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第17話 隠れ家

 地下迷宮の隠し通路。

 そのさらに裏に現れた自然あふれる一軒家。


「カイト、見て! すてきなお家!」


「うん、誰か住んでるのかな?」


 僕らが中に進むと背後で壁が低い音を立てて閉じた。


「アオちゃん、大丈夫?」


 ちゃんとここから出れるよね?

 てかここ安全?

 その他もろもろな意味を込めて聞くと、アオちゃんは「ゆ! ここは大賢者ヘリオン様に頼まれて守り続けてきた秘密の隠れ家ゆ!」と胸を張って答えた。


「大賢者ヘリオン?」


 聞いたことないなぁ。


「ゆ! とっても偉大な賢者さまゆ!」


「どういう人なの?」


「うゆ……それは……ゆゆ……とっても立派な人だったゆ……」


 あ、詳しくは知らなさそう。


「アオちゃんはいつからここを守ってたの?」


「ん~っと……いち、にぃ、さん……きゅうじゅう……年ゆ?」


「90年!?」


 ハルがびっくり声をあげる。


「あ、言ってなかったっけ? アオちゃんって元々91才なんだよね」


「おばあちゃんじゃない!」


「雌雄同体だからおばあちゃん限定ってわけでもないんだけど」


「でもアオちゃんのあそこ……」


「うん……」


 つるっつる。


 なにも生えてない。


 無味無毛。いや、味はしらんけど。


 とにかくこれは女の子だ、うん。だってつるつるだし。


「ゆ? 男の姿のほうがいいゆ? そっちにもなれりゅゆ」


 そう言うとアオちゃんの体が()()()()と変形していって……。



 【※自主規制 ※自主規制 ※自主規制】



「ぎゃああああああああああ!」


 でっ……!


 でかすぎる。


 あまりにも。


 ウィーアーSHOCK(ショック)


「ごめん……アオちゃんは女の子のほうがカワイイかな……あはは……」


「ゆ! わかったゆ!」


 しゅるしゅると縮んでいく()()を見てほっと胸をなでおろす。


 やばい。

 あのままだと僕、尊厳破壊だった。

 立ち直れなかったかも。

 おそるべき、アオちゃん……。


「とにかく、アオちゃんはその大賢者ヘリオンの言いつけでここを守ってたんだね?」


「ゆ!」


「ヘリオンはその後帰ってきたの?」


「……。うゆぅ……」


 あ、戻ってこなかったんだ。


 僕はアオちゃんの頭を優しく撫でる。


「大丈夫だよ。アオちゃんが立派に守り続けたこと、ヘリオンもきっと喜んでるよ」


 90年前か……。

 きっともうヘリオンは……。


「アオちゃん? ここに案内してくれたってことは、もしかしてこのお家の中に入ってもよかったりする?」


「ゆ! 案内するゆ!」


「いいの? ヘリオンから誰も入れるなって言われたんじゃ?」


「ゆ? 誰も入れるなとは言われてないゆ。信頼する人だけを入れなさいって言われたゆ」


 なるほど。

 ヘリオンはここをアオちゃんのために残したって感じなのかも。


「ヘリオンはここでなにをしてたの?」


「なにか本を書いたり、作ったりしてたゆ。しばらくしてからやることがあるって出ていって……それっきりゆ……」


「そっか。アオちゃんはヘリオンのことが好きだったんだね」


「ゆ! あ、でもおと~しゃまとおか~しゃまの方が好きゆ! でもヘリオンもその次に好きゆ!」


「そっか。ありがと」


「というわけで家の中に案内するゆ!」


 そう言うとアオちゃんはじゅるりと形を変えると扉についた錠前の中に入ってカチリと鍵を開けた。



 中に閉じ込められていた空気がぶわぁと広がってくる。


「うわぁこれ……!」


 インクと紙の匂い。


 窓から差し込むヒカリゴケに照らされて、壁一面の書物、魔力を帯びてるっぽい道具の数々、それに生活用品なんかが目に入ってきた。


 おそらくもう今は亡き大賢者ヘリオンさん。


 あなたの残したお家にお邪魔させてもらいますね。


 そう心のなかで唱えて、僕たちは部屋の中に足を踏み入れた。

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