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第4章 第1話 エリア013 目覚めない姉

(この後雨降るんだっけ…)


汐音はエリア013の空を見上げて、湿気を感じていた。予報通り、曇りのち雨になりそうだったので、急いで家に帰った。


彼女は帰る最中も、ストリートを歩く人々を見ていた。013では、ガラの悪そうな大人達がうろついている光景は日常の一部となっている。


(この人達も貧困に苦しんでるのかな…)


エリア013は福祉制度が碌に整備されておらず、貧困層の不満が募っていた。治安も年々悪くなっており、暮らしにくいと言われている。


(…あんまりキョロキョロしてるのも、良くないよね)


妙な姿を見せていると、どんな事を言われて絡まれるか分からない。汐音はとにかく早く家に帰る為に、出来るだけ急いだ。


ーー


「ただいま…」


汐音が暮らしている家は、013の中では比較的大きい方である。貧困層が多いエリア013は、郊外のスラムで暮らしている住民も多い。


汐音の両親は朝から晩まで働いて、必死になって金を稼いでいる。別にブラック企業と言う訳では無く、013ではそれが当たり前という話だった。


ーー


「お姉ちゃん…まだ帰って来て無いのね」


2階にある部屋では、汐音の姉である美来がベッドで寝ていた。僅かに寝息は聞こえて来るが、起きる気配は無い。


美来は、アナザーアースにログインしたまま目覚めなくなったユーザーの1人である。エリア013では、こうしたユーザーがかなり多い。


(エリアリーダーは何の対応もしてくれないし…)


それぞれのエリアにはリーダーに当たる役職の人間がいるが、013のエリアリーダーは無能だった。アナザーアースのユーザー達が昏睡状態になっていても、一切知らない振りをしている。


『頼人教授も原因は分からない、という事ですね?』


医療従事者がニュース番組に出ていたが、役に立つ情報は無さそうだった。アナザーアースにログインしたまま意識不明になる現象についての研究は、ほとんど進んでいなかった。


(ごめんね…何もしてあげられなくて)


アナザーアースから帰って来ない人を患者として受け入れる病院は少ない。医学的な観点が関係しているらしいが、医者達に何も出来ない状況であるのも事実である。


その結果、家で意識不明の家族の面倒を見る必要になる。医療器具等は提供してもらえるが、それでも負担は大きい。


「お金の面でだいぶ苦しいし…これもいつまで続けられるか…」


汐音は自分で出来る範囲で、アナザーアースにログインしたまま昏睡状態になる事件について調べていた。それも手詰まりになりつつあり、彼女は無力感に苛まれていた。


ーー


(ん…ゲームのNPCが実は人間?)


まとめサイトを見ていた汐音は、ある記事に興味を惹かれた。とあるゲームのNPCは、人間を元に作られているのかも知れないという噂だ。


(オカルト系の記事か…)


汐音がその記事を見ると、NPCキャラの画像が表示された。汐音はそこにいたキャラクターの中に、明らかに見覚えのある顔の少女を見つける。


(え…お姉ちゃん?!)


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