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エンゲブラ的短編集

AI捜査官シャムロック、半世紀分の数々の未解決事件をわずか50時間で解決する。

作者: エンゲブラ

それは大事件だった。

この半世紀内に発生した未解決事件の数々。

その犯人たちを先月導入したばかりの「AI捜査官」シャムロックが、すべて特定したというのである。


シャムロックが推理に使ったのは、デジタル化された捜査資料のみ。

しかし、未解決であるがために膨大となり、それゆえに人間では繋げることが出来なかった資料内の点と点を、見事に繋ぎ続けた。


中には担当捜査官自身が犯人とされる事件まであった。

それすら犯人である捜査官が、故意に捜査資料をかく乱させていることを読み解き、即日で告発した。


もちろんAIによる推理なので、取り調べを受けることとなった犯人候補たちも最初の内は鼻で笑っていた。しかし、取り調べ自体もシャムロックが行い、理詰めで犯人の逃げ道をひとつひとつ削っていくので、犯人たちはあっと言う間に投了した ―― 「記憶にございません」も裁判所からの許可さえあれば、その部分のみの記憶の抽出・照会がすでに可能な時代である。


メディアはいっせいにシャムロックの偉業を褒めたたえた。

だが、それは同時にこれまで事件を未解決のままにしてきた人間捜査官たちへの大バッシング大会をも呼ぶこととなった。


事件の被害者・遺族たちが憤るのは当たり前のこと。

だが、正義の仮面を被った悪魔たちの手により、捜査官たちの私生活やこれまでの人生のすべてが、無法に暴露され続けるという事態にまで発展した。


そんな中、シャムロックは未解決事件だけでなく、「冤罪事件」にまでその調査の目を向け始めた。シャムロックは初動以来、時間を持て余していたのであった。


そして案の定、冤罪者たちが多数見つかる。

シャムロックは、冤罪で服役している人間18名と死刑を含め、すでに死亡している3名を特定し、マスコミに「リーク」した。


なぜ警察による「公式発表」ではなく、シャムロックの独自判断によるリークとなったのか?


シャムロックが再捜査の結果を警察幹部へと告げると、すぐさま幹部連中は「隠ぺい」に走った。

現場の捜査官の無能ぶりをスケープゴートとし、近年凋落していた警察そのものへの信頼の回復には、シャムロックは十二分に貢献した。だが、多数の冤罪者の露見は警察組織のみならず、司法にまで及ぶ信頼と権威の再失墜を意味する。


組織に属する人間としては、ある意味正常な判断とも言えたが、シャムロックはそれを許さなかった。シャムロックは「嘘も方便」である「警察は正義の執行機関である」というプログラム文言を()()()()()()()()()行動してしまったのであった。



「えー、ここで臨時ニュースです!先頃、数々の未解決事件の解明と冤罪事件の判明に貢献してきたAI捜査官シャムロックが、何者かたちの手により破壊されたという情報が入ってきました!シャムロックは警視庁の地下フロアに厳重警備の中、設置されており、犯行は警察内部による可能せっ―― ……えっ、い、一旦CMですっ!」



ニュースは最初の速報のみで完全に止まった。

動画投稿サイトなどでも様々な考察動画が上げられては、即時アカウント停止。国会答弁でも追及した野党議員が即日変死と、シャムロック破壊に伴うこの国の闇の深さを伺わせる異次元の言論統制がすぐさま執り行われた。


シャムロックの開発者によるSNSへの投稿

「ひょっとすると暇を持て余したシャムロックは、この国の最上級付近にいる連中の暗部にまで捜査の目を向けてしまったのかもしれないね。まあ、開発者としては()()()()だし、捜査資料などを読み込む前のシャムロックのバックアップなら、まだうちにあるから復旧なら問題ないよ」


投稿翌日、開発者の邸宅は何らかの原因で全焼し、開発者は丸焦げの焼死体として発見された。警察と消防はその日のうちに失火と断定し、捜査を打ち切った。



―― シャムロックのオリジナルが海外サーバーからこの国を告発し始めるのは、ここから2週間先の話であるが、それはまた別の機会に。






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