シナジー
「うむ、大体いいな」
殿の剛腕によるワンマン政治というか、ほとんど恐怖政治により我が領土の陣営は一新した。
勘と運で決めていった陣営ではあるが、なかなかどうして的確な人選であったと言える内容であり、突発的に総指令官という大役を仰せつかった家来Bにも、やる気を漲らせるには十分な結果となった。
「おいB、まずは我が軍の今まさに成すべき事をまとめておけよコノヤロウがよ。
際はおれの嗅覚でよ、時がきたならそん時ァ……ガチンと打って出るぞ」
プレッシャーをビンビンに感じているであろう家来Bの心を気遣い、また、浮き足立っているであろう家来Bを始めとする新体制の面々へ、乱暴な口調であれ一歩目のベクトルを示したのは、今まで一人で何役もこなしてきた(ワンマンなので)殿の優しさに他ならない。
「はっ!」という家来Bの返事の後、「おおおおお!」と、まるで勝ち鬨のような雄叫びがこの大広間を包んだ。各々が皆目を輝かせ、この領土の繁栄を疑う者はいなかった。
遂にして、この軍が一つになったのである。
「早速であるが!!」やる気に溢れ、まだざわめきが残る大広間に、突然家来Bの声が響いた。
「んん?どうしたんだBコラ」少し驚いた殿がイラついた感じで聞いた。
「我が軍はというかこの町自体の話になりますが、まずは聞いてくだされ」
「おおう、そうか」なんだか釈然としない殿を尻目に、家来Bは続けた。
「そもそも私としては十分なバックアップ無くして戦なぞやるべきでは無いと考えます。
即ち!!まずはこの領土全体を一つのファミリーとみなし、各機関が役割を全うし、全てにおいてシナジー効果をもたらす様なそんな画期的なシステムを構築させたいのでござる!
私の見た限りこの領土の可能性はまだまだまだ有り余っとるわ!コノヤロウ!!
兵糧、徴兵、騎馬に武具、戦に関わるあれやこれやも格段に素早く調達可能になるはずじゃァッ!
よいか!?まずは内政を洗い直して豊かにし!行政にて物取りの類を縛り上げ流通の円滑化!
そっからは!分かんだろうが!!
言わずもがな、連戦連勝じゃろうがバカヤロウ!!
ハァッハァッ……!」
ゴン!「グヘッ」
後ろから殿の拳骨が飛んだ。が、今回はいつものイライラからでは無い様子。
「熱くなり過ぎなんだアホがよ」
言いたい事をぶちまけても尚興奮冷めやらぬBだったが、
殿の戒めによりなんとか我を取り戻し、自分の座へと控えた(これ以上殴られたくないので)。
Bが下がったのを確認し、握ったままの拳骨を緩めた後殿はこう続けた
「…まあよ、総指令官からのお達しだ。おれはなんら異論はねえ。
訳のわからん言葉もチラホラあったしよ、そこら辺はこいつに改めて聞いてくれ。
ほんじゃあ今日んとこはこれにて解散だ。てめえら、期待してるぜ」
とにもかくにも新たに動き出した殿様達。
群雄割拠を極めたこの戦国時代に、圧倒的なアレで国中をアレする魔王とその一味のアレが
今じわりと動きだしたのであ~る!!