第10章 第3話 エリア666 サリアン・ディアルート
「エリア666…かなり栄えてるエリアみたい」
「人口は003より多いよ」
鼎はエリア666についてデバイスで検索していたが、桃香は既に布団に入っていた。彼女は資産家に関する情報を優先して調べていた。
「ディアルート家…アナザーアースに多額の出資を行なっている」
「そこの娘…サリアン・ディアルートがテロ組織と戦うって言ってるんだよね」
ディアルート家はエリア666の名家の一つだった。その為、一族の者は皆強い発言権を持っているらしい。
「地元のサリアンの評判はどうなの?」
「ディアルート家の美しい令嬢として、大人気みたい。大半が容姿に惹かれているだけなのは、本人も分かっているみたいだけど」
多くのメディアがサリアンの発言を持ち上げていた。そのニュースに、大衆の無責任な賞賛が集まっている。
「テロ組織の撲滅ねえ〜鼎サンは、こいつに出来ると思う?」
「…出来ないと思う」
ーー
翌日、ホテルをチェックアウトした鼎と桃香は、003行きの電車に乗っていた。桃香はブラックエリアの賭場を仕切る者として、今後どうするべきか悩んでいた。
「あなたはブラックエリアでどうするの?」
「まだ悩んでる…今回は中々決まりそうにないよ」
ーー
「やっぱり自分が住んでいるエリアは落ち着くね」
帰って来た後も鼎はエリア666について調べ続けていた。桃香もサリアンの言動についてチェックしていた。
「ん〜この人やっぱりかなり世間知らずみたいだね。アナザーアースでも演説するって言ってるけど、何の対策もしてないみたいだよ」
「…私達も何かを手を打った方がいいかも知れないね」
ーー
「皆さん、準備は出来ていますか?」
サリアンは支持者達を前にして、流石に緊張していた。彼女は本気で、テロ組織を撲滅しようと思っているのだ。
「大丈夫ですよサリアンさん」
「この世界を平和にする為に、私たちも助力します」
支持者達は本気でサリアンの事を信頼していた。期待という重圧が、彼女に重くのしかかっていた。
「私達が正義を貫けば、世界は必ず平和になります」
正義感が強いサリアンは、本気でそう信じていた。父親は彼女に対して期待していなかったが、止めようともしなかった。
「では皆さん、アナザーアースにログインしましょう」
ーー
「おい、金持ちの娘が演説するらしいぞ」
「…ほっとけ。俺達が構ってやる必要ねえよ」
「…まあ、世間知らずの女みたいだしな」
「本当にヤバい組織に目をつけられても、アナザーアースなら何されても現実の肉体に影響はないからな」
ハンターは賭場の男から、サリアンが演説をする事を教えられていた。彼は世間知らずな金持ちのお嬢さんへの興味は殆どなかった。
これから起こる事件には、彼らも巻き込まれる事になる…