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序章 第3話 謎の猫耳少女

「ボクは桃香・グリフィン、賭場の事で困ってるんでしょ?助けてあげるよ」


「あなたはさっき、私たちのこと観察してた…」


捜査に協力してくれる人が見つからない鼎達に声をかけてきたのは、先程のピンク髪と猫耳の少女だった。側から見れば年下に見える桃香だが、とても怪しい雰囲気だった。


「うんうん…2人ともイイ身体してるな〜ってね」


「…どうします、カナエさん」


愛莉はセクハラじみた発言をする桃香に関わりたくないと思い始めていた。鼎は条件次第では、協力してもらおうと考えていた。


「私は九重鼎、私立探偵ってところね。ある依頼の調査の為に、ブラックエリアへの用事が出来たの」


「そこら辺は聞こえてきちゃったよ、ブラックエリアにはよく出入りしてるから、お嬢さん方の案内も余裕だよ」


「内側から見たブラックエリアはどう?私達は違法な取り引きが数多く行われている危険な場所だと認識してるけど」


「それはあんたらが表の世界で生きていけるからだよ。人生失敗して犯罪に手を染めたヤツら…現実世界で生きていけなくなった連中がギラついているのが、ブラックエリアだよ」


鼎もそれ知っていたが"見てきたもの"として語る彼女を、信頼する事に決めた。彼女は"そちら側"の人間だけど、だからこそ嘘はついていないのだろうと感じた。


「じゃあ、調査協力の依頼をするけど…協力費10000クレジットでどう?」


これは調査依頼費としてはかなり安い部類であり、最低でも50000クレジット、今回はブラックエリアが絡む危険な調査なので、200000クレジットを求められてもおかしくはなかった。ちなみに鼎は、今回の依頼は330000クレジットで受けている。


(さぁどうでるか…)


ここで怪しい事に気づかない人、すぐ怒るような奴なら調査には向かないから、協力依頼は取りやめる。200000クレジット以上を求められたら、自分の生活に関わるのでお断りする…といった探り方だ。


ここで「その値段はおかしいよ」と返されたら、譲歩をして50000クレジットに引き上げようと考えていた。協力してくれる可能性がある人は少ないので、高くても180000クレジットまでは出すつもりだった。


「可愛い女の子の頼みにお金を取るわけないよ!」


「よし!アイリ、こいつには関わっちゃだめ!」


「は、はい!」


「ちょ、ちょっと待ってよ!」


早々に立ち去ろうとする鼎と愛莉に、桃香は追い縋っていた。そんな桃香のことを、鼎は本当に嫌そうに見ていた。


「タダで私達について行って何がしたいの…嫌な予感しかしないよ」


「だって紳士たるもの、女性に優しく…」


「それ、何十年前の常識なんですか…」


愛莉の視線は不審者…女性に危害を加えるタイプのネカマを見る目になっていた。完全に不審なおっさんを見る目を向けられている桃香は、ちょっとショックに感じていた。


「…ボクも賭場に用事があるんだよぉ…一緒に行っちゃ駄目?」


「…どうしますカナエさん。不審者扱いして通報しますか?」


鼎は他に協力を申し出てくれる人が現れる可能性は、低いと考えていた。桃香を連れてブラックエリアに行く方が、迅速に捜査が進む可能性が高い。


「はぁ…ついて来てもいいよ」


「本当に?!他の女の子が一緒だとテンションが上がるよ〜」


「セクハラしたら管理者ブロックに突き出すから」


「は〜い…分かりました…」


鼎達は結局、桃香と同行してブラックエリアに向かう事になった。色々と怪しい少女だが、闇雲に協力者を探すよりはマシだろう。


ーー


「実際に入るのは久々ね…」


「空気が澱んでる…VR空間なのに…」


「あんまりキョロキョロしちゃ駄目だよ。浮浪者のおっさんに因縁つけられるよ」


全体的に明かりが少ない中で、点滅する妖しいネオン。怪しい雰囲気のアバターが行き交うのが、ブラックエリアだ。


全体的に現実世界でのヤクザみたいなアバターが多いが、中には分かりやすくアバターデータが欠損している、痛々しい見た目の者もいる。女性ユーザーの姿も確認できるが、派手な衣服を纏っている、いかにも不良と言ったアバターばかりだった。


(みんな桃香に絡みに行かずに避けてる…私の目に狂いはなかったのね)


道を行く人々は鼎と愛莉の事を"何も知らずにブラックエリアに入って来た馬鹿"では無く"常連である桃香の連れ"として見ている。やはり、日常的に危険な場所に身を置いている人間が同行してくれれば、心強いのだ。


ーー


「ほら、ここが賭場だよ」


「いかにもな感じだ…」


賭場の外観は"巨大な倉庫"としか、言いようがないものだった。警備員もいかにも世紀末な世界に居そうなモヒカンの男で、銃まで持っていた。


「やぁハンター、今日も遊びに来てやったよ」


「別にお前が来なくても胴元は潤ってるだろうよ…後ろの連中は知り合いか?」


「ボクの友達だよ。手を出したりしないでね」


「…分かった。お嬢さん方も、ここがアンダーグラウンドだって事は、理解してるよな?余計な事はしないでくれよ…」


(こんなにあっさり入れるなんて…桃香に同行して本当によかった)


鼎と愛莉も桃香の友達という事で、あっさり賭場に入れる事になった。鼎は少し拍子抜けしていたが、絶好の機会である事は間違い無かった。


「賭場の中は騒々しいからね…ビビらないでよ?」


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