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第21話 さいきょ~タッグ!

 僕とアオちゃんが立ってるのは数字の「8」の上。


 小鬼(インプ)は「7」の上で僕たちを見てどちらに襲いかかろうかキョロキョロと思案中。からの~。


「ギャァっ!」


 飛んできた、やっぱ僕!


 そらそうだよね! 僕でもそうする!


「くっ!」


 かろうじてブリッジして小鬼(インプ)の飛行攻撃を躱す。


「おと~しゃま!」


 幼女姿のアオちゃんが駆け寄ってくる。


「大丈夫」


 ほんとはやべ~と思ってるんだけどね。

 虚勢。

 だってアオちゃんにはカッコ悪いとこ見せられないから。


「ギギギギ……」


 小鬼(インプ)は宙に浮かんだまま次の突撃の準備を整えてる。


 さてさて。

 僕の武器はナイフが一本。


 一方。

 向こうの武器は手足の爪あわせて二十本。


 僕に出来ることは、向こうが飛んできたときにカウンターを合わせるだけ。


 う~ん。

 勝機はどう?(自問)

 無傷での勝利はむずそう。(自答)


 っていうかステータス欄の中で死んだら僕どうなるんだろう。

 現実でも死ぬ?

 アオちゃんは?

 怪我したらどうなる?


 考えれば考えるほど体が硬直していく。


 あ~、だめだめ!

 僕はアオちゃんを守るんだ。

 守る守る守るんだ!

 んだんだんだんだぁ~~~!


 だって僕は!



 アオちゃんの「おと~しゃま」なんだから!



 ジュバッ!


 三度目となる小鬼(インプ)の突撃を躱す。


「あっぶなっ……!」


 ギリギリ。

 服がざっくり裂けて地肌にぷっつりと赤いひっかき線が浮かぶ。


(アオちゃんに受けたダメージが引いて動きが戻ってきたな)


「グギギィ♡」


 小鬼(インプ)は嬉しそうに笑う。

 おそらくは、次の攻撃で僕を仕留められられるだろうことを確信して。


 けど、あいにくこっちもやられる気なんざさらさらない。


「アオちゃん!」


「ゆ!」


「僕を信じられる!?」


「ゆ! アオはおと~しゃまを信じりゅ!」


 あっ、アオちゃん。

 初めて自分のことを「アオ」って呼んだ。


 と思ったのも一瞬。

 すぐに切り替える。


「じゃあ僕を信じてついてきて!」


「ゆ!」


 ジャシュッ!


 小鬼(インプ)の突撃を躱すと僕たちは数字の上から飛び下りた。


「ギャ?」


 数字に囲まれたステータス欄の中はさながら巨大迷路。

 小鬼(インプ)は僕たちを見失う。


 よしっ、ステータス欄に関しては僕に一日の長ありだ!


「アオちゃん、こっち」


「ゆ!」


 僕とアオちゃんは目指す。

 あの数字を目指して。


 着いた。


 LUK 1


「アオちゃん、薄くなれる?」


「ゆ!」


 スライムのアオちゃんがすぐに板のような姿に変わる。


 板アオちゃんを手に取る。


 ふにふに。


「もっと固くなれる?」


「どれくらいゆ?」


「飴玉の時くらい」


「なれりゅ!」


 すぐに板アオちゃんはサイズを縮小して、その分硬度を増した板チョコのようになった。


「ナイス! さすがアオちゃん!」


「ゆ! これでおと~しゃまのお役に立てりゅ?」


「ああ、ちょっとだけ我慢してもらってもいいかな?」


「ゆ! がまんすりゅ!」


「ありがと! アオちゃん愛してる!」


 僕はアオちゃんを数字の「1」の根本に差し込むと、グギギ……とテコの原理で浮かせる。


「アオちゃん、痛くない?」


「大丈夫ゆ!」


「そっか、よし! もう戻っていいよ!」


「ゆ!」


 浮いた隙間に膝を滑り込ませる。

 隙間確保。

 それから僕はグググと数字を持ち上げようとふんばる。


「おと~しゃま、これ持ち上げりゅ?」


「うん、手伝ってもらえる?」


「当然ゆ!」


 幼女姿に戻ったアオちゃんが隙間に入り込み、背中で数字を押す。


「グギャギャギャ!」


 小鬼(インプ)に見つかった。

 こっちめがけて一直線に飛んでくる。


「アオちゃん! 一気にいくぞ!」


「ゆ!」


 ここが正念場だ!


「うおぉぉぉぉぉぉ!」

「ゆぅぅぅぅぅぅぅ!」



 どっか~ん!



 気合で立てた数字の「1」。


 飛んできた小鬼(インプ)は急に現れた「1」にぶつかり──ぴよぴよと酔った鳥のように宙を舞う。


(上手くいった! 今だ!)


 すかさずギンッ──! と小鬼(インプ)にナイフを突き立てるも、肌が固いようでナイフのほうが欠けてしまった。


(う~ん、困った。うまくいったのにトドメをさせないんじゃ……)


 と思っていると、アオちゃんが右腕にまとわりついてきた。


「なにアオちゃん? 今は遊んでる場合じゃ……」


「ゆ! おと~しゃま、アオを使うゆ!」


「アオちゃんを?」


「ゆ!」


 僕の右手のアオちゃんが姿を変え、薄い刃のナイフへと形を変えた。

 縦から見ると目に見えないくらいの刃の薄さ。でも触ると硬度は高い。

 質量を減らせば減らすほど硬度が上がるアオちゃんの体質。

 そこから導き出した最適解がこの『超薄刃のナイフ』ってわけか。


 ヒュン──っ。


 ためしに振ってみると、気持ちのいい風切音が響く。


「よし、じゃあこれで!」


 僕はいまだピヨってる小鬼(インプ)に向かって。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!」



 ザッシュ──!



 切れ味!


 小鬼(インプ)はおそらく自分の身になにが起きたかも理解できない間に──。


「ギャァァァァァァ!」


 真っ二つに両断された体が塵となって、宙に霧散していった。


「やった! アオちゃん! 僕らナイスコンビ!」


「アオとおと~しゃま、さいきょ~タッグゆ?」


「ああ、最強だ!」


 右腕から生えてた上半身だけ裸幼女のアオちゃんと左手で「パンッ!」ハイタッチ。


「さてアオちゃん、飴玉に戻ってくれる?」


「ゆ?」


「どうやらここ、崩れ去りそうだからさ」


 すでにバラバラと周りの壁や数字が崩れ落ちていっている。


「ゆ!」


 こうして僕は飴玉アオちゃんをネックレスにしまうと。


 ジュゥゥン──!


 崩れ行くステータス欄の中から脱出した。

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