表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/82

第8章 第2話 エリア028 仮想現実開発者の娘

「あなたはブラックエリアで何をしているの?」


かなり大胆かつ単刀直入な質問だが、エリシアは効果的だと判断した。桃香はしばらく無表情で黙っていたが、やがていつも通りの笑顔に戻った。


「まあ、危険人物として扱われるのは仕方ないと思っているよ」


「…別にあなたをunreal survivalから追い出したい訳じゃない」


エリシアは純粋にブラックエリアに興味があるだけだった。彼女は桃香が答えてくれない可能性も考えていた。


「賭場のオーナーやってるよ」


「…どんな客が、来てるのかしら」


「まぁ、底辺の奴らばっかりだよ」


「なるほどね…」


桃香は答えてくれたが、エリシアはこれ以上踏み込むのはよくないと考えていた。ブラックエリアの連中が、人に言いたくないものを抱えているのは知っている。


「教えてくれて、ありがとうございます」


「また一緒にミッションやろうよ」


桃香はエリシアに対して、特に警戒心を抱いていなかった。彼女が立ち去ってから、エリシアはログアウトした。


ーー


エリシア・ハミルトンはエリア028出身の学生だった。彼女は両親と共に、高層マンションで暮らしていた。


(もう夕方…ご飯の用意しなきゃ)


エリシアは急いでキッチンへ向かい、冷蔵庫から食材を取り出した。別に料理が好きでもないし得意でもなかったが、味について文句を言われた事はない。


(いつも通りの味なら文句言わないでしょ…)


エリシアは淡々と料理をしていたが、デバイスから通知音が鳴り響いた。家の中だったので、マナーモードにしていなかった。


(料理してるのに…)


エリシアは仕方なくデバイスを手に取って、メッセージの内容を確認する事にした。大学のサークルで一緒になった子からのメッセージだと思っていた。


『ブラックエリアについて探っていますね。エリシア・ハミルトンさん』


(…?!誰?!)


unreal survivalのプレイヤーだろうか…桃香との会話を聞いていた者がいたのか。メッセージの送り主が、ブラックエリアに興味がある者なのは確かだ。


(まだ返信しちゃ駄目…具体的な要求をしてくる可能性もある)


エリシアは平静を保って、料理の続きを済ませる事にした。今日のメニューは野菜を多く使った肉じゃがだった。


(またメッセージ…)


『高層マンションエンシャント、2022階8号室に住んでいますね。今は両親と同居している事も把握しています』


メッセージの送り主は、エリシアの居場所を把握していた。彼女の中で相手に対する警戒度が急上昇していた。


(こっちの情報を完全に把握してる…次はどう出る?)


エリシアは不安になりながら、次のメッセージを待った。着信音が鳴り確認したが、今回はエリア028の番地だけだった。


『ダウンストリート、2番通り22号』


ーー


(なんかガラ悪い人多いな…)


ダウンストリートは近所だったが、エリシアは一度も来た事が無かった。エリア028の中でも治安が悪い場所なので、避けて生きてきたのだ。


(2番通り…暗いな…防犯ブザー持ってきたのは正解かな…)


エリシアは不安になりながら、2番通りを進んだ。彼女はタウンマップを確認しながら、22号に当たる家を探した。


(あれ…ここだけ敷地広くない?)


22号と思われる番地に着いたが、明らかに庭の広さが他の家と違った。丁寧に手入れされている庭の先には、近代的で大きい屋敷があった。


(近代的だけど、少し洋風の屋敷かな…)


エリシアはドアベルを鳴らしてみたが、反応がない。敷地への入り口の門は既に開いていたので、仕方なくそのまま入る。


(あの園芸用ロボット…ひょっとして015製?)


015製の園芸用ロボットはヨーロッパ風とスチームパンク風を組み合わせたデザインだった。もちろん中には最新技術が詰まっていて、コンパクトで少し可愛らしいデザインが好評だった。


(この家に住んでるのは何者なんだろう…)


そう思いながら、エリシアはドアホンを鳴らした。数秒後に玄関ドアからガシャンという大きな音がしたので、彼女は少し驚いた。


(今のは鍵が開いた音…入るしかなさそうね…)


屋敷の玄関は広く、エリシアは妙に冷静な頭で掃除が大変そうだと思っていた。いくつか開いている扉があったので、彼女は先へ進んでいく。


(ここは書斎?まるで図書館みたい…)


エリシアが入った広い空間の壁には、本棚が並んでいた。独特な形の電灯やキャビネットが並び、時計や地球儀などもあった。


図書館から繋がっている庭園には、桜が咲いていた。季節は冬なのに満開で、夜桜の美しい雰囲気を感じさせる。


「まさかこんな簡単に呼び出しに応じてくれるとは…驚きです」


机で作業をしていた白い長髪の少女が、エリシアの方を見ていた。彼女はエリシアと比べて、明らかに背が低かった。


「私はハート、アナザーアースを開発した人間の娘です」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ