の前に青白い光が現れた。

 驚いて俺が仰反ると、だんだん光が収縮していき、人の顔へと形をかえていったのだった。



 「…………っつ!!」



 人間、本当に驚くと声も出せないんだなぁ。

 これはきっと寝不足が招いた幻覚なんだ。深呼吸してからもう一度顔を上げると……




 ほら。もういない!やっぱり気のせいだったじゃないか。はー、よかったよかった。




 『あのー、加減がよくないのでござろうか?某が言えたことではないが、顔色がようないように見受けられるのだが』



 真横から聞こえた声に、華麗なやんのかステップを決めてしまったが、それどころじゃない!

 なんで会話できてるの?幽霊?いや、人間なのか?



 『某、どこかの戦場で首を掻っ切られたことは覚えているのござるが、過去の名などは一切覚えておりませんゆえ、ここで昔出会った貴殿のような格好をした若い男に名付けてもらったでござる。よって、名無しの権兵衛からとって“権兵衛”。今はそう名乗っているでござる。よろしくお頼みもうす』



 やっぱり幽霊じゃん!え、ま?幽霊に自己紹介されたの俺。ま?



 『それで……貴殿の名前を伺ってもよいだろうか?ここに来たということは、今日から同僚というやつになるのだろう?拓真殿からそう聞いているのだが』


 「拓真先輩から?」


 『うむ』


 せんぱい、昨日の電話で楽しそうだったのは、これが理由ですか。

 信頼関係が崩れそうです早く来て。そしたら許してあげなくもないですからーー






 開店1時間前になってやっと先輩が出勤してきた。

 落武者の権兵衛さんは、俺以外の人には見えないところで愉快にポルターガイストを起こしていた。


 勝手に仕分けされていく冷蔵庫の中。


 スタッフたちも在庫をとりに来るんだから不思議がってもいいのに、何故か受け入れていた。

 この状況もこわいが、ここのスタッフもこわい。


 最初にあのパンチのある出会い方をしていなければ絶対泣いてたよ俺は。




 「ちょっと先輩!どういうことですか!幽霊いるなんて聞いてませんよ!」


 「朝から元気だなー。言ったろ?ここはでるって」


 「権兵衛さん、先輩から俺のこと聞いたって言ってましたけど。というか、何で俺幽霊見えてんのか意味わかんないんですけど!こんなこと今までなかったしこわいんですけど!」


 「そんな怖がってねーだろ。お前の目には、権兵衛の姿がどうみえる?」


 「たま眩しい時がありますけど、それ以外は案外普通というか、いや普通じゃないんですけど」


 「なら、お前は大丈夫ってわけだ」


 「はっ?それって、どういう」


 「まぁまぁ、普通にしてればいいさ。長い時間成仏できてないっていうのに悪霊になってもいない。仕事も手伝ってくれるいい幽霊なんだからよ(肩ポン)」



 えぇ……








 そんな会話をしてからすぐに開店の時間が来てしまって、新人の俺はひたすら店内を駆け回っていた。

 昼休憩でひと息つくため、午前で仕事終わりのスタッフさんと一緒に少し外に出てみた。



 

 「佐藤さんは、ここ長いんですよね?その、不思議に思ったりこわい経験したりとか、なかったですか?」


 「あら?もしかして権兵衛さんのことかしら。私は見たことないんだけど、ほら、あんなに箱がポンポン飛んでるし、品出し終わった空箱は勝手につぶれるし。そこにいるんだなーっていうのはわかるのよ。」

 「もちろん、最初はみんなでこわいわねって話していたんだけど、毎日のことでしょ?それにすっごく助かっていることも事実だから、いつの頃からか仲間意識みたいなの持っちゃってね?」

 「まだ慣れないかもしれないけど、大丈夫よ。彼はあなたに何かしたりするような幽霊じゃないわ」

 「それに、ほらあそこ」


 「小さな祠?ではないか」


 「あれはね、ずっと前の店長が敷地内にお供えできる場所を作りましょうって言って作ったの。小さな机に雨よけの屋根と扉しかないものだけど、この中に旅行のお土産とかお手紙いれるのよ!」


 「そうなんですか」


 「それに落武者くんが一緒に働いてるなんて、この世でここだけかもしれないわ!そう思うとワクワクするでしょ?」


 「ふふ。そうかもしれませんね」





 俺の同僚落武者の権兵衛さんは、どうやら愛され系の幽霊らしいです。








 

 その後、仕事に慣れてきた俺は任される仕事も増えていった。

 そんなある日のこと。


 「この商品の発注どうしようかな。イベントと重なっているけど、前年と比べても(もごもごもご)」


 『それならこうしてみるのはどうでござろうか?これなんかはきっと本部発注になるだろうから確認するのがいいでござる』


 「あ!そっか!ありがとう権兵衛さん。上司より頼れるかもしれない」


 『それは言い過ぎでござろうが、有難く受け取っておく。貴殿はもっと会話をした方がいい。生きているうちにしっかりと』


 「権兵衛さん……」


 『さぁ、憲司殿。今日もお仕事頑張るでござるよー!!』


 「うん。行こう権兵衛さん!」

 




 俺の同僚には落武者がいます。とっても楽しい職場です。

 みなさんも一緒に働きませんか?そんな未来をお待ちしてます。

ここから話がはじまりそうな予感を漂わせての短編公開です!

楽しんでいただけたら幸いです。

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