表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイアンマンソウル  作者: バラクーダ高橋
12/14

大儀

「がっはっはっは!懐かしいのう」

まるで楽しい思い出を懐かしむように、パンダさんは豪快に笑った。

話の途中で寝てしまった殿の横で、都市伝説と化したパンダさんの真相を食い入るように聞き入る家来B。


酒をちびちびやりながら、パンダさんは再び語り出す


若かりし頃の殿と、ミヒャイルに物の怪にされてしまったパンダさん。

パンダさんが住処にしているこの洞窟にあるこれらの物資は、殿が城からかっぱらってきた物らしい。

その見返りというわけではないが、友達の動物達から得る周辺諸国の状勢等を殿に教えてあげているのだそうだ。


「人と接する事ができなくなってしまった寂しさを、こいつが埋めてくれたんや。むっちゃ感謝してるで」


「最初は興味本位おもしろ半分だったがな、パンダさんおもしれえし、だんだん情が移ったつうかなんつうかムニャムニャ……」

「そこで寝るんかい!最後まで言わんかいなアホ」


もちつもたれつ、ギブアンドテイク。そのような関係というより、二人は親友のような間柄であることは容易に想像できた。

城の者、次いでは城下で我らを支えてくれている民に知らせなかったのは

「物の怪であるワイは、人に世話かけさせるだけやろう」

というパンダさんの意向からだった。


「ミヒャイルを恨んではいないのか?」という家来Bの質問にも

「確かにそういう時期もあったが、これもワイの運命やしこのおもろい殿様とも出会えた。それに動物と話せんねんでワイは。ええやろ?がっはっはっはっは」

と、豪快に笑い飛ばす。


そんなパンダさんに家来Bもガッチリ惹かれていた。

「はや~~私にはまったく想像もつきませんわ……よくよく考えると、殿然りパンダさん然り…私は凄まじい人物達に囲まれておる。何だか力が沸いてくる心地ですわい!」

「そりゃええこっちゃ。だがな家来はん、こいつがここに人を連れてきたんわこの30年でこれが初めてやねんで?つまりは、あんさんも十分おかしな部分を持っとるいうこっちゃ!」

「えええ!?私はそんな技も特技も持ち合わせておりませんぞう!私なんてホントにもうそりゃあ…」

「がっはっはっは何をそんなに慌てとんねん。でも殿さん言ってたで~ウチにもの凄い頭のええ家来がおる言うて。人を誉めへん殿さんが、唯一そいつの事はエラい楽しそうに喋っとったんや。将来が楽しみや言うてな」


それに対する家来Bの動揺と謙遜は言うまでもなく、いつしか外には日が昇り始めていた。


「いつまでもゴチャゴチャとうるせえのう…」

ブツブツ言いながら殿が目覚めた。


「あ!やっとお目覚めですか殿。

今丁度この世を占う話題で盛り上がっていたところでんがな!」

家来Bはパンダさんの関西弁が変にうつってしまっていた

「てめえ朝っぱらからケンカ売ってんのかコラ」

そう言うと、ヨタヨタと家来Bに歩みより、家来Bの背中に思い切りケリを入れた。バシン!!

「グへッーー!!」


気持ち悪い家来Bの悲鳴はパンダさんのツボだったようで、毛むくじゃらのデカい体でゴロゴロと笑い転げていた。その直後である。

事は急転直下、殿の口から驚くべき宣言が飛び出した。

「家来B、てめえをここに連れてきたのはおれの中で決心をつけるためだ。おれが生まれるより前に失われたこの世の軸は未だ定まらず、悪政蔓延にして下々の者は疲弊し死を待つのみ。

先代の意志なのか何なのか、跡目のおれは訳もわからずこの領土を守ってきたが、それももはやこれまで。

これからおれは打って出る事にするからよ、てめえはさっさと帰って軍議の準備だバカヤロウ!」


初めて聞く殿様らしい言葉に、家来Bは体に電流が走る感覚を覚えた。それと同時に殿の大儀にも感銘を受け、何というか、心に超熱いものがこみ上げてきた。

「は、ははッ!では直ちに参りましょう!」

「おれはパンダさんと話すことがある。てめえだけ先に行ってろ」


殿の迫力に負け、付き人の志願も出来ぬまま慌てて家来Bは洞窟を後にした。



「エラい時間経ったが、ついに動き出すんかい。しかもお前らしいイキナリや」

ニヤリと笑いながら、パンダさんが言った。

「ああ、こないだ謀反があってな、その時から考えてはい……」

「殿ォ!!ハァッ…帰り道が分かりませぬ故道に迷うとこでしたわぁ!!ハァッハァッ……あっぶねえ…」


「B、てめえは……」


この後家来Bは、パンダさんの友達の小鳥にナビをしてもらいながら、止まらない鼻血をすすって城へ戻っていった。


血で血を洗う戦乱の世、これより数年の後にこの殿様の名は全国へと知れ渡る事となる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ