第12章 第2話 罠に嵌まったアリス
「ん…ここは…?」
アリスが目覚めた場所は照明が抑えられた、暗い部屋だった。暗すぎて足元や手元すらよく見えない状況だった。
(…縛られてる?!)
手元が見えないのは、そもそも両腕を後ろに縛られているからだった。アリスは少し体をよじってみたが、縄が解ける気配は無い。
(どうしよう…)
その時、ドアが開いて一瞬だけ部屋に光が差し込んだ。組織の構成員である少女が部屋に入って来たのだ。
「気分はどう?」
「…あなたは誰?」
アリスは大柄な男ではなく、少女が現れた事を疑問に思った。この手の組織の構成員は男ばかりだと思っていたのだ。
「私はナガレ、よろしくね」
「あなた達の目的は?」
アリスは挨拶を無視して、ストレートに彼女達の目的を聞いた。脱出不可能な状況なので、少しでも相手の情報を聞き出す事を優先したのだ。
「私達の存在を気づかせる事、それしか教えないよ」
「存在…?」
「思い当たる出来事は無い?」
(どういう事なの…)
アリスにとっては、ナガレ達の目的については本当に思い当たる節が無かった。彼女はナガレ達の事を、ただのテロ集団と認識していた。
「シティOI。その名前をどこかで見た事ない?」
「…何かしら?組織名?」
「…あっそ。じゃあいいや」
「えっ…ちょっと待って」
ナガレが取り出したのは、ヘッドギアの様な装置だった。少なくともアリスは見た事がないタイプの機械だった。
「なにこ…きゃあああ!」
装置をつけられたアリスは、すぐに悲鳴をあげた。ナガレは変化する数値を見るかの様な無表情で、アリスを見ていた。
(この人にも利用価値はあるかな…)
ーー
数時間前、シティOIのビルの一室。
照明が抑えられて、薄暗いその部屋で数人のテロ組織構成員が会議を行なっていた。大半が男だったが、その中には少女である神谷流もいた。
「崩壊災害が起きて地上は荒れている」
「今こそ我々の存在を地上に認めさせる好機ではないか?」
男達の様子は明らかに高揚しており、この事態が望み通りである事が分かる。だが焦りは禁物という事を、流は理解していた。
「まだですよ。今行動を起こしても、地上の権力者達に揉み消される」
「くっ…じゃあまた仮想現実で事を起こすのか?」
「あれ以来、怪しい動きをしているユーザーが増えてますから」
「そんな奴ら放っておけばいいじゃないか」
「利用価値があります」
「…どんな?」
男達はまだ若いナガレに対して懐疑的になる事もあった。だが、ナガレは冷静な判断力を欠かさない人物である。
「既に私達はマインドコントロール用の装置を完成させている。その実験台には最適と言えます」
「洗脳した後の用途は様々か」
男達のほとんどが、ナガレの考えに納得した様だ。嗅ぎ回っている人間をスパイに仕立てあげてもいいし、誤情報を拡散させる役目をさせてもいい。
「下準備は、可能な限り入念にするべきです」
「その通りだな…」
シティOIで生きる彼らは、ある一つの目的がある。その目的を果たすのを急いではいけないと理解しているのだ。
「全ては、我々の存在を未来に伝えるために」
空に追いやられた彼らの怨嗟は、とても深いものだった。それを晴らすためならどれだけ時間をかけても、たとえ自分を犠牲にしようとも構わない。
(そう…私達の目的のためなら、地上の人々がいくら犠牲になっても構わない)




