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第4章 第2話 汐音と探偵と猫耳少女

(この顔…やっぱりお姉ちゃんと同じだよね)


汐音はまとめサイトの記事にあった写真と、昏睡状態の姉の顔を見比べていた。髪の色は明らかに違っていたが、その可愛らしい顔は姉とそっくりだった。


(これは確かめるしかない…!)


ーー


(アナザーアースへのログイン自体、久しぶりだな…)


汐音のアバターは、狼の耳がついた少女の姿だった。汐音は動物好きで、アナザーアースでも動物の意匠を持つアバターを選択していた。


(lunar eclipse project…聞いた事のないゲームだな)


美来に似たNPCの目撃情報があったのは、マイナーなゲームだった。検索しても公式サイトと、もう更新されていない攻略サイトしかヒットしなかった。


(自分でプレイしてみるしかない)


ーー


(このゲーム全然プレイヤーいないけど大丈夫なの…?)


汐音は月食エリアの広場にいたが、プレイヤーの数が少なく閑散としていた。他のゲームならもっと人がいる時間帯のはずなのだが…


(NPCが何処にいるかも分からないし…またストリートに戻るか)


ーー


汐音は2010年代の東京を模したエリアにある、カフェに来ていた。時間帯は丁度昼、多くの客で賑わっている様子だった。


(ここで食事しても、ご飯食べた事にはならないんだよね…)


アナザーアース内には“食事”を楽しめるレストランもある…が、現実の肉体は何も摂取していない。健康の為にも、現実世界でご飯を食べる必要がある。


(じゃあログインしたまま、一度自分の部屋に戻って…)


「鼎サーン…今日はルナプロ行かないんですか?」


「あんまり依頼来ないけど、私は探偵なの。ゲームばっかり出来ないから…」


(ルナプロ…lunar eclipse projectの事?)


汐音は近くにいた女性達の会話を偶々聞いたが、明らかに気になる内容だった。ゲーム初心者でもある汐音は、彼女達に話を聞いてみる事にした。


「あの、ルナプロ…やってるんですか?急にすみません…」


「ルナプロ?やってるよ。あっ、ひょっとして他のプレイヤー探してたの?」


猫耳の少女は、汐音を怪しむ事なく質問に答えた。どうやら、警戒すべき対象では無いと思ったらしい。


「はい…またログインする様になって…」


「それでオンラインゲームを始めてみたの?」


「そうなんですが…あまりにも他のプレイヤーが少なくて…」


「もっと色々オンラインゲームあるのに、何でルナプロ?あのゲームの過疎っぷりすごいよ?」


鼎と呼ばれていた女性が気になった点を指摘すると、汐音はすぐに答えられなくなってしまった。猫耳の少女はそれを見て、汐音に対して明るく接した。


「興味持って始めたカンジ?きっかけは何かな?」


「桃香、その子何か話しづらい事があるのかも…」


鼎は、汐音が唯のオンラインゲーム初心者では無いと判断していた。引っ込み思案なだけの少女には見えなかったのだ。


「流石、名探偵だね。まだあんまり話して無いのに、彼女の心の機微に気づくのはすごいよ」


「私は小説に出て来るような探偵じゃない。それに、桃香だって気づいてたでしょ…それじゃあ、出来るだけ細かく教えてくれる?」


「はい。あっ、私の名前は汐音です」


ーー


鼎達は汐音の話を聞いて、彼女の姉が意識不明になっている事を知った。そしてlunar eclipse projectのNPCの顔と、姉の顔が似ているという事も聞いた。


「その噂については私達も知ってるよ」


「でも確証も無いし単なる噂話だし、ボク達もそこまで本気にしてないな」


「比較してる画像を見て下さい」


鼎と桃香は、汐音の姉とlunar eclipse projectのNPCの顔が並んでいる画像を見せてもらった。確かに髪や瞳の色以外は、偶然で片付けられない程に似ていた。


「この子、ミクちゃんにそっくりだね…」


「美来という名前なんですか?そこも姉と同じです…」


「ミクはNPCとは思えない程感情豊かな子で、今は桃香のギルドに身を寄せている。会ってみる?」


「はい!お願いします!」


ーー


「それじゃ汐音チャンも、ボク達のギルドに入る?」


「はい…え、何ですかこのギルド名…」


「ごめんね…気にしないで」


汐音は"アルティメット気持ち良すぎだろギャラクシー”というギルド名を見て、明らかに引いていた。鼎は申し訳ないと思っていたが、桃香には名前を変える気がないので仕方ない。


「あの、カナエさん…でしたっけ?依頼が来てるなら、そっちを優先した方が良いんじゃ…」


「大丈夫。アナザーアースにログインしたまま目覚め無くなった子の方が深刻だから…あ、お金は取らないから」


鼎は目の前にいる、狼の耳がついた少女から金を取ろうとは思っていなかった。鼎は他人の命がかかっている事態になれば、金への執着を捨てるタイプだった。


「それじゃあ汐音チャン…姉かも知れない人に会いに行こう」


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